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19節ー銀狼の男の子ー

 子鞠や銀狼様に負けないくらいに、だなんて言って微笑む汰鞠はとても可愛らしかった。

 なんだかんだ言っても、まだまだ汰鞠も若い狼なんだ。

 こうして笑えば年相応の女の子って感じで、親しみやすさが出る。


「お、きさんの子と神使が良い感じではないかや? よいのかよいのか? きさんとしては面白うないことかと思いんすが」


「はん。よいに決まっとるじゃろが。汰鞠も子鞠も愛しき我が子じゃ。あやつらが気に入っておるというのなら、あやつらの目はわしと同じで良い目をしておる。存分に愛で、愛でられるとよい」


「きしし、そうきんすか。きさんら狼の価値観は未だにわかりんせん。わっちなら絶対に許さんところでありんす」


汝等うぬらと違って器が広いからの」


「身内に対してだけでありんすが」


「狼は群れを大切にするからの」


 杯を大きく傾けて神酒を呷った銀露は大きく息をついて、胡乱げな目を汰鞠に向けた。


「それにしても……あのような汰鞠の表情は久方ぶりに見るのう。いつも肩肘張っておるような子で、心配はしておったのじゃが……。あの分だと安心じゃな」


「ふん、随分仲間思いのことじゃの。かといって、あの男の子はきさんのものにするのじゃろ」


「盛りの時期がくるともう我慢ならんじゃろうしの」


「本気かやっ」


「冗談でこんなことを言うわけなかろ。せめてまだ優しくできるうちに一度褥を共にせんと……」


「あの男の子がそれをすんなり良しとするような言い草でありんすが」


「くふ」


「なんかやその下衆い笑みは! 腹が立ちんす!」


 銀露は色気のある笑みを見せ、どこか蛇姫をけん制するような態度をとっていた。

 蛇姫は蛇姫でそれが気に入らないのか苛立ちを隠そうともせず。


「くふふふ、千草はもはやわしの男の子じゃからの」


「それはそれは、よかったじゃねぇですか野蛮狼……」


「うおっ」


「なんじゃきさんッ!! いつの間に来ておったのかや!?」


「ご挨拶ですねェ、蛇姫……。ついさっきですよ。まったく余計な面倒を起こしてくれちゃってまあ。そのせいで私がお上からめっためたに怒られちゃったじゃねェですかどうしてくれるんですか」


 と、そこで湯煙に紛れて現れたのは金色の髪と耳を持つ九尾狐、九十九稲荷だった。

 やっとこさお上であるところの神からの叱責を退けて戻ってこれたらしい。

 恨みがましい目つきで蛇姫をにらみつつ、神酒をぶんどってごくりごくりと大きく呑んだ。


「っぷは。やってらんねェー」


「おい九尾の、素が出とるぞ」


「デス。……っと、まあまとまった話は聞きました。蛇姫」


「な、なんかや」


「柊邸に行く前に、私の八つ当たりも含めてこってりお仕置きさせていただきますのでそのつもりで」


「ふん、おとなしくそんなものを受けるとでも思っとるのかや」


「受けないと現には出させませんが」


「なっ、なにおうっ」


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