十五話 夕焼けの遭遇
「レイ君……その子は……」
表情を見なくとも声から推測できるほどに葵の発したそれは震え、何かにおびえているようにも感じ取れた。
鈍感な俺でもこれはさすがに分かる。このままじゃ確実に誤解される。だが、俺がこの短時間で説明できるか。
無理だ。葵はすぐに逃げ出すに決まっている。
考えている時間はもうない。面倒にならないためにはこれしかないのだ!
「葵!」
精いっぱいの声を腹の底から吐き出した。横隔膜を限界まで使い、辺りの人々も振り向くほどの声量をだ。当然何事かと周囲の人々はこちらへと顔をやるが関係ない。
こんな、面倒なことに巻き込まれて葵との恋を終わらせたくはないんだ。
「な、なに」
いきなり大声を出して呼んだのが効いたのか、ピクッと体を膠着させた。この瞬間しかない。
俺はすっと足を踏み出し、葵の元へと駆け寄ろうとする。
「葵、俺はお前のことが!」
このまま、俺は葵を抱きしめてドラマチックなムードで……。
「なんだ、お前二股か?」
唐突に唯がそう口走った。
「……ねえ、レイ君。その人今なんて」
葵は確かめるようにして聞く。
「ああ、それがだな……」
この状況をどう乗り切る。
どうする俺。
今、ゲームの様に選択肢が表示されるのならば俺はそれを選択したい。だって正解がどれかしらあるんだから。
それに加えて、今現在の俺は天文学的な選択肢のうちの行動からたった一つを選ばなければいけないのだ。
どうする、どうする。
いや。
葵の場合はもう素直に話した方がいいのではないだろうか。
そうに違いない。
下手に言い訳をして、地雷を踏むわけにはいかないのだ。
多分、その地雷は核地雷並みなのだろうから。
「こいつは、お前からもらったあの装置でだな」
辞退お説明し始まると、なぜか唯が俺の腕をぎゅっとつかんだ。
それになぜか暖か柔らかい。
ふと、腕を見ると唯が胸を押し当てる様な形でって。
「おい、おおお。お前」
直後、唯が爆弾を投下した。
「悪いが澪は私のだ」
きっぱりとそう言い切ったのだ。
投稿時間が遅れてしまい申し訳ないです




