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第16節10部ー優劣の傾きー

 銀露と、狐面の人がここに来た時点でこの場における優劣は、僕たち側に傾いているのがわかった。

 でも、狐面の人は目の前にいる蛇姫様じゃなくてその先……その先の閉じた襖を見ているような……?


 狐面の九尾様が手のひらを上に向けて、人差し指をくいくいと何かを招くように……いや、引っ張り出すように動かすと。


 人差し指を向けてた襖の向こうから甲高い男の、壮絶な悲鳴が聞こえてきた……かと思うと。


《うわぎゃあああ!!》

「なっなになに!?」


 凄まじい悲鳴とともに、後方の襖が幾つか爆ぜるように吹っ飛んだ。そして、その悲鳴の主がきりきり舞い。

 頭から落ちて、なんかブレイクダンスみたいな動きをしてから力なく畳の上に沈んだのは……黒髪の狐耳少年だった。


「きしし、山神。なっさけないことこの上ありんせんのう」

「うえええ。ごめんなさいぃぃきゅうびさまぁああ」


 思いっきり泣いてる、山の神様が羽織っている着物の襟をつまんで持ち上げている狐面の人。

 狐面の人は、幼い山神様が両手で持っている太く短い縄を取り上げると……。


「ふん、それを依代にしてこの聖域に陣取っておったのか。脅されて屈したか、山神よ」

「あううう……銀狼様までぇぇ……僕程度が蛇姫様には逆らえませんよぅ……」


 稲荷霊山山頂にある、神の社。そこは本来、強い邪気を孕む者は一歩として踏み込めない聖域らしいんだけど……。

 今、狐面の人が取り上げた縄。どうやらそれを依代にして、山神様権限で蛇姫様をこの場に呼んでいる……ということみたい。


「ふん、さて。これでいつでも退場願えるわけじゃが……。まだ聞いておらんぞ。千草を狙う理由はなんじゃ」

「銀狼……きさん、とぼけておるのかや? 共におるのならわかっておるんじゃろ? そやつは死角の世を己から覗くことができる。それだけこちらの世と繋がりが強く、潜在的に強い力を秘めておりんす。随分と変わった人の子じゃきさん一人で囲っていい人の子ではありんせん」

「だからと言ってお前さんに渡すわけにはいかんのう。千草はわしが面倒を任されておる。他の者に、他の神に渡すつもりなどない。失せるがよい、蛇姫」


 狐面の人が銀露に向かって投げた縄。それを、取り出した鉄扇を勢いよく開き、そのままその扇で断ち切ってみせた。


《きしし。銀狼、きさんだけにはもったいない人の子じゃ。精々気をつけることよ……》


 断ち切られた縄と同じように、蛇姫様の体は真っ二つになりながら蜃気楼のように揺らめいて消えていった。

 銀露にはもったいない人の子……どういうことなんだろう。おそらく、それは僕の事なんだろうけど……。


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