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17節4部ー火笛ー

 銀露の尻尾が後ろでブンブンと激しく振られているのがわかる。感情が尻尾に出やすいのは銀露も同じで、そこがお姉さんな銀露とのギャップを際立たせてドキリとする。

 銀露の顔を見ようと視線を上に向けたんだけど……ありゃ。胸が大きくて顔が見えませんですが。


「銀露、お胸大きいねー。母さんより大きい人は銀露が初めてだよ」

「なぁんじゃ。触りたいのなら好きにするといぞ」

「おふ」


 そんなことを言うと、銀露が背中を曲げて、僕の顔に下乳を押し付けてきた。うわー、やわこーい、いいにおーい、おもたーい。

 僕をからかいながら、悪戯な笑みを浮かべている銀露の表情が、見えていなくても手に取るようにわかる。


 と、低い牛の鳴き声が遠くから聞こえてくる。それはみるみるうちに近づいてきた。銀露が言うには、一仕事を終えた牛車が山頂に戻ってきたんだって。

 がたがたと斜面を物ともせず登ってきた、幾つもの人魂を纏わせたその牛車は僕らの正面で止まって……。


「おお、銀狼様もそんな柔らかい顔をするようになったんすね! いやぁ、昔からは考えられんすよぉ」

「護り火の……千草との時間を邪魔するでないわ」

「ごめんなさいっす。いやぁ、でもやっとお仕事が終わって一息つけたんで、お礼を言いにきたんすよ」


 何のお礼だろうと僕は上半身を起こそうとしたけれど、銀露に押さえつけられてまた膝枕に頭を埋めてしまった。


「いやあ、まさか蛇姫様が原因で大行列が進まなくなっていたなんて思わなかったっすから。あの方相手だとウチでは手におえなかったですし!」

「元々の原因はこっちにあるからの。気にするでないわ」

「いえいえ、それだけじゃなく。行列で待たされた神様がウチを利用してくれて……いやあ儲かったっす! 二つの意味でのお礼っすから! これ! はい!」


 と、朱音さんは筒状の小さな笛を僕に渡してきた。さすがに膝枕されたままで受け取るのは失礼だと思って起き上がらせてもらってからそれを受け取ると……。


「それを吹いてもらえれば、いつでも参上仕りますんで! 儲けさせてくれたお礼っす」


 僕はお礼を言いはしたけど、これがなんなのか、朱音さんを呼び出してどうするのかがわからずにしばらく首を傾げていると……。


「ほう、うぬこそ珍しいのう。己から火笛をわたすとは。千草、こやつは護り火といってのう。本業は運び屋でなく、神々の身辺警護者なんじゃ」

「神様を護るの?」

「そうっす。神々の間でも、尊重しあったり仲間だったり、または敵だったりしたりする関係というものが存在するんすよ。現代で言う……そうすね……せきゅりてぃぽりすみたいな!」


 朱音さんって、結構現代用語に詳しいんだな。死角の世の神様って、現世に疎いイメージが勝手にあるんだけど、そうでもないのか。


「君、結構危ない目に遭いそうな顔してるっすから、なにか危険なことが起こったら呼ぶといいす」

「そうそう呼ばせはせんがな、千草にはわしがおる」

「銀狼様から襲われるようなことがあっても呼ぶといいす」

「護り火のぉ! どういう意味じゃそれはぁ!」


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