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ブリューナクな日々  作者: 大きいは強さ
第2章:帝国
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第24.5話 ある魔導師の日記

 五月二七日火の日


 今日、西の国境での戦闘から戻ってきた知り合いの軍の人間から、驚くべき話を聞いた。なんと、旧ガスピノ領にある獣牙の大森林の中から、あの辺りに伝わる伝説の魔術師の隠れ家を発見したとの事だ。

 しかし、あの伝説の噂は本当だったと言う事なのか……それはさておき、現在、それは付近の村まで家ごと移動させており、近く回収隊が編成され回収に向かう事になっているらしい。

 私個人としては、あの伝説のモンスターを人に変える魔法が気になるし、どのような物か使ってみたいが、実用面で考えるとおよそ百年も前の魔法だ。稚拙だろうし、役に立つとも思えない。

 まぁ、暇つぶしくらいにはなるだろう。


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 六月一日闇の日


 何と言う事だ。稚拙? 役に立たない? 誰だ、そんな事を言った愚か者は? 私だ。これほど複雑で、美しい魔法陣は始めて見た。

 それに、この調査書によると、隠れ家自体も強力な魔道具ではないか……意味がわからない。いやはや、今帝国があるのが奇跡にしか思えないな。

 今なら対抗できるであろうか、いや場合によっては無理かもしれない。それはともかく、百年前の帝国の技術では確実に滅ぼされていただろう。しかし、そうなると本当に、なぜガスピノ王国は滅んだのだ? これだけの魔法を作り出せる技術力を持ちながらに滅ぶとは……。

 まぁいい、それよりも同時に見つかった魔法を吸収する魔法とやらもチラリと見たが、面白そうだ。まったく、なんて面し、恐ろしい魔術師……いや、新しい魔法や魔道具を作っているから魔導師?

 いやいや、自分で実験して、自分で使っているから……なんだろうか? そういえば、冒険者の英雄に、魔導賢者とか呼ばれていた人物が居たな。

 たしか、自分で新しい魔法の実験をして、それを完成させて使っていて、その功績を認められ、英雄に成ったはずだ。と、言う事は賢者でいいのか?

 まぁ、そんな事はどうでもいい。まずは、このモンスターと融合する魔法の解析を急ごう。これは、暇つぶしで出来る程度の解析では済まないぞ。


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 六月三日火の日


 事前調査書で知っては居たが、この魔法は制約が厳しすぎる。まず、目に見えない上に確かめようの無い、信頼なんてものを鍵にしているためだ。

 ご丁寧に、この鍵を無視すれば、全てが意味のない物になるようにされている。まったくもって、なんなんだこの拘りは……驚きだ。

 しかし、同時に百年前に帝国が滅ぼされず、ガスピノ王国が滅んだ理由が分かった気がする。こんなもの、弄らなければ作った本人以外に使えるわけが無い。

 一切弄らないで使おうとなると、魔法にそれなりに通じて居て、その上でモンスターを使役する。それも、お互いに信頼し合えるほどの深い関係でないといけない。

 それが出来る時点で、色々と一線を越えている。もはやそれは、冒険者達の称号にある英雄とは違う、真なる「英雄」と呼ばれるような存在だ。いやはや、頭が痛い。

 アンソニーに愚痴ると、彼も魔法を吸収する魔法の作成に着手したそうだ。しかし、解析は難航しているようで、どうにも一筋縄では行かないようだ。

 まったく、いくら伝説の古き魔術師の魔法といっても、ややこしさも伝説級にする必要は無いじゃないか……お互い頑張ろう。と、アンソニーと励まし合った。


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 六月十日火の日


 一週間かかって、ようやく書き換えに成功した。どうにか発動するだけで死ぬ。と、言う事だけは回避できる。

 だが、その代わり能力が酷く低下した。使っても、モンスターの種類にもよるが、C+のランクでようやく少し、ほんの少しだけ力が強くなるとか、その程度の性能だろう。

 魔力の消費量から考えても、こんな魔法を使う位なら、中級二段を数発撃った方がましだ。その辺りの改良が今後の問題だ。大体、この魔法だけにかまけて居る事もしたくない。人造精霊なんて、面白そうな物も見つかっているし、今月中には形にしたい。

 そういえば、今日食堂でアンソニーに聞いたところ、魔法を吸収する魔法は、それなりの形にはなってきたらしい。ただ、消費する魔力と効果が釣り合わず、まだ使うのは厳しいそうだ。


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 六月十七日火の日


 なんとか、それなりの形にはなって来た。何も、わざわざ魔法陣である必要は無い。色々な補助魔道具を駆使した魔道具という形にしてしまえば良かったのだ。

 だが、魔道具が完成したとして、何で、いや、誰で実験すれば良いのだろうか? それなりに強いモンスターでなければ意味が無い。

 私でも捕まえられるような、小鬼(ゴブリン)みたいな弱いモンスターでは意味がない。大鬼(オーガ)やメガファランクスリザード……いや、ランスリザードでもいい。前にも書いたが、多分C+位のモンスターでなければ、効果は実感できないだろう。

 そういえば、今日ローディが人造精霊の作成に着手したらしい。私個人としては応援したいのだが、何故か周りの皆は反対している。

 いいじゃないか、新たな存在の創造なんて、この魔導院に居る者全てが一度は考えたことだろう? と皆に聞いたら軽く引かれた。不本意だ。


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 六月十九日風の日


 誰だ、魔道具にすればいいとか言った愚か者は? 私だ。

 駄目だ……全然、全く、一切上手く行かない。材料が悪いのか、出力が必要な分まで上がらない。これなら、作らない方がマシな出来だ。

 取り敢えず、材料をもう何種類か試してみて、それでも駄目ならこの魔法は諦めよう。これ以上は煮詰まりすぎて、やり続けても成果は出そうにも無い。

 そういえば、魔法を吸収する魔法を利用して何やら武器を作れそうだ。と、アンソニーが言っていた。気分転換に、それを触らせてもらうのも良いかもしれない。


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 六月二十日土の日


 よし、素材を魔法銀(ミスリル)にする事によって必要な出力は得る事ができた。簡易実験では、丁度メガファランクスリザードを捕獲した。とバーパッドが言っていたので、少し無理を言って実験に使わせてもらった所、手がメガファランクスリザードの角のような槍の穂先に変異し、能力も僅かだが行使できた。

 特に暴走することも無かったので、今度はモンスターの能力を十全に発揮できる出力を得る方法を探していきたい。

 そう言えば、ローディが実験中の爆発で片目を失明しかけたらしい。なんでも、人造精霊を作る実験の途中に、何やらミスをした結果だそうだ。

 明日は我が身だ。と言うより、モンスターを扱っている私が一番危ない事をしているのではなかろうか? いや、バーパッドの方が危険か? まぁ、何にしても気を引き締めよう。


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 六月二十三日光の日


 色々と形状を試した結果、作るための費用と使い勝手の良さから、形は腕輪に落ち着いた。そんな試作魔道具、込めた魔法の名前は<人魔融合>(ハーモナイズ)だから、融合輪(ハーモナイズブレス)でどうだろうか? いや、私の手によってそもそも魔法自体の能力が変わった今、それは正しくない。

 そうだな……この新しい、リスクなくモンスターと合体できる魔法を<人魔接続>(コネクト)と名付けよう。そして、魔道具の名は接続輪(コネクトブレス)としよう。

 厳密には合体では無く、魔力を奪い取り、それを介して能力を借り受ける魔法なのだが。

 さて、名前の事はどうでもいい<人魔接続>(コネクト)<人魔融合>(ハーモナイズ)と同じとは行かずとも、半分ほどの能力を出したいのだが、なかなかどうして上手く行かない。

 接続輪(コネクトブレス)の素材を変えようにも、魔法銀(ミスリル)より良い素材は無い。もはや何か外付けで魔石な……ど……そうだ、魔石を取り付け、そこに魔力の……よし、方針が決定した。


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 六月二十四日火の日


 ようやく、形になった。接続輪(コネクトブレス)に純度の高い魔石を装着し、それにも付与(エンチャント)を施す事によって出力が飛躍的にアップした。

 施した付与(エンチャント)は対象固定。これを付けると、汎用性が一切なくなる。なぜなら対象にしたモンスターだけにしか効果を発揮しなくなるからだ。しかし、そのかわりに今回の実験では、片手だけでは無く、両手が盾と槍の穂先を合わせたような物に変異させることに成功した。

 成功したのだ……だが、同時にこの魔道具は失敗作となってしまった。費用がかかりすぎるのだ。しかも、モンスターが死ねばどれだけ綺麗に接続輪(コネクトブレス)が残って居ようと廃棄は確定だ。

 だからと言って、費用を下げればこれを作る素材が揃わず、性能を下げる結果になる。そうなると、作る意味が無くなる……どうしたものか。


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 六月二十五日水の日


 なんと、あの西の戦線で活躍したモンスターを使った接続輪(コネクトブレス)の実験ができるようだ。聞いた話だけで考えるのなら、その強さは尋常ではないようだ。

 なんでも山鬼(トロール)、メガファランクスリザード、グリーンドラゴンを異なる方法で一撃の元に倒したそうだ。

 そんな強力なモンスターならば、かなり貴重なデータが取れるかもしれない。それに、今日行った実験の結果、術者だけでなく対象のモンスターにも接続輪(コネクトブレス)を装着しておけば、わざわざ魔石を付けずとも必要な出力は得られる。と、いう結果が出た。

 これらがすべて上手く行けば、接続輪(コネクトブレス)も正式採用される事があるかもしれない。

 そういえば、アンソニーの作っている、魔法を吸収して利用する武器は、かなりの完成度を誇っているらしい。

 なんと、皇帝陛下じきじきにお褒めの言葉をかけてもらったようだ。羨ましいが、彼の功績だ。私がどうこう思うのは違うだろう。

 それよりも、私はこの接続輪(コネクトブレス)を完成させねばならない。もしかすると、明日の結果如何では、私も認められるかもしれない。明日が楽しみだ。

 よし、そうと決まればヴェロニカに、アレを明日借りてもいいか聞きにいかないといけないな。

 そういえば、ローディは発見された方法での人造精霊の作成を諦めたそうだ。なんでも、隠れ家の書類を解析した結果、その作成方法が見つかったそうだが、条件から素材から魔力から、何から何まで足りなかったそうで、どうにもならないらしい。

 とは言え、新しい何かを掴んだぞ! と、楽しそうにしていたから彼は大丈夫だろう。自己流にアレンジして、己の力で人造精霊を作り出すかもしれない。


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