君の彼女
あなたのその、くしゃくしゃになったその横顔が、僕にはとても綺麗に見えて。
わかっている。こんなの、偽りの優しさだってことは。
それでも、僕はあなたが好きだった。
好きだから、笑ってほしかった。
彼女には恋人がいた。
職も安定して、給料も良い。それに彼女も働いていた。
お互いに将来のことも話をしていた。
それでも、そんな幸せすら壊してしまうのが誤りだった。
二人は交差点で、信号が青になるのを待っていた。
すると、一台の車が滑り込むかのように道を曲がろうとして、失敗した。
道に突っ込んでいったのだ。
そして、運悪くと言うべきか、偶然と言うべきか、二人はそこにいたのだ。
とっさの判断で、彼は彼女を押して助けた。
けど、彼はその瞬間に潰された。
骨など無いように、せんべいのように、ニキビを潰したように、無様に、死んでいった。
彼女も多少の怪我をしていたのだろう。救急車で病院に運ばれていった。
彼を失った彼女は、酷く痩せ細り、生きる気力を無くしていた。
それでも、ずっと僕のことを思って泣いてくれている。
その横顔だけで、僕はもう満足だ。
でも、僕のことはもう忘れてほしかった。
新しい恋をしてほしかった。
だから、彼は魅せられたんだろう。
あなたのその、くしゃくしゃになったその横顔が、僕にはとても綺麗に見えて。
わかっている。こんなの、偽りの優しさだってことは。
それでも、僕はあなたが好きだった。
好きだから、笑ってほしかった。
「僕を、あなたの彼氏にしてください!」
「…はい」
いやー、よかった。
彼女も新しい恋が出来た。
僕のことを忘れて、後は楽しく生きてくれれば、それでいい。
偶然と言うべきか、奇跡というべきか、彼を彼女に会わせてくれて、ありがとう。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。