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第17節6部ー姉とのお風呂ー

 

 池に飛び込んだはずなんだけど、僕の体は一切濡れていない。まず水の中にいない。

 気がつけば、僕はどこかの地面に立っていて、そのどこかは旅館の中庭だった。


 中庭にある池。その池も、綺麗に月を映してる。


「ぷへぇ。帰ったのう。やはりあの山は霊気が濃すぎて息がつまるわ。現の方がだいぶマシじゃな」

「もう真っ暗だよ! 今何時だろ……」


 僕と銀露は、もらった酒樽を持って近くの蔵に行った。酒樽は全部まとめて銀露の部屋に置いておくと思ってたんだけど、それじゃあすぐに呑んで一瞬で無くなってしまうとのこと。

 少しばかり手が届きづらく、ある程度神気だったり霊気だったりが強い、古い旅館の蔵に置いておくんだって。


「ここであれば、神酒の質は維持できるじゃろ」

「強い神気に当てちゃうと、質が変わるんだよね?」

「うむ。しかし、これくらいの気の停滞具合は良い。ぬしらは物が腐らぬよう冷やした蔵に生物なまものを入れておくのじゃろ? それと同じじゃ」


 神酒って腐るのかな……。まあお酒だし、あんまりいい思い出ないからあまり触れないでおこう……。


 帰ってみると、時計の針は午後8時を指していた。そして……。


「おかえり千草。どこ行ってたの? 心配してたのよ?」

「銀露とお酒をもらいに行ってたんだよ。大変だったけど楽しかったなー」


 僕が帰ったことに気づいて、伊代姉がリビングから玄関に来てお出迎え。リビングからフライパンが火にかけられる音が聞こえてくるところをみると、まだ夕飯の準備ができてないみたい。


「千草、夕飯前にお風呂いくわよ」

「ええ、なにいきなり……。恥ずかしいから一人で入るよ」

「いくの」

「……わ、わかったよお」


 と、どこか強引にお風呂に誘われた僕は仕方なく伊代姉とお風呂に行くことになった。

 

「わしは少し休む。夕餉ができたら呼んでおくれ」


 銀露は大きな欠伸をしながら、着物を引きずり気味にリビングに行って母さんと話しながらソファーに座ったみたい。

 銀露は銀露で疲れることがあるんだな。


「ふふふっ」

「なんだよ伊代姉。気持ち悪いなぁ」

「んー、あんたとお風呂一緒に入るのひっさしぶりじゃない。そりゃ嬉しくもなるわよ」


 今からいくのは、銀露と出会ったあの温泉。昔っから、伊代姉とお風呂に入るときはあそこで入ってたんだ。

 他に誰も入ってこないし。一応旅館の温泉ではあるんだけど……。


「んじゃ、中でね」

「タオルなんか巻いちゃダメよ?」

「なんでだよ! 巻くよ流石に!!」

「後でひっぺがすからどっちでもいいけれど」

「……」


 脱衣所に入ってから、一抹の不安を覚える僕。帰ってきてから時々思うんだけど、伊代姉が僕を見る目が昔と変わったような気がするんだよね。

 昔からよく僕は伊代姉から可愛がられたり、オモチャにされてたんだけど……。

 まあ、そんなに深く考えても仕方ないよね。あくまでも姉弟なんだし!


 ぱぱっと脱いで、タオルを腰に巻いて浴場へ……。


「伊代姉……なにしてるのさ」

「……いや。私もやっぱり恥ずかしいものだったのよ」


 僕より後に出てこようとした伊代姉は、脱衣所の引き戸を少し開けてちょっと顔を出したところで止まっていた。

 てか、僕にタオル巻くなって言ってたくせに自分は巻いてるし。


「伊代姉。流石にそのままじゃ風邪ひいちゃうよ。早く入ってきて体洗お」

「仕方ないわね。あんたがそこまで言うなら……」

「なんで僕がお風呂に誘ったみたいにしようとしてるのさ」


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