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17節13部ー揺れる神の心ー

(千草め……ワシに対して余計な気遣いをしておるな)


 僕は銀露に、嫌々ここに居て欲しくない。だから……。


「あのな、千草……わしは」

「父さんと約束とか、そういうのどうでもよくなるくらい……銀露がずっと一緒に居たいって思えるような男になるよ、僕」

「……っ」


 ……。

 あれっ。結構勇気出して言ったんだけどな。銀露の反応が思ってたのと違うぞ……。

 僕の顔を凝視しながらぽかーんと口をあけて、手に持った杯からお酒をこぼしてる。


「ぬし……愛らしい顔して以外と男じゃの……」

「はじめから男だよッ」

「そういうことではなくてじゃな……くふっ、ふふ、あはははっ」


 おお……今度は笑われてしまった。と、いうか銀露のこんな高笑い初めてだ。いつも余裕のあるお姉さんな表情ばかりだったから、こんな堪えられないといった風な笑顔がなんだか、とても可愛い。


「な、なんだよう。そんなに笑うとこじゃないと思うんだけど!」

「んー、すまんのっ。くふっ、しかし久しぶりじゃ、こんな気持ちになったのは……」


 銀露の尻尾が大きく揺れてる。お耳も嬉しそうにぴこぴこしてる。結果よければすべてよし。少し元気のなかった銀露が、今はとっても明るく笑ってくれて、少し僕の方に体を寄せてきてくれた。


「ただ一つ言っておくぞ、千草」

「うん」

「わしは別に、ここにおることが億劫だとは思っておらんぞ。むしろ、こうして顔を合わせ、対等に話をしたり、出かけたりすることに心地よさすら覚えておる。昔はあれほど嫌悪した人間相手に……一番信じられんのはわしじゃ。ぬしの言葉一つに、ここまで心揺さぶられるとは思わんかった」


 銀露が杯を置いて、僕の腰に腕を回してくると、ぐっと顔を僕の顔に近づけてきた。

 そして額をこすりつけてきて、むふぅと熱っぽい鼻息を漏らす。


「ぎ、銀露……酔ってる?」

「んー、酔っておるかも、の?」


 そして、鼻を合わせてきてから、僕のほっぺたをまるで食べるかのごとく大胆にキスしてきてくれた。

 生暖かくてぬるりとした銀露の口、舌が這って、なんとも言えない感覚を僕に残していく。


「ぎ……銀露……やりすぎ、やりすぎだからっ」

「ぬしがわしに火をつけるからじゃ……」

「やああ! 耳っ、耳はやめてくすぐったいからっ」

「これ逃げるでないっ……んぬッ!?」


 銀露に耳を口でくわえられた時、あまりにもくすぐったくてどさくさで銀露の尻尾の先を思いっきり掴んでしまった。

 途端に、銀露の耳と尻尾の毛が逆立って背筋が伸びて、少しだけ悲鳴をあげると涙目に……。


「尻尾はいかんと言っておったじゃろー……!」

「銀露が僕の耳食べるから悪いんだよ……!」

「……むぅう」


 僕に握られた尻尾を前に回して、手でさすりながらじとりとした横目で僕を睨んでくる……。なんだか罪悪感……でも、銀露の尻尾って立派なだけあってやっぱり柔らかくてもふもふしてた。


「んん……そんなにわしの尻尾に触れたいか?」

「さ、触らせてくれるなら触りたいけど……」

「ふむ……そうか。そんなに触りたいなら仕方ないのう……」


 と、銀露の尻尾が僕の膝の上に横たわった。膝の上にあるだけで感じる、暖かさとボリュームに見合った重量感。

 


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