第17節最終部ー終わる1日ー
うおお……銀色の毛がふっさふさの尻尾……。僕がずっともふもふしたかった尻尾が今まさに手の届くところに……!!
「い、いいの……?」
ゴクリと息を飲んで、僕は膝の上に横たわる尻尾に手を伸ばそうとしたんだけど……。
「おふっ」
「ただ触れられるだけでは落ち着かんっ」
僕の膝から尻尾が跳ねて、ばふっと顎を直撃。銀露のむっつりとした頰が赤い。ふいと顔を逸らしたのもあって、なんだか恥ずかしがってるみたいだ。
「んーじゃあ。何か理由があればいいんだね」
多分、銀露は何かを期待してる。その期待感が尻尾にも出てるんだもの。少しばかり揺れて、今か今かと待ってるような……。
「じゃあ、銀露」
「ぅん?」
「尻尾の手入れをしてあげよう」
正確には、毛並みの手入れかな。本当なら、ちゃんとした櫛が欲しいところなんだけど……。
「手櫛でだけど。いいかな?」
「んん、仕方ないのう。ほれ、好きなように梳いてみよ、ほれほれ」
僕の膝の上で波打つ尻尾を左手で軽く押さえて、右手の指の間に尻尾の毛を通すようにして撫でてあげた。
「んっ……」
閉じているはずの銀露の口から、色っぽい声が漏れたのを聞きながら指先に伝わる暖かさとモフモフ感を噛み締めた。
初めだけ、小刻みにピクピクと跳ねた尻尾だったけど、手で梳いていくうちに慣れてきたのか、なされるがままに……。
「銀露、気持ち良い?」
「うむ……。よい心地じゃ……」
銀露は目を軽く閉じて、その軽い体を僕の方に預けてる。頭のお耳は心地よさからか、ペッタリと寝ていてもはやどうにでもして状態だよ。
あれだけ尻尾触られるの嫌だって言ってたのにね。
「銀露、なんで尻尾には触っちゃダメだったの?」
「んん……良いじゃろ。もう触れておるのじゃから……」
「うーん、それもそうかあ」
なんて、まったく思ってない僕はまたこんどこっそり汰鞠あたりに聞いてみようと心に決めていた。
それから、銀露がいいというまで丁寧に撫でてあげて。
そろそろ夜も遅いということで僕だけ家に戻って寝支度を整えた。
銀露はもう少し酒を呑むとのことで、あんまり飲みすぎないようにと念押ししてはきたものの……多分まだまだ呑むんだろうな。
そんなことを思いながら布団に入る。疲れていたからか、目を閉じるとすぐに夢の中……。そうして、僕の楽しくて不思議な1日は終わりを告げた。