背筋が冷たい
――何だ、背筋が冷たい。
うたた寝から目覚めた俺がまっさきに感じたのは、背中を伝う冷感だった。
季節は初夏ということもあり、体にはじんわりと汗が浮かんできているのに、背中だけはスースーしている。そのアンバランスさが気持ち悪い。
まさか、霊的な現象が発生していて、俺はそれを感じ取っているとでもいうのか?
今まで霊的な体験などしたことは無かったが、なるほど、確かにこれは気持ちの良いものではない。
しかし、俺の背中の冷たさの理由は、すぐに判明することとなった。
「何を焦っているんだい。背中が痛むからって、湿布を張ってから眠ったのを忘れたのかい?」
「ああ、そういえばそうだった」
言われてみれば、背中には冷感の他に微かな痛みが残っていた。筋違いをして自分で背中に冷湿布を張ったというのに、すっかり忘れていた。
「俺ってば、馬鹿かよ――」
疑問が解決し、俺は思わず声に出して笑ったが、ふと冷静になると、新たな不安が襲ってきた。
「……さっきの声、誰だよ?」
俺は一人暮らしで、この家には他に人はいないはずなのに……誰が喋っていた?
謎の声の存在に、俺の背筋は凍った。
了