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ブリューナクな日々  作者: 大きいは強さ
第1章:混沌の大樹海
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第3話 妖精と魔法

(さて、どうしよう)


 どうやら、妖精さんを追いかけて、街に突入したのはまずかったようだ。目の前に展開する妖精さん達は、どう見ても自分に対して友好的に接してくれる雰囲気を持っていない。


(追いかけたのが不味かったのか。それとも、この街を隠すように存在していた膜を破ってしまったのが悪かったのか……いや、その両方か? どちらにしても、妖精さん達に自分を敵だと認識されてしまったみたいだなぁ)


 因みに、追いかけていた妖精さんは、膜を破った自分を座り込みながら見た後、他の妖精さんに起こされて町の方に走って行ったようだ。


(しかし、なんという濡れ衣! 自分は、ただここがどこなのか知りたかっただけなのに。見た目で人を判断するのは良くない事だ! いや、自分は今人間ですらないか)


 悲しい気持ちになったが、妖精さん達の対応から考えて、自分はこの辺りに普通に居る種類のカブトムシだと考えられる。そうでなければ、これほど速く恐らく武器であろう物をもって、組織だった対応をするわけがない。そして同時に、尚の事同族と会いたく無くなった。間違いなく投げ飛ばすだけなどと言う平和な決着で終わる気がしないからだ。


(自分で言うのも何だけど、こんな危険生物がうようよしているとか、ここもう確実に地球じゃない)


 そんな事を考えている内に、妖精さん達が綺麗に並び終え、何かを叫んでいる。そして今気がついたのだが、何を言っているのか全く理解できない。

 妖精さんがブツブツ言っているのは、呟いているから理解できないと思っていた。が、妖精さん達の号令? いや命令だろうか? を聞いていても、何を言っているのか分からない。


(英語のような、それでいて何かが違うような……)


 と言っても、そこまで言語に詳しい訳でもないので適当なのだが。


(まぁ訛ってるとか地味に違うとかなんだろう。そして妖精が居て、この顔立ち。つまりこの森はきっとイギリスとかそういう国にあるんだろう! 多分!)


 そうやって、更に無駄な事を考えていると、どうやら準備ができたのか、あれほど騒がしかった妖精さん達が突然静かになった。

 次の瞬間、一際大きな声と共に全ての弓から矢が発射され、杖からは閃光やら炎やらと色々飛び出した。もちろん、その全ては自分に向かっている。


(警告も何も無しか! いや、警告はしていたのかもしれないけどさ! 何かしら……そうか、今自分は人の話を聞く様な見た目ではなかったな……チックショウ! と言うか、あれに当たっても自分の甲殻は大丈夫なのか? て言うか、炎ってなんなんだよ! 魔法かよ! 矢って関節とかに刺さっちゃうんじゃないのかな? 閃光はまぁ何か分からない!)


 一瞬の間に思考は回るが、何も身構えて居なかったため、放たれた物のほぼ全てが自分に直撃した。ものすごい衝突音が辺りに響き渡り、同時に爆発音。そして、自分に当たらなかった分だろうか? 元から地面を狙っていたのだろうか? 少数が地面に当たり、土煙を巻き起こす。攻撃を放った妖精さん達からは歓声が上がっている。


(痛っ……く無い。助かった? いや、痛覚がない可能性も……感じる事が出来ないほどにひどい状態なのかもしれない)


 かなりの量の、生物に対して何かしら傷を負わせる事ができるであろう物が飛んできたにも関わらず、自分の体には傷を負った感触がなかった。

 少しすると土煙が晴れたので、自分の体を確認する。周りはちゃんと見えるし、全身も問題なく動くようで、関節も複眼もこれと言って何か傷を負った感じはない。どうやら、痛覚が無くて、傷が分からないと言った状態でもないようだ。


「ギュイギュイギュイカチカチカチ」

(おおおおおお? 怖かったー! 助かった!?)


 そんなふうに、全身を点検しながら喜びの鳴き声? を上げていると、違和感に気がつく。あれほど騒いでいた妖精さん達が、静かになっているのである。


(一体どうしたのだろう? 歓声も上げていたのに。なんで、いきなり静かになっちゃったんだ? あー……そうか、魔法やら弓矢やらの一斉射撃したのにも関わらず、無傷の攻撃対象とか見ちゃったらなぁ……テンションも下がるよなぁ。さて、どうしようか。簡単に思いつくところで、とりあえずこの場から撤退するのが一番だ。今なら、実はダメージを受けたから逃げ出している。みたいにも見えるだろうし)


 と、少し調子に乗って考えていると、又号令? が聞こえ、その瞬間妖精さん達が再度武器を構えたのである。どうやら二回目が来るようだ。


(まさか……さっきのは本気じゃなくて、あれこそが警告だった?)


 当然と言えば当然である。普通見た目完全に虫、つまり野生動物な自分に、言葉で何か言って分かる訳がないと思うはずだ。そう考えた場合、これは軽く攻撃して、それでも逃げなければ討伐するって事の可能性がある。


(よし、それなら全力で「~~~!!!!!」逃げようとしているのにな!)


 危険な雰囲気を感じ、動こうとした瞬間、再度号令? が聞こえ、さっきと同じように矢と炎と閃光が飛んできた。

 しかし、今回はさっきのとは違い、閃光が多く、それらは全て自分にあたったようで、土煙は発生しなかった。


(うおっまぶしっ! しかし、どう考えてもこれが最後の警告だな。純粋に痛そうな事の次に、視覚的効果の高い事って来たら次は「~~~~、~~~~~~~~~!!!!!!」殺しにかかってくるのが早い! 警告の意味ないじゃん!)


 自分に着弾し、効果がないと思ったのか、間髪入れずに大声で何かを叫びながら、武器を構えている妖精さん達のリーダーと思しき大柄な妖精さんが、自分に向かって走ってきた。

 手には剣を持ち、武器や鎧を含め、全身が謎の光に包まれている。続くほかの妖精さん達も、同様に謎の光に包まれながら剣を持っていたり、両手持ちのハンマーを持っていたりする。


(うおおおおお!? 物凄い勢いで突撃してきた! もう逃げるから、こっち来ないで!こんな時、追いかけてた妖精さんが出してた光が角から出ればな! これ以上非常識な存在になるのは嫌だけど、剣やらハンマーで寄ってたかって殴られて、ミンチにされるのよりはマシだ! 出ろー……何か撃ってきていた閃光、角からでろー、目潰しになれー……。それで出たら苦労はないけどな!)


 そう考えていると、閃光が出た。それも五本の角全てから。しかし、それは閃光なんて優しいものではなく、どう見ても電気の塊だったのである。当然、射線上にいる妖精さん達は直撃を受け、痙攣しながらバタバタと倒れる。


(え!? 念じるだけで出るのかこれ! それ以前に、妖精さんじゃなくても出せるのか。と言うか、あれ? 閃光で相手の目潰しをする物だと思っていたけど、完全に電気だね、これ。あれか? 雷魔法とかそんなのか? となると……炎を飛ばして爆発させていたのは火炎魔法とかそう言うのかな? だめだ、情報と常識が足り無すぎる! せめて、意思疎通できる人って……自分が虫じゃ意思疎通もクソもないじゃないか! そもそも話せないしね! あー……もう! 取り敢えず! 今はごちゃごちゃ考えるのは止めよう。まずは、この場から立ち去ろう)


 一しきり話し相手も居ないし、そんな事をしている場合でもないが、心の中で文句を言ってから飛行体制になり、街から脱出するためその場で回れ右をし、街とは反対方向、つまり自分が裂いてしまった膜の方に向かって飛ぶ。

 すると、後ろから何発か魔法と思われる雷や炎の塊が飛んできた。しかし、当たっても大丈夫であるし、対応してもどうにもならないので、無視して飛ぶ。

 全速力で街から脱出し、それでも休まず飛んで、かなり離れたところまで来た。なので、休憩と考えていることの整理をするため、地面に降りた。


(よし、これだけ離れれば流石に追ってこないだろう。しかし……なんだ? 妖精さんを見つけたときに覚悟はしていたが、ここは確実に地球じゃない。でも、近い雰囲気はある。でも、おそらく魔法だろうけど、そんな不思議すぎる物があるから、ここは異星どころではなく、異世界なのかもしれない? のかなぁ?)


 妖精さんだけでもそうだが、原理も分からない電気を発生させ、それに指向性を持たせて放つなんてことが生物にできるとは思えない。もっといえば炎を出すこともだ。考えることを後回しにしていたが、羽が消えているのもなんだかんだでおかしい事だ。


(異世界……となると、自分の寿命は一年かそこらかと思っていたけどもっと持つのか? なにせ、魔法があるのだから、きっと色々非常識なことになっているだろう)


 すでに、非常識な事になっているような気がするが、これに関しては分かってもどうにもならないし、その時が来たらその時としか言えないので後回しにする。

 それよりも、魔法の使い方を覚えないとこれは死活問題になるだろう。自分のような虫が使えるのだから、この世界に居る存在は殆どが魔法を使えると考えた方が良い。

 できれば、使い方よりも防ぎ方を知りたかったが、使えないことには防ぎ方も分からないだろう。とはいえ、妖精さんの魔法では自分には効果がないようなので、そこまで問題はないと考える。

 とは言え油断大敵ではある。自分自身が使えた事も考えれば、同族も同じように使ってくる可能性もある。どうあったとしても、やはり使える方が良い。


(よし、グダグダと考えているよりも、色々試してみよう)


 まず、魔法を発動した時のことを考える。確実にそうだと認識したのは、妖精さんの所で撃った魔法だが、最初に発動したのは多分、今も羽の音とその存在を消している魔法だろう。

 何時まで掛かっているのか、それとも解除するまでずっとそのままなのかは分からないが、これが自分の最初の魔法であるのは間違いない。


(あの時自分は何をした? 音がうるさいな、と思って本心から消えないかなーこれ、と思った。つまり、本心から思ったりすれば思った事がそのまま魔法として出るのか? そんなはず無いだろう。と、思いたいけども……妖精さん達の町であったことを思うと、あながち間違いじゃないんだよなぁ。追いかけていた妖精さんが、ブツブツ言っていたのが詠唱とかそういう類のものでなければそのはずだ。どうしたって、試してみないと分からないって事だ。よし、今度こそ考えるのはやめだ! 実際に動いてみて確かめる!)


 まずはさっき撃った雷の魔法を、もう一度撃てるように実験をしてみようとすると、正面右の木の陰から、ノッソリと自分と同じくらいの大きさのカブトムシが現れた。


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