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金策!

 そんなこんなで成り行き的に外出することになったのだが。


「はあ、まさか学校休んで外にでるとはな」


「なんだ? 学校行きたかったのか?」


 その呟きに反応して、少し申し訳なさげに顔を覗かせた。


「いや、学校は早々諦めてるよ。問題は学校の連中に会うことだ」


「なんだ? 仲が悪いのか?」


「いや、そんなわけじゃない。問題は俺とおまえが手を繋ぎながら歩いてるってことだ」


「ん? なんだ恥ずかしいのか?」


 唯は悪戯っぽく、自信満々なこえで言った。


「まあ、私みたいな美人が隣にいればはずかしいだろ」


 はあ、一体この過剰な自信は何なんだ。どこから湧いてくるのか分からない。もしかしたら調節のために弁でもつけておいた方がいいかもしれないほどに。


「そうじゃない、俺には彼女がいるんだ。そいつの耳に入ったら面倒だ」


 唯は「ああ」と言ったような反応で合った。


「その気持ちは分かる。私にも彼氏がいるんだ」


 ほう、唯にも彼氏がいたのか。それは驚きだった。てっきりこんな性格だから彼氏など作らないものだと考えていただけに。


「だが、今はそんな事などどうでもいい。問題は今後の生活だ。しばらく変えることも出来ないとなると、当面の間の食料も確保せねばなるまい」


 確かに唯の言う通りであった。食べるものがなければいけないのだ。だが、その食べるものを買うためにはお金が必要になってくる。


 おもむろに財布を取り出し、中身を確認する。


 一万五千円。


 何度、数えても一万五千円。


 これで本当にしばらくの間暮らせと?


 無理だ。


 一人ならどうにかなるだろうが、二人でこの額は少しきついような気がする。これから買い足さねばいけないものもあるのだ。


「おい、どうしたんだ?」


 しばらく固まって動かない俺に対して、唯が問いかけてくる。


「ああ、ちょっと絶望をな」


「ん? なんだ金がないのか?」


「ああ、まったくその通りだよ」


 唯は左右をきょろきょろと見渡してから、狭い路地に引き込んだ。


「おいおい、一体どうしたんだよ。こんな人通りのない狭いところに」


 ビルとビルの間。それも大通りから見えない死角に引き込まれたのだ。


「まあ、金を増やすための手段だ。静かに見ていろ」


 こんな薄暗いところで一体何をしようというんだ。


 まさか!


「おい、まて。犯罪的行為じゃないだろうな」


 こんな狭いところでしかも薄暗い場所で手っ取り早く金を増やすのだ。これはダメだろ。俺の心配をよそに唯は当然とばかりに応えたのだ。


「犯罪でもしないと、無理だろ。まあ見ておけ。あと、札を一枚貸せ、すぐに返す。なるべくでかい額を頼む」


 言われたとおりに、一万円札をかすと彼女はそれをしっかりと観察する。裏と表。さらに、手触りや透かしなど、偽造防止の部分まで。


 そこでふと気が付いた。


 昨日の夜の出来事を。


「おい、まさか……」


「安心しろ。番号はしっかり変えておくからばれることはない」


 やっぱりこいつ―


 偽造する気だ!


 そうこう思っているうちに、蒼白い粒子が発生したかと思うと唯の手のひらに集まり長方形をかたどり始めた。それはすぐさま色が付き始める。


 そして、わずか数秒でそこには一万円札が複製された。


「ま、捕まるようなへまはないだろ。一応、銀行では使うなよ」


 唯がすまし顔で答えやがった。


 いや、いくら何でもダメだろ。


「ん? どうした? これでしばらくの軍資金が出来たのだぞ。喜べ」


「喜べるか!」


「だが、非常事態だ。許してくれるだろ。さ、買い物へ行くぞ。しばらくクラスとなれば私も買い足すものがあるからな」


「おい、俺の抗議を聞け」


「買い物が終わった後な」


 それだけ述べると、あとの抗議は全て聞き流すようにして唯がぐいぐいと歩いていく。


 本当にこれでいいのだろうか。


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