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第18節19部ーいざ、緋禅の大通りへー

 

 散々尻尾をもふらせてもらったあと、まだ触ったことのないお耳もそこそこいじらせてもらった。

 どうも、お耳はとても敏感で繊細なところらしくて、九十九さんの反応がどんどん……その、色っぽくというか湿り気を帯びてきたところで止めにした。


「い……意外と上手にいじいじするじゃねーですか……っ」

「うへへへ、お耳は初めて触りました。ありがとうございますっ」


 なんだか、もふもふコリコリした感触がたまらなくて、尻尾より触ってたんじゃないかな、狐耳。

 頰を赤くしながら、どこか悔しそうな目で僕を睨んでくる九十九さんは少しいじらしい。


「こ、こほん。千草君の制服はお家に届けておきますのでご安心を」


 わざとらしい咳払いをして、真面目な顔に戻る九十九さんだけど、まだ頰が赤いし、少し汗ばんでるからちょっと無理させちゃったのかな。

 お耳はあんまり無理に触らないほうがよさそうだ。

 芙蓉さんが丁寧に畳んだ僕の服を持ってぺこりと会釈すると、九十九さんの後ろに下がった。


「その格好ならば、ここの遊女たちに色目を使われることもねーでしょう。本当なら今すぐにでもここから出してあげたいのですが、蛇姫はあなたがここから出ることができないよう印を押したようです」


 最後に、九十九さんは自分のお尻を僕に向けて、この辺にと指差していた。

 それにつられて僕もお尻を見ようとするけど、着物に包まれたそこが見えるはずもなく。


 っていうか、もしかしてそれを確認するために目の前で脱がせてたのかな……。


「さてと、もう少しあなたとお話ししていたかったのですが……」

「えっ、どこ行くんですか、九十九会長!」

「言ったじゃねーですか。一から十まで、あなたの面倒は見ませんと。私には私の用事がありますので、これでお別れですよ」


 随分と冷たくあしらわれたけど、九十九さんの口の橋が引きつっているのに僕は気づいていた。

 多分、九十九会長はその立場からあんまり僕にばかり構ってられないんだろうな……。


「お出口はこちらです、柊千草」


 芙蓉さんに言われるがままに、僕は外に出た。

 最後にふと振り向き、九十九さんに挨拶しようとしたんだけど、芙蓉さんが視界を遮って早く行けと僕を外に押し出した。


 外に出ると、そこは大きな通り。やっぱり遊女たちが行き交い、身なりのいい男の神様を誘っているみたいだ。


「おお……僕が男だって気付かれない。これなら自由に歩けるな」


 なんて。遊女たちへの警戒心しかなかった僕は意気揚々とその大通りを歩き始めた。


……——。



「芙蓉、さすがに最後のは冷たくし過ぎましたかね……」

「いえ、突き放すくらいがちょうどいいかと。……なんですか、その未練だらけのお顔は。あなたを慕っている神使たちに示しがつかないではないですか」

「本当は……本当は……1から10まで手取り足取り面倒見てあげたかったです」

「お立場をご自覚くださいませ。九尾様。あの人の子は今、銀狼の庇護の元。余計な手出しをするべきではありませぬ」

「ぐぬぬぬ……」



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