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第17節3部ー自覚ー

 今回の騒動で、酒樽四つは頂くがと銀露は笑って、機嫌良さそうに煙管を口にくわえた。

 今は銀露と二人きりだ。さっきからずっと不安に思っていたことを、話そう。


「今回の件はあまり気にせんことじゃ、千草」

「……えっ」

「今回の騒動に対してなにか思うことがあるのじゃろ? 顔に出ておる。蛇姫の事は後々儂が話を……」

「違うんだよ、銀露。それだけじゃないんだ」


 僕は言った。銀露と出会ったこと、迷い童のこと、今回のこと……僕がこの月夜見町に帰ってきてから、不思議なことが立て続けに起こってるってことを。

 そして、そのほとんどは銀露がいなかったらどうなっていたかわからないような出来事ばかり。

 銀露といるからこんなことばかりが起こっている……とも考えられるけど、今回の蛇姫様は銀露がいなければ絶対に連れて行かれてた。

 銀露がいるからこそ、蛇姫様は大蛇を山道に潜ませ、銀露から僕を引き離すという策を弄さなければならなかったんだ。


「僕って、やっぱり普通じゃないのかな……って」

「……」

「昔からね、そういうことを思うときはあったんだ。父さんから近づいちゃいけないところを教え込まされたり、見えちゃいけないものが見えたり、家族の誰とも似てないし……。伊代姉は父さんからそんなこと言われたことないらしいし、不思議な体験は父さんの持ち込みでしてたみたいだけど。それに、母さんに似てとても美人だし……。僕自身は、不思議な事は大歓迎なんだけど、なんだかどんどんみんなと違っていくような感じがして……わっ」


 銀露が少し落ち込んでいた僕の肩に腕を回して引き寄せて、僕の上半身を横倒し膝枕をしてくれた。そして、頭を優しく撫でてくれながら……。


「主の姉も母も、儂は出会って間もないからの。詳しいことはわからんのじゃが……ぬしの父、京矢はぬしをよう愛しておった。本当じゃ。千草、ぬしは確かに常人とは少し違うかもしれぬ。だからと言って、違いは誰にでもあることじゃ。人でも、無論……神でものう」

「でも僕……いつか僕以外の人に迷惑をかけるんじゃないかって……」

「ぬしよ」

「……?」

「そういうことを気にするような優しい子じゃということはわかっておる。明るく元気じゃが、その反面脆く弱いこともの。そんなぬしを守るために、わしがおる」


 とても優しい、囁くような声で僕の横腹から腰にかけて撫でながら言ってくれる。


「わしはぬしがぬしである限り見捨てたり、諦めたりはせん」

「父さんとの、約束だから……?」

「約束はきっかけじゃ。あとはぬし次第じゃの」

「僕次第……?」

「わしとて、人と同じように好き嫌いはあるでの?」

「……じゃあ、僕ずっと銀露に好きでいてもらえるように頑張ろうかな……」

「くふふ、そういう愛らしいことを言うぬしは大好きじゃぞ?」


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