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第18節42部ー高笑う銀狼様ー


……——。


 僕と銀露は子鞠や汰鞠が匂いを追ってここに来るのではないかと、しばらく待った。

 でも、九十九さんの神使……そう、芙蓉さんがここに来て言った言葉は……。


「銀狼様、貴方の神使は捕らえられました」

「ふむ。やはりの」

「やはり? どゆこと?」


 そう、まるで捕らえられるのがわかっていたかのようなことを、銀露は言ったんだ。

 

「芙蓉、うぬ、子鞠と汰鞠にいくらか事情を説明したじゃろ」

「はい。ここへ呼ぶ時に。あまりに時間がなかったため、端的にですが」


 狐面をつけたまま平坦な声色で淡々と話す芙蓉さんと、あぐらをかいて座布団の上にちょこんと座る銀露の会話。

 それは、必要なことだけをやりとりしてすぐに終わった。


「では、私はこれにて」

「うむ……いや、待て。九尾の奴はどうしたのじゃ。あやつこそ、今のわしの姿をここぞとばかりに貶めに来ると思ったのじゃが」

「九尾様は、あなた方に肩入れしたおかげで宇迦之御魂神うかのみたまのかみ様に呼び出されました。本来、九尾様は絶対中立のお立場におります故、みずち様が癇癪を起こしたのでしょう。あの方はいたく蛇姫様を愛でておられますので」


 いわゆる、部下の不祥事は上司の責任……といった感じなのかな。宇迦之御魂神様といえば、京都の伏見稲荷大社の女神様だよね。

 とても偉い神様の筈。

 それに対して蛟様っていうのは……イメージとしては蛇、水、川の神様ってことくらいしか知らないかな……。

 そもそも、蛟って定義が広すぎるから、もしかすれば個人の名前なのかもしれないけれど。


「ふむ、確固とした立場を持つあやつも大変じゃの。宇迦の奴にはわしも随分絞られたことが……あまり思い出しとうないの」

「銀露が絞られるって……あんまり想像つかないな」

「力の強さだけでならどっこいじゃがな。まあ、奴を敵に回すとぞろぞろと周りの神まで敵に回すことになるからの。須佐の戯けなど一番厄介じゃ」


 うう……なんだか僕の想像してた以上に、銀露の顔って広いみたいだ。

 いや、それよりも九十九さんの助けが借りられないということは、本格的に僕らだけでなんとかしないといけなくなったな。


「とにかく子鞠や汰鞠を助けに行かないと……」

「行くのはよいが、どうせなら雄の格好をしたぬしがよいな」

「僕もその方がいいけど……。男の格好をしたら遊女さんたちがここぞとばかりに寄ってきてくれるんじゃ」

「かかっ、わしが側におるのをわかってて寄ってくる遊女などこの緋禅にはおらんわ。もしれば相当な戯けか命知らずじゃの」


 そう言って、慎ましやかな胸を張って高笑いする銀露。

 そ、そこまでの自信はどこから来るんだろうか。


「雌のぬしもよいが、このわしを護ると言う者が性別など隠してどうするのじゃ。わしは強くなくとも勇敢な振る舞いをする愛らしい雄が好みなのじゃぞ」

「強くなくちゃ雄じゃない! とか言わないんだね」

「強さならわしが持っておるからの。今はこの体たらくじゃが」


 遠回りにまだまだひ弱だと言われたような僕は、苦笑いを浮かべていたけど……対する銀露はというととても愉快そうに笑っていた。

 


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