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20節ー祭りの誘いー



 その舞踊はこのお祭りに来ている町内の人たちみんなを余すことなく魅了してた。

 伊代姉だけでなく美哉さんもすごい人気っぷり。

 美哉さんなんかは普段自由奔放でつかみ所のない人だから、ああやって真面目に踊ってると普段との落差ですごく美人に見える。

 

 いわゆる黙ってれば美人っていう残念な人な美哉さんはかなり見直されてるみたいだ。


 詩織さんは女の人になぜか人気で黄色い声が聞こえてきていた。

 まああの人女装してない時はいかにもなイケメンだからなぁ。

 女子人気すごいんだよね。


 踊るに踊ること30分。

 踊り終わった伊代姉たちが腰をかがめてお辞儀をすると観客のみんなは老若男女全て総立ちで拍手していた。


 もちろん僕も拍手していて、隣の銀露と夜刀もゆっくりと手を叩いていた。

 で、舞台袖から降りてきた踊り手たちを待っていたのはそれぞれの友達からの称賛の声だった。

 周りを囲まれてやんややんやと女友達やら男友達やらから言われるみんなを見て微笑ましい気分になった。


「ちく……」


「柊さん! 見てたよ! 相変わらず本当に綺麗だった!」


 あ、今一瞬僕を見つけた伊代姉がこっちに声をかけてくれようとしたけど神谷先輩に捕まっちゃった。

 少し離れてるからここからじゃあ何話してるか聞こえづらいけど……。


……。


「あ……ありがとうございます。相変わらず随分大人数で来てらっしゃるんですね」


「ごめん、ちょっとうるさいよね」


「いえ、別に……」


 はあ、さっさと千草のところに行きたかったのに……。

 まあ人気も人気、弓道部の先輩である神谷先輩は随分な数の女友達と男友達を連れて祭りに来ているみたいね。

 神谷先輩の同年代の女友達ってことは結局私よりも年上の先輩に当たるわけで……取り巻きの妬み嫉みの視線が刺さること刺さること。

 勘弁してほしいわ……。


「あの……落ち着いたら一緒に夜店回ってくれないか?」


「え?」


「頼む!」


 うーん……正直そんな暇無いんだけれど。

 千草と今すぐいろいろ回りたいし……。

 でも取り巻きの手前、しかも頭まで下げられたら下手に断れないわよね。

 断っても受けてもどちらにしろ角は立ちそうではあるわね……。


「分かりました。今から準備してきます」


「いいのかいっ?」


「その代わり弟とも回りたいので30分ほどで戻りますけどいいですか?」


「全然大丈夫さ! ありがとう!」


 やたらと嬉しそうにガッツポーズする彼を見て少しため息が出そうになったけど寸前のところで堪えた。

 やったじゃん、とかチャンスだね……なんて声をかけられてるのはあんまり見たくないけれど。

 

 一体取り巻きたちはどんな気持ちでそんなことを言っているのかしら。

 祭りで気分が高揚しているのはわかるし、浮かれてそういうことを言う気持ちもわからないではないけど。

 多分私から向かって右側、神谷先輩の幼馴染みの女性には本当によく思われてないわね……。


「うひー、伊代にゃんモテモテぇ!」

「ヒュー、伊代ってばモテモテぇ!」


「あんたら後で思いっきりひっぱたくからね」


 浮かれてる馬鹿がこっちにもいたの忘れてたわ。


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