異邦からの訪問者
「えっと……」
まず、どうやって声をかければいいんだ。
こんな状況での初対面。助けに入ったはいいものの、アニメの様にはいかなかったのだ。
まずは、現在の状況を整理しようじゃないか。
俺の真上には異世界から来たと思われる少女が一人乗っている。さらに俺は、彼女の下着が見えるアングルに位置しており、彼女は顔を赤らめている。
謝罪か?
挨拶か?
いや、謝罪だろ。
だが、この状態でどうやって?
迷っていると、先に上の方から声が聞こえた。
「き、貴様! み、見たな。私の……」
顔を見ると、頬をさらに赤らめて拳をグーにして震わせ、視線を鋭くしている。顔つきも険しい。
避けなければ確実に殴られる。
だが、こんな状況で一体どうやって避けろというのだ!
顔だけでも交わせる様に拳に注視していると、彼女の拳は蒼白く輝き始めた。本来ならあれが魔法かと思い、まじまじと観察していたが今はそんな場合じゃない。大体、魔法まで使うなんて。こいつ俺を殺そうとしているんじゃないか!?
やばい。
命がやばい。
「おい、待て。これは事故だ」
「知らん! すべては貴様のミスだ。覚悟しろ!」
拳が振り下ろされる。
覚悟するしかない。
そう思った時だった。
「そこまでにしときなさい」
直後、左耳のすぐそばで凄まじい音がする。
内心おびえながらゆっくりと目をそちらへやると、すぐそば。どうにか目のピントが合うような位置に白い肌をした拳があり、床へと視線を落とすと白いタイルにひびが放射線状に走っていた。
こ、こんな時は一体どんな表情をすればいいんだ。おびえればいいのか。いや、だめだ。もうわけがわからない。
「はあ、一体どうなってるのかしら。わけがわからないわ」
タイルをそこの硬い靴でたたく音が近づく。
ああ、俺とまったく同じ意見だ。
その言葉を発した確認する。それは先ほど俺をこの部屋に案内してくれた白衣の人だった。