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第18節44部ー10点満点の着地ー

 そうして槐さんとお別れし、細々とした路地を北に進む。

 芙蓉さんは、まあ当たり前だけどついてきてくれることはなかった。

 狐面をつけたまま、素顔を見たことがないんだけど芙蓉さんって汰鞠とどこか似てるような気がするんだよね。


 話し方だったり、九十九さんに従う姿だったりが似てるのかな。


「芙蓉は九尾狐の影じゃ」

「影? 影武者みたいな感じ?」

「そうじゃの。わしですらあやつの素顔は見た事が無くてな……ん。やはり大通りにはちらほら蛇姫の手下どもがおるの」

 このわしがこそこそと……なんて、悔しげにつぶやいているところを見ると、こころが痛む。

 さっきから僕は銀露の手をとって歩くことにしているんだけど、それは銀露がむやみやたらに蛇姫様の神使の前に身を晒さないようにしてるんだ。

 こそこそするっていうのが性に合っていないらしくて、放っておくと堂々と大通りに出かねないから。


「文字通り、今はぬしに手綱を握られておるようじゃ」

「銀露はあんまり無茶しないでね。……で、どこに向かってるの、これ」

「北に、緋禅楼閣があるでな。そこにおるとは思えんが、見つけ出す手がかりにはなるじゃろ」


 楼閣か……楼閣といえば立派なお屋敷っていうイメージではあるけど、どんなところなんだろう。

 

 いや、結果としてその楼閣がある場所まで行ったんだけど、無かった。

 あったのは大きな穴だけ。銀露が結界の類でそう見せているだけなのではないかと調べてみたけど……本当にそこには大穴しかなかったみたいだ。


「銀露、ここに本当にあったの?」

「うむ。間違いないはずじゃが……」


 すり鉢状に開いた大穴には、楼閣がかつてここにあった証拠なんて全く見当たらない。

 そうして色々と痕跡を探しているうちに……。


「見つけたぞ。はやりここに来たか、銀狼」

「その人の子を渡せ、今の貴方では我々は退けられませんぞ」


 後ろから、幾つもの足音が聞こえてきた。蛇姫様の神使たちだ。

 やはりここに、ということはかつてここに蛇姫様がいた楼閣があったってことなんだろう。


「銀露、逃げるよ! ……銀露?」

「あー……うむ。大丈夫じゃ」


 銀露の手を引いたけど、まったく動いてくれないどころか、空を見上げたままぽかんと口を開けている。

 なんだろうと僕も空を見ると……。


「あにさまー……!!」

「こっ……子鞠!?」


 そう、子鞠が夜空から落ちてきていた。しかもものすごい勢いで。

 受け止めようと落下地点に行こうとした僕だったけど、それを銀露が止めて……。


 次の瞬間。


「ぐぁ……っ」


 蛇姫様の神使たちの、消え入りそうな悲鳴が聞こえた。

 子鞠の落下直前、ものすごく大きな鞠が現れて神使たちを押しつぶしたんだ。

 そして、その大きな鞠に自分の体を跳ねさせるようにして落下の勢いを殺し……。


「お、おお……すごい身体能力……」


 ぽーんと跳ねた子鞠は体を丸めてくるくると回転しながら放物線を描き、僕と銀露のところまで落ちてきた。

 すたっと両足をついて、まるで体操選手のような着地を決めた子鞠は両腕を広げて、むふんとドヤ顔を浮かべ……。


「10点!!」

「じゅってん……」


 得点の価値がわからなかった子鞠が、僕の評価に小さく首を傾げてくれた。


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