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第18節14部ー金色の助け舟ー

 

 どこに逃げても遊女さんがいる! 人間の男がそんなに珍しいのか、みんながみんな反応して僕を捕まえようとしてくるんだけど……。

 しかも、闇雲に走ってたからか、もっと華やかなところまできてしまっていたみたい。

 

 どこを見ても、派手な格好をした遊女さんばっかり……。


「あらあら、この子、もしかして噂の……?」


 僕を連れて行こうとする遊女さんの言葉の中で、そんな言葉が聞こえた。噂の……なんだろう。いやそれよりももう囲まれちゃったよ……!!


「さあ、お座敷に」

「おっ、お座敷!!」


 本格的に連れて行かれるといったところで、僕の耳元に、すこし声色が違う言葉が囁かれた。


「すこしの間、目を閉じていなさい。金色九尾様がお待ちである」

「……きゅーびっ」


 九尾様が? と言い終わる間も無く、僕の体は抱きかかえられてふわりと宙に浮いたような感覚に包まれた。

 そのあとに、どんどん下へ遠ざかっていく遊女さんたちの残念そうな声。

 凄まじい浮遊感が怖くて、僕はずっと目をとじていたんだけど……誰かに抱えられていることははっきりとわかっていた。


 それに、金毛こんもう九尾様と言えば、稲荷霊山でも会った狐面の人。


 その浮遊感がなくなった後、僕を抱えている人はどこかの屋根に乗ったのか、瓦を踏む音が聞こえてきた。

 その直後に窓の開く音。

 どこかの部屋の中に入ったみたいだ。そこで僕はまた耳元で囁かれた。


「もう目を開けなさい。金毛九尾様の御前である」


 そうして下ろしてもらって、僕はようやく目を開けた。目を開けてすぐに見つけたのは、狐面の九尾様だった。

 白を基調とした着物に身を包み、長く金色の髪を束ねることもなく自然に下ろしてる。

 背後ではもっふりとボリュームのある綺麗な尾が9本。相変わらず狐面をつけているから顔は分からない。


「ご苦労様です、芙蓉ふよう。下がっていーですよん」

「はっ」


 と、僕は振り返ってそのフヨウという人の姿を見た。まるで忍者のような黒装束を身にまとった亜麻色のポニーテールの女性……なんだけど、やっぱり狐面をかぶっててお顔が拝見できない。


 フヨウさんは、小さな声で失礼のないように、と言いながらすっと姿を消してしまった。

 本当に忍者みたいだ。


「さてさて、本当に悪い子ですねぇ、あなたは。鬼灯の巫女に、あの桜には散々近づいてはならないと言われていたじゃねーですか?」

「なぜそれを知ってるんですか?」


 本当に呆れたように、その狐面の九尾様は言う。その口調と声はどこかで聞いたことがある。

 そう学校の入学式の時だ。


「なぜも何も、生徒会長には全てお見通しですぅ。ぶへへへ」


 意地の悪い笑い方をしながら、その九尾様は狐面を右手で外した。そう、もう見間違えようがない。

 水無月高校生徒会長、九十九稲荷つくもいなりさんだ。


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