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20節ー鬼灯の由来ー

「千草、ごめんね。もうちょっとだけ待っててくれるかしら?」


「えーっ、射的型抜き金魚すくいー!」


「きっかり30分で帰ってくるから、ね?」


「ん。神谷先輩とデートでしょ? いいよ、待ってるから」


「ふふ、お利口。でもデートじゃないの。30分だけ付き合ってくれって言われたから」


 う、うーん……それがデートじゃないかと言われると難しいところなのよね……。

 でもこの子には神谷さんとはなんでもないって事をわかっていてもらわないとだし。

 ちょっとむすっとしてる千草もかわいい……両ほっぺたをわしゃわしゃとくすぐってこの子の笑顔を見てから神谷先輩の元へ行くことに。



……。


「あら、あらあら随分美人な殿方がいらっしゃいますね」


「そ、その声は……」


 突然背後から声をかけられて、僕は振り向いた。

 すると赤を基調とした浴衣を纏い、狐面を頭の横にずらして被ってる稲荷さんがいたんだ。


「この世のものとは思えないほど美人な人が何言ってるんですか」


「この世の者ではないですからねぇ。お隣失礼しますね」


「どーぞどーぞ」


 伊代姉を待つため、一人ベンチに座ってた僕の隣に稲荷さんが座ってきた。


「稲荷さんも来てたんですね」


「ええ、私も初めて来ました。この神社にはあまり足を運びたくなかったですし」


「どうしてですか?」


「鬼灯が治める土地ですし……なにより厄介なものもいますし。まあそんなことはいいんですよ。千草君お一人ですか?」


「んーん。伊代姉がデート行っちゃったから待ってるんです」


「んえ!? 伊代がデート!? 誰とですか!?」


「わ。すごい反応! 神谷先輩とです」


 伊代姉がデートするってだけでそんな驚くことあるかなぁ。

 でも神谷先輩とって聞くと稲荷さんはなんだと驚きの表情を収めた。


「社交辞令でしょうねぇ。神谷君は随分伊代にお熱みたいですから取り巻きの溜飲を下げる意味で付き合ってるのでしょう」


「な……なんだか難しい話ですね。人付き合いって大変だぁ」


「ふふ、千草君も気をつけないといけねーですよ? 君は伊代以上に人を惹きつけるんですから」


 そう言って稲荷さんは柔らかく笑った。

 確かに僕は昔っからいい意味でも悪い意味でも人に絡まれることが多かったけど……。


「で、千草君?」


「はい?」


「先ほどからなにか気になってる様子だったので声をかけたのですが……。私に答えられる事なら聞きますよ?」


 と、いきなり核心をついた言葉を投げかけられて驚いた僕は稲荷さんの顔を丸くした目で見つめてしまった。

 確かに今の今までずっと言葉にはしてなかったけど気になっていたことはあったからだ。

 

「えと……なんでもいいんですか?」


「ええ。私こう見えて物知りなのでなんでも聞いてくださいな」


「じゃあ……その、鬼灯さんの事についてなんですけど……」


 気になっていた事について、僕は伝える言葉を考えながら稲荷さんに話した。


「ほうほう、鬼灯の巫女がなぜ夜刀姫の味方をしていたのかが気になると」


「そうなんです。夜刀に直接聞いてもよかったんですけど今の夜刀にはなんか聞きづらくて……」


「簡単な話です。夜刀姫と鬼灯の家系は切っても切れない縁があるからですよ」


 んん……?

 そんな縁深い感じには見えなかったけど……。


「いいですか? 鬼灯って聞いて一番最初に連想するのはなんですか?」


「んー、赤い提灯みたいな実だったり、名前から鬼だったり?」


「そうですよね。鬼灯ってやっぱり鬼を連想しがちなんです。でも本来鬼灯という名前は頬突きっていって人の子のほっぺたが名前の由来だったりするんですよ」


 そう言って稲荷さんは僕のほっぺたをツンツンとつついてから話を続ける。


「わは、やーらかい」


「うぅ……」


「頬……というのはあくまでも名前の由来であるわけですが。実は鬼灯はその形から蛇と形容されることもあるんです」


「そうなんですか? 全然蛇っぽくないですよね」


「蛇の頭に形が似てるんですよ、鬼灯の実は。まあ実というより実を包む袋ですけどね。そもそも鬼灯という名は夜刀姫の母が神に使え家系に与えたものですので……その力の源も元を辿れば蛇なんですよ」




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