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20節ー準備終了ー

 はあ……こやつには困ったものじゃ。

 人一倍他人の機微に敏感な癖にひねくれとるからうまく関係を作れんというのはもったいないと思うがの。


 しばらくぼんやりと千草の働きを見ておったのじゃが……。

 

「……銀露ぉたしけてぇぇ」


「ふふっふふふふふ……」


  異常な数の綿状の囃子達にまとわりつかれ、だるまのようになった千草が助けを求めてきおった。

 流石に笑うてしもうたが……。ふっふ、かわいすぎじゃろ。


「くふふ……っ。なんじゃ、どこでそんな拾ってきた?」


「ちょっと草むらに入ったらわらわらしてきたんだよー。うわ、もう何も見えない暑苦しい」


 仕方ないの。こういうときに便利な奴が横におる。ほれ出番じゃとこの蛇姫を立たせ、千草に近づけてやった。


 すると千草にこれでもかと群がっておった囃子どもが綺麗さっぱり吹き飛んで消え……。


「うわ、お囃子さんたち消えちゃった」


「おい、わっちを綿除けに使うな!」


「仕方なかろ。あれを追い払うのにうぬの穢れはちょうど良いのじゃ」


 あれは穢れを嫌うからの。蛇姫の穢れをまともに受けると蜘蛛の子を散らすように死角の世に隠れしまいおるのじゃ。


「そんなことで役にたっても嬉しくありんせん。全く……。お?」


 祭りの準備が終わり、景気付けなのじゃろう。本殿近くで日本酒を配っておるのが見える。

 それにつられたのか蛇姫は一目散に駆けていく……あやつ、わし以上の酒好きじゃからの。


 まあよい、千草とせっかくの二人きりじゃ。疲れておるじゃろうし……。


「あの……銀露、みんないるしちょっとだけ恥ずかしいんだけど……」


「ちょっとだけなら大丈夫じゃろ」


「いや……その、うん。とってもありがたいし気持ちいいんだけど」


 せっかくの敷物の上じゃしの。膝を枕代わりに寝かせてやった。恥ずかしいと言っておきながら随分素直に頭を乗せたものじゃったが……。


「めっちゃぽんぽんなでなでするやん……」


「腹をなでられるのは嫌いかの?」 


 子鞠や汰鞠はこれをすると喜ぶのじゃがな。


「嫌いじゃないよ、むしろ気持ちいいけど……お腹丸出しだから恥ずかしいというか」


「ふふ、綺麗な腹じゃ、恥ずかしがることはない」


「いや……うん、きもちいいんだけどね……うん」


 指の腹でさすってやるのがこつじゃの。子鞠はよう働いたあとにねだってきおるものじゃ。

 それにしても綺麗な体じゃの……。肉付きも悪うない。思わずかぶりつきたくなる。


「……」


「うん? 千草?」


 少しばかり耳を立ててみると千草の小さな寝息が聞こえてくる。

 ふふ、よう働いたから疲れておったのじゃろうな。

 少しばかり長くなりそうじゃが……起きるまで膝を貸しておいてやろうかの。


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