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第16節3部—不穏な気配—

子鞠が言っていた臭い人の話がとても気になるけれど、あまり聞いてはいけないような雰囲気だったために聞きなおすことはやめておいた。

その後も何事もなく歩き続けていると、斜面に敷かれたこの道の右側は急勾配になっていて、灯りに照らされたさらに下の道が見えるようになってるんだ。


「うわあ、なんだかたくさん並んでるんだね。全部神様なの?」

「うむ、一つとして例外なく、あれらは神と呼ばれる者たちじゃ。誰も彼もが崇められておるわけではないがの。祀られず落ちぶれた者や、人に忘れ去られその存在を保つことすら難しい者もおる」

「うへ……神様の世界も甘くないもんだ」

「神酒を賜ることでその存在を保持する者もおれば、いつも世話になっておる神使へ渡すことで労う者もおるのじゃ」

「銀露は?」

わしはうまい酒が呑みたいだけじゃの、かかっ。美味い酒は何より価値があるでな」


 む……。なんだか飲兵衛の悪いとこを見たぞ。酒さえあればいいっていう言葉に聞こえて、なんだかもやもやした僕は……。


「僕達より?」

「冗談じゃ」

「はぐらかすの早いよ!!」

「ぬしや子鞠、汰鞠等のつながりに比べる事こそが愚かじゃろ。飲み物という点においては右に出るものはないがの」


 そんなことを言って、僕の頭を撫でてくれた銀露は愉快そうに笑いながら煙管を口にくわえては燻らせていた。

 下に見える別の参道はとても混み合っているのに対して、僕たちが進んでいるこの道はあまり混んでいない……。


「言うたじゃろ。最上級の神気を持つ神だけが通ることを許された参道と。神は無数におるが、その中でも一握りの者だけがここを通ることを許されるのじゃ。すごいじゃろう。褒めてもいのじゃぞ! ん?」

「銀露スゴーイ。でも尻尾さわらせてくれない心セマーイ」

「尻尾は気安く触れて良いところではないと言っておるじゃろ!」

「あにさま……こまのしっぽさわっていいよー?」


 子鞠が、そのもっふりとした尻尾を僕に触らせようと、自分で尻尾を抱いてこっちを向いてきた。はいどうぞって感じに。


「これ子鞠! 駄目じゃ、はしたないじゃろ!」

「はしたないの!!? じゃあお耳を……」

「耳もいかんぞ」


 銀露の頭のお耳がピンと立って僕を威嚇してきてるみたいだ。尻尾を触る、触らせることについての、銀露達狼の中での意味ってなんなんだろう。いくら聞いても答えてくれないから気になって仕方ないんだけど……。


「む……」


 銀露が纏う空気が変わった。和やかな雰囲気から、ピンと張りつめたものへと。

 子鞠も同じくだった。二人して尻尾をピンと立てて、頭の耳を細かく動かして何かを探っているみたい。


「厄介なのがおるのう、しかも……」

「こち来てる……」


 銀露と子鞠は道から外れた斜面の上に目を向けてる。僕には聞こえないけど二人には聞こえてるんだろうな。耳がいいから。


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