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第18節38部ー柊千草を欲する理由ー

「捕えるのはいいが、あの人の子はお前さんのものにはならんらしいぞ」

「きしし、知ったことではありんせん。手に入れば、いくらでもやりようはありんす」

「ったく……これだから蛇は……」

「うん? なにか言ったかや?」

「なんでもねーよ。居場所はわかってんだろ?」

「紅緒亭じゃ。あっこはわっちの管轄ではありんせん。下手に手出ししようものなら東の奴が怒りんす」

「槐さんのところか。へっへ」


 黒狼は、やるじゃねぇかあの人の子と、にやけっ面で言う。それを不審に思った蛇姫は表情を少しばかり歪めたが、それに気づいた黒狼は言う。


「いやいや、最近は社に参りもしねェ人間が多いってのに。その神を体張って護るような奴がいるんだぜ。なあんか嬉しくなっちまうよな」

「ふん、なにを今更言っておるのかや。必ず手に入れなんし」

「はいよ。まあ任せときねぇ」


 そう言って背を向け、去ろうとする黒狼の背中を横目で見ながら、鬼灯の巫女が蛇姫の前に進み出た。


「蛇姫様、何故ここまでして柊千草を求めるのですか」

「きさんでもわからんか、鬼灯の巫女。いんや、気づいとるはずじゃ。あの人の子は、白狐と深く関わりがあるということは」

「それは……存じております」

「わっちはあの白狐しろぎつねが大っ嫌いじゃ」

「白狐様への当て付けのために?」


 なんて、なんてくだらない理由なのだろうか。……と、鬼灯の巫女は言葉を失いそうになった。

 だが、それも一瞬だけだ。次の会話が、巫女の目を覚まさせた。


「ふん。そんなものはついでに決まっていんす」

「では……何故」


 

「あの人の子は、人の身でありながら唯一、神にやや子を孕ませることができる子じゃ」

「……!!」

「それがなにを意味することか、きさんにはわかっとるはずではないかや?」


 妖しく、艶っぽく笑みを浮かべる蛇姫を前に、なにを求めて柊千草を捕らえようとしているか察した鬼灯の巫女は、さらに言及するために口を開こうとした。


 だが、その口から言葉が出ることは叶わなかった。何故か。


「何事かや」


 凄まじい勢いで、この間の襖が開け放たれ、蛇姫の神使が入ってきたからだ。

 随分と慌てた様子だ。無礼も何も考えず、とにかく今起こっていることを簡潔に言い放った。


「おっ……銀狼の神使がっ……檻から抜け出しました!!」

「何……?」


 そう。子鞠と汰鞠だ。

 あれだけおとなしくしておかないとダメだと、落ち着いて捕らえられていたはずの彼女たちが、檻から抜け出して暴れているというのだ。


 しかも、蛇姫や黒狼の神使がいるにもかかわらず、一切止められないというのだから恐ろしい。


 一体、何があったのか……。それはほんの数分前に遡る。




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