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出会いは宙から

 週末の朝。詳しく言うなら日曜の朝七時。


 本来なら未だに惰眠をむさぼっている時間なのだが、学校での敗戦によっていま俺は広大な施設の中にいる。


 渡航港とよばれているその施設。まるでどこかの研究所の様に辺りを木々で覆い、その中に白く塗装されたコンクリート製の平べったい施設がある。


 それは、もう一人の自分を呼び出すための施設だ。葵から渡されたのは通信装置であり、もう一人の自分とコンタクトをとることしかできないのだ。

ちなみに、その機械も個人情報やらを登録したりするので使い回しはできない。これが連絡を取りづらくしている原因の一つである。

 

 そして、チャットのようなものでもう一人の自分とコンタクトを取った俺はそいつを迎えに来るべく、この施設に来たのだ。

 

 あの機械ですべてが完結してしまえばいい。


 ここに来る途中、何度そう思っただろうか。


 必要書類をそろえて申請する作業は非常に面倒なのだ。


 厳重なセキュリティーチェックを終えて施設内へと入り受付で書類を出す。そこにはすでに多数のドッペルがいた。どこを見ても手をつないだドッペルがいる。

 ああ、俺もあったらああしなければいけないのか。

 

 そう思うと、さらに面倒になってきた。

話によると、マモとは手をつないでいなければならないらしい。ちなみにこのマモというのは、もう一人の自分を指す言葉だ。


 一日中手をつなぎっぱなしでいないと、相手の命が危ないらしい。こんなことなら、駄々をこねてもやめておくべきだったろうか。


 そうは思ったものの、あれを相手にして口論で勝てるとはとても思えなかった。最終的にはこうなる。

 

 それにここまで面倒だとは言ってきたものの、多少の好奇心はある。本当にもう一人の自分と会えるとしたら、そいつは俺とまったく同じ思考回路を持っているのだろうか? 


 好きなものも一緒だったりするのだろうか。


 趣味も一緒だったりするのだろうか。


 そんなことを考えながら順番が来るのを待っている。


 空港のロビーを連想させるような待合室で番号が表示されるまで待っていると、アナウンスが流れると同時に各所に設置された液晶掲示板の表示が変わった。まるで、出発便の案内表示のようなそれには番号と部屋番号、それに時刻が記載されていた。


 手元の用紙と見比べる。用紙はこの施設で手続きを行た時に受け取ったものだ。これがチケットになるのだ。


 どうやら順番が回ってきたらしい。

表示された部屋までは案内板を見つつ向かった。研究施設の様な白い通路を歩く。


 そうして、十分ほどかけて目的地の近くまでたどり着いたのだが、いまいち詳しい場所がわからない。どこか、道を間違えたか。


 案内板を見る限りこのあたりのはずなのだが。


 しばらく、近くの案内板を見ていると声がかけられた。


「あなた、志乃澪さん?」


 声にして振り返ると、そこには白衣を着た女性がいた。白のワイシャツにジーンズと随分ラフな格好である。


「えっと、あなたは?」


「君の担当。ついてきなさい」


 随分と愛想のない表情でそう告げた後、彼女は身を翻し歩き始めた。俺もその後を続く。


「えっと、施設を利用するのはこれが初めてで。健康状態に異常はなし。生年月日は……」


 女性は次々と独り言のように確認事項のようなものをしゃべり始めた。時々、こちらの同意を求めては来るものの聞いているかどうかは怪しいとこだ。


 少しいい加減すぎやしないか。


 そんな疑問をいままで何人が持っただのだろうか。


 まあ、どうでもいい。


 会えさえすれば。


 女性に言われて通された部屋は過剰なまでに白く清潔感のあふれるような部屋だった。


 そして、片隅にはいかにも値の張りそうな機器がずらりと並べられているのだ。


 そして、壁の一面はガラス張りとなっていて向こう側を伺うことが出来る。


 あちらでは何人かの作業員が機器に向かい合い、装置を操作している。


「じゃ、これから装置動かすからそこにいてもらうぞ」


 白衣姿の女性はそういうと、部屋から立ち去り隣へと移った。


 直後。


『これより、出会いを開始いたします』


 あらかじめ録音されているのであろう音声がどこからともなく流れ出す。

 いよいよだ。


 これまでの苦労もこれでようやく報われる。


 そう思うと、いてもたってもいられなかった。自然と足も魔法陣の方に近づく。


 魔法陣は輝きはじめ、その中空になにか影のようなものが表れ始める。


 初めて見たが、ああやって現れるのか。


 関心しながらそれを見ていると、影がゆっくりと色づき始めていく、白や赤、黒などが染みわたるようにして広がっていくのだ。


 だが、どうもおかしい。特に現前に現れるそれはどうみても足なのだが、そこに広がっているのは肌色なのだ。普通なら、服の色が来るべきではないのだろう

か。だが、それが服の様には見えない。


 そして、その先にはスカートのようなものがあるのだ。


 まずい、非常にまずい。


 俺の本能がそう警告しているのだ。


 頭部に辺りそうなところには長い夜色の髪が垂らされている。体つきもはっきりとしてきた。


 そして、彩色豊かになったそれは、宙空から糸が切れたかのようにして重力に吸い寄せられていく。


 そこから先は無我夢中だった。


 気が付いたら走り出していて、次の瞬間には胸のあたりに衝撃が走っていたのだ。


 顔をゆっくりとあげ、その落下物の正体をそうであってはほしくないと願いながら確認した。夜色の長い髪をたらし、白が特徴的な制服を着ている。無論、着ていたのはミニスカートだった。こちらを少し睨めつけているその顔は赤くなって恥ずかしそうにもしている。


 そして、スカートが顔にかかっているので目線を少し動かせば女性ものの黒い下着も確認できる。


 ああ、その顔立ちだけで判断できる。


 こいつは正真正銘の女だ。


ようやく、メインヒロインの登場です。

彼女は本当にもう一人の自分か!はたまた機械の故障か!

次回(明日)をお楽しみに



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