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第16節9部ー呼ばれて落ちてきた銀狼様ー

 拘束を解いた子鞠だったんだけど、それは一時的だった。襖の向こうから音もなく、それこそ忍者のように出てきた白装束の人たちが子鞠を押さえつけてまた拘束しちゃったんだ。

 白装束の人……黒子くろこの純白バージョンみたいな格好の人たちは、拘束した子鞠を取り囲んでしまった。


「子鞠!!」

「ぅむぅぅぅぅ……っ」


 これだけガチガチに拘束されると、子鞠はもう動けない! せっかく僕も意識ははっきりしたけれど……。


「まぁ問題ありんせん。ここは山頂よ。いくら銀狼といえども、すぐには来んせん。ミズチもおるしの! それよりも、はようこの人の子を……」


 そう言いながら、蛇姫様は僕に手を伸ばしてきたんだけど……。その手がとどく前に。

 とんでもない衝撃音と共に、外から大木か何かが折れでもして倒れてくるような音が聞こえてきた。

 狼狽えた蛇姫様と、僕。ただ、その正体を見たのはその後すぐだった。

 この建屋の部屋の入り口を、上から思いっきり潰すように落ちてきたそれは……僕と子鞠をここまでさらってきた巨大なヘビだったんだ。


 美しい木板張りの床は割れて、襖は吹き飛び、木片が舞った。とんでもなく豪快な衝撃の後に聞こえてきた、重く、冷ややかな澄んだ声。


「この人の子を、どうするつもりじゃ……? 蛇姫よ……」

「……」

「ミズチ……! おのれ銀狼……!」


落ちてきた、巨大なヘビの頭の上に銀髪の狼お姉さんが居た。閉じた鉄扇をうっすらと笑みを浮かべた口元に置いて、優雅に佇んでるんだけど……目が笑ってない。

 目が据わっちゃってるよ!


「ふん、まさか山頂……しかも山神の社に潜んでおったとはの。なかなか見つからんわけじゃ……。結界まで張りおったうえにこのような見張りまでつけおって……」

「力押しの蛮族ぶりは相も変わらず健在かや。ふん、犬っころめ」


 蛇の頭から降りて、床の上に降り立った銀露は辺りを見回して一言。


「儂の神使と、に手を出した罪は重い……わかっておるじゃろうなァ、蛇姫よ」

「きしし、わっちに力押しが通じるとでも思っておるのかや? 神気で劣るきさんにわっちがどうにかできるとは思えんが」

「かかかっ、随分と自信ありげじゃなぁ? くふふ、また昔のようにいじめて泣かせてやろうか」


 左手の指を鉤爪のように曲げて、バキバキと骨を鳴らす仕草を見せた銀露。とんでもなく悪い笑みを浮かべてて……しかも、昔のようにって事は昔から仲が悪かったのか。


 だけど、そんな一触触発の雰囲気の中割って入ってきたのは狐面九尾の人。

 一切話すことをせずに、ただしとやかに歩を進めて銀露の横に並んだ。


「……」

「くっ……金色毛の。きさんまで来たのかや。ふん、少し分が悪いの」

「何をしに出てきたのじゃ、狐。あれは儂が躾ける。横取りするでないぞ」


 狐の人は、首をふりふりと横に振る。なんだろうか、あの人は喋らない神様なのかな……。


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