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19節ー謎の喪失感ー

 なんで僕が銀露にこんな物騒なものを向けてるんだ……と、いうかこれ重い……!!


「祟り斬り、切子薙きりこなぎ……こんなものを与えておったとはの。争いを好まぬこやつには過ぎたものじゃ」

『随分坊やをたぶらかしてくれたみたいやねぇ……!!』


 うお、僕の口が勝手に動く!  体を操られてるから当然と言えば当然か……。とにかく、誰が僕の体を……!!

 なんとか抵抗しないと、このままじゃ銀露にむかってこの薙刀を振り落としてしまう……!


「白狐、うぬの神気ならば申し分ないの」

『坊や、ちょっとおとなしゅうしとき……!!』


 いやいや、抵抗するから!! 自分の口から出る言葉に反抗するのも変な感じだけど、とにかく勝手に動こうとする体を止めておかないと……!


 そうしていると、銀露が手を伸ばして薙刀の穂先をつかむ。そのまま取り上げるのかと思ったら、そうじゃなかったんだ。


『ぐぅぅ……!! 銀蠅ェ……!!』

「いい加減我慢ならぬ。其奴の体を返せ。まあ一番の厄介者を沈めたことだけは褒めておいてやろうかの、玉藻」


 なにか僕の体から別の何かが銀露の手を伝って流れ出ていく感覚を覚えた。

 頭の違和感と持っていた薙刀も一緒に。


「……はあっ、はあ……」


 大きく息切れする僕に対して、銀露はもう大丈夫じゃと声をかけてくれた。

 正直、何が何だかわからなかったけど……でも。

 無意識のうちに、僕は涙を流していた。どこかが痛かったわけじゃない。苦しかったわけでもない。

 でも、僕の中にいた白い人が消えるととんでもない喪失感と悲しさが襲ってきてどうしようもなくなったんだ。


「……もう、大丈夫じゃ」

「……うん、ごめんなさい、銀露……」


 神気を取り込んだからか、銀露がずいぶん成長した姿になっていた。

 8割がた元に戻った銀露の胸は随分と膨らんでいて、少し余裕があった着物もこれには溢れんばかりの谷間を露出させてる。

 そんな柔らかな胸に抱かれたけど、すぐに僕は離れて……。


「なんでこんな泣いちゃうんだろ……」

「ぬしに取り付いておったのが、強いえにしを持つ者だったからじゃ。気に入らんが、こればかりは……どうしようもないのう」


 銀露は本当に機嫌の悪そうな表情を浮かべながらそう言った。そして、足元にまできた子鞠が僕を見上げて……。


「あにさま元に戻った。だいじょぶ……?」

「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」

「んーん」


 見渡してみると、黒狼様は満身創痍で膝をついているし、その神使達は狼の姿で倒れているしで惨憺たる有様だった。

 でも、これで汰鞠を助けることができる。


「苦労をかけたの、汰鞠」

「滅相もございません。このような者たちに捕らえられてしまい、申し訳ございませぬ」

「いいや、ぬしはよく働いてくれた。もう大丈夫じゃ。ここから先はわしだけで十分……」

「僕も行くよ。ちゃんと、僕から蛇姫様に言わなくちゃ」


 8割力が戻った銀露にとっては、もうこの先困ることなんてないんだろうけど。

 それでも今回の事の発端は僕だ。僕自身がしっかりけじめをつける必要がある。わがままだってわかってる。でも、ちゃんとそのわがままを銀露が聞いてくれることも。


「では、うちらは黒狼様がたを見張っときましょうかね」

「銀狼様……」

「うむ。汰鞠と子鞠もつけよう。くれぐれも目を離さんようにの」


 


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