初の呼び出し
指定された店は今いるところから十分もしない場所だった。
そこは、駅へのメインストリートに面したカフェだった。店内も心地よいジャズのBGMが流れていた。
そんな店内に異様な格好の女性が一人。窓際のテーブル席に座っていた。長いロングの髪に白衣を羽織り、パソコンを操作していた。
「あれだな」
唯もそれに同意した。
「まちがえないな」
ゆっくりと近づいていく。
「芹沢さん。来ましたよ」
そういうと、すぐさま芹沢はパソコンから目を離してこちらへ振り向いた。
「早かったわね。とりあえず座って」
「はあ」
進められるがままに席へとつく。
「お似合いのカップルね」
「余計なお世話です。それで、なんです? 昨日の今日で連絡してきて。まさか、本当に故障だったってわけじゃないですよね」
それだったらどれほどうれしいことか。
「まあ、そんなにいい知らせじゃないわよ」
「早く本題に移ってくれないか?」
唯がなかなか進まない本題へと強引に話を振った。
「そうね。で、本題なんだけど、とりあえずこれを見て」
そういって、見せられたのはとある渡航湾の写真だった。
「これがどうかしたのか?」
唯が不思議そうにそう言って、画面を凝視する。
「実はね、調べてみたら貴方たちみたいなことが他に一件あったらしいのよ」
「本当ですか!」
どうやら、俺たちだけが特別ではなかったらしい。もしかしたら、俺たちよりも詳しくこの異常なことの原因を知っているかもしれないのだ。
「それで、その人たちは」
そう質問すると、芹沢さんは首を横に振った。
「まさか、研究機関につかまって……」
「それだったらよかったわよ。それよりももっと最悪なの」
「え、何があたんですか」
芹沢は少し黙ってから、静かに告げた。
「マモが殺されたのよ。こっちの自分によってね」




