日常の瓦解の始まり
授業終わりの教室。ごくごく一般的な作りの都立高校。その、窓側一番後ろから二番目というなかなかの好立地で俺は帰り支度をしていた。
そんな時だ、不意に声がかかったのは。
「ねえ、レイ君。ちょっと聞きたい事あるんだけど……」
そう声をかけてきたのは俺の真横に座っている女子生徒、貝塚葵だった。肩までの栗色ショート髪に白い肌、柔らかな頬が目につく。
傍目に見ても可愛いと思う、そんな彼女は俺の恋人であった。はっきり言って勿体無いないくらい可愛い。
そして、レイと呼ばれたのは俺のことだ。
本名は志乃澪なのだが、一番最初に俺の字を『レイ』と読み間違えて以来ずっとこうして呼ばれている。今となっては気にすることはない。
「聞きたい事ってなんだ?」
そう聞くと、バックの中から一枚のパンフレットらしきものを取り出し、こちらへそれを手渡した。
一体なんだ?
疑問に思いながら、もらったパンフレットに目を落とすと、そこには『アルトーバ』という名が印刷されている。そして、売り文句には『もう一人の自分に連絡を! より、刺激的な経験を』といったことが書いてある。
ああ、これか。
そんな程度に感じた。いや、正確に言うならそんな程度にしか感じなかったのだ。
もう一人の自分に連絡。
異世界の自分に連絡が可能という機器が世に出たのはもう何時のころだったろうか。昔の人間ならば一体どこのファンタジーだと鼻で笑っていただろうが、今は技術が確立されて創作物ではなくなっているのだ。
地球すべてを丸ごとコピーしたような世界。そこには容姿や性別が完全に一致したもう一人の自分がいるのだ。
そして、その人物はこちらの世界にきてもう一人の自分と会うことが出来る。実際に町に出ればそんな二人。俗にドッペルと呼ばれている双子の様な二人組を見ることが出来るのだ。
「で、このパンフレットがどうしたんだ?」
葵はもう一人の自分に会いたいのだろうか?
いや、前に話した時は興味などないと言っていたはずだが……。
「あのね、当たったの」
「当たった? 何がだ?」
「これ」
葵が指さしたその先にあったのはパンフレットだった。
「レイ君、興味ある?」
もう一人の自分って。
初めまして、月英と申します。
今回初めて投稿させていただきました。まだ、慣れてはいませんが、面白いものを作っていこうと思っていますのでよろしくお願いします
今回の作品は夜芽時雨さんとの合同でこの作品を書かせていただいております、
『俺ヒロ』でタグ検索をすればそちらの作品が出ると思いますのでよろしければそちらもご一読ください。