騒乱のテーマパーク五
男らしい姿をした短髪の女性。それと対を成すようにして大和撫子を体現したような黒髪の少女だった。
なんだ、あの格好!
短く表現するならば、その二人の格好は俺にとってドストライクだった。
短髪の少女はデニムのホットパンツを穿き、褐色の太ももをあらわにしていた。上はプリントTシャツに黒のジャケットを羽織り、だらしなくキャップをかぶっている。
そして、もう一人はこの遊園地に似合わない格好で合った。
赤い着物に身を包んでいたのだ。だが、こちらに至ってはボーイッシュの女性より異常だった。本来は肩まで包んでいるはずの着物が胸元まで垂れ下がっているのだ。
扇情的で艶やかその姿は直視することをためらうほどである。
その正反対な二人をかろうじて繋いでいたのは二人で握っている一つの槍であった。
「一体、こいつらは……」
俺がそう聞くと、ボーイッシュな方が答えた
「私たちはちょいとこの世界を疑問に思っててね。この事態に対する反応を見たいのさ」
続いて、撫子が言葉を続ける。
「この不条理な世界を変えたいとは思わない?」
「ハッ、あんたたちの言う不条理がどんなもんだかわかんないけど、今この状況に巻き込まれた一般人の方が不条理じゃないのかしら?」
唯がそういう。
「ああ、そうさ。不条理だとも。だから私たちの時代で最後にするのさ。お前らはそのラグナロク前に食べるおやつだ。こっちの世界ではこういうんだろ『空腹じゃあ瞬殺できねえ』って」
「それを言うんだったら『腹がすいては戦は出来ぬ』ですよ」
「どっちでもいいぜ。とりあえず、ぶったたくだけだ」
「そうね」
刹那。
二人は少し身をかがめたかと思えばそのまま跳躍した。
「おい、嘘だろ。あの格好で!」
「驚いてる暇はないぞ!」
唯が叫ぶ。そうだ、気を抜いている暇はない。
上を見ると、そこには二人が寄り添うようにして槍を包んでいた。
「いくぜ!」
「ええ、いきます」
二人は槍を触媒として、まるで一つになったかのようにピッタリとくっつく。
『世を切り開く一撃!』
声を合わせた一撃。
「やばい。逃げろ。魔法だ!」




