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ブリューナクな日々  作者: 大きいは強さ
第1章:混沌の大樹海
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第6.5話 四人の会議

 ここは、フォレストサイドから一番近い街ウレジイダル。

 フォレストサイドから流れてくる希少な素材や、生きたまま捕獲されたモンスター、それらを求めフォレストサイドに行こうとしている冒険者や商人、他にも色々な目的や物を持った人間が行き交い、人と物に溢れた街である。

 さて、そんな街にも冒険者ギルドの支部はある。しかし、こんな大きな街の周辺にはよっぽどの事が無い限り危険なモンスターは発生しないし、探索もされきっているため、新しい発見が在る訳が無い。

 仮に、危険なモンスターが発生し襲ってきたとしても、常駐している帝国兵士や、街をぐるりと囲む分厚い壁に備え付けられた各種装備で対応できる。

 それなのに冒険者ギルドが存在するその理由は、冒険者ギルドの成り立ちに関係する。そもそも、冒険者ギルドは傭兵ギルドや、街や村々の狩人達が合流し出来上がったものだ。

 その過程で色々な規則が設定されて行き、現在の何でも屋のようなものになっている。そのため、冒険をしていないのに冒険者と名乗るのはおかしいじゃないか。と言われることは多い。それでも冒険者と名乗るのは、実際に冒険している者が居るのと、創始者の思いからくる物だそうだ。

 それはともかく、こういった周囲に脅威がない街では、ビラ配りや庭の掃除と言った、お手伝いのレベルの事までも依頼として出す場所となってしまっているのだ。

 そのため、日銭を稼ぐとか、小遣いを稼ぐため。といったような者が多く集まる場所となっている。自然、そういった場所では良くも悪くも他の支部に比べて弛緩したような空気がながれる。

 だが、そんな空気がながれるはずの冒険者ギルドの二階、その突き当りにある会議室、そこにはピリピリと緊張した空気が張り詰めていた。中に居たのは年齢も、所属も異なる四人の男たち。

 一人はジェフ・グレン。フォレストサイドギルド支部の支部長で、今回ここに自分を含め四人を集めた人物だ。

 次に、エイドリアン・パーネル。フォレストサイドやウレジイダルのある国、シクエーズ=セクレア帝国の冒険者ギルドの長である。

 髪や眉毛、そして髭は年齢による物だろう、真っ白になっている。そして、それら全てを長く伸ばしているため、顔を完全に隠してしまい表情は分からない。しかし、隙間から除く瞳は強い意志を持った光をたたえ、その体に纏っている雰囲気はまさしく強者の物で、老いを感じさせるような物は無い。

 三人目は、アラン・レッドマン。<灼熱悪鬼>(イフリート)の異名を持つ帝国の騎士隊長である。

 真っ赤な鎧を着ており、赤色の混じった金髪で短く切りそろえている。瞳の色は赤に近い茶色で、目付きは鋭く、顔の造詣は整ってはいるのだが、常に不機嫌そうな表情をしている。

 最後に、エイハブ・ポートマン。ウレジイダルの商人で、この街のトップでもある。初老の紳士然とした人物で、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべているが、目は笑っておらず油断なく三人を見ている。

 そんな四人が、この会議室で円卓を囲んでいた。


「まず、今回は自分の呼びかけに応じていただき、真にありがとうございます」


 初めに声を上げたのはジェフであった、少し震えた声が出てしまったのは緊張からであろう。


「挨拶はどうでもいい、本題に入れ」


 それに対し、不機嫌そうな低い声音でアランが文句を言った。


「たしかに、情報は鮮度が命ですからね。グダグダと前置きばかり長くても仕方ないでしょう」


 更に、それに同調するようにエイハブが続く。その発言を受け、ジェフがマズッたか? と軽く焦り始める。


「御二人とも、会議が始まってすぐに彼を苛めるのは、やめてくれんかのう? ではジェフ君、はじめてくれ」


 それを見かねて、エイドリアンはため息をつきながら助け舟を出した。そして、ジェフが再度話し始める。


「はい、分かりました。では、今回集まって頂いたことは手紙でもお伝えしましたが、極めて危険な邪精霊が出現しました。形状は五本の角を持ったビートル系の形を取っており、その力は漆黒大梟(ブラックオウル)を一撃で葬るほどの魔法も行使した。と、報告されております。つきましては、コレに対してどのような対策を取るか話し合いたいと思っております」


 最初に発言をしたのはエイハブであった。


「なるほど、しかし、それだと商人の私はなぜこの場所に呼ばれたのかね? その邪精霊に対抗する手段を考える。と、言うならモンスターとの戦闘の経験も、従軍の経験もない私が居ても仕方がないじゃないか」


「いえ、ちゃんと意味はあるのです。まず、今回の邪精霊のモンスターランクは異例ですが、最初からランクAとしております。その理由としては、奇怪な行動や漆黒大梟(ブラックオウル)を一撃で葬るほどの強さを持って居るためです。そのため、そのランクのモンスターを集団で討伐しようとなると」


「一国の軍クラスの力が必要になるな。まぁ、冒険者の中には軍に匹敵する化け物も居るらしいが、な」


 ジェフの言葉を遮りながら、アランが獰猛な笑みを浮かべ言った。


「はい、その通りです。しかし、現在それほどの力を持った冒険者は全て他国に居る状況なので、今回の緊急指令には参加できないと言う事です」


「おいおい、少し待て。一人で軍に匹敵するほどの冒険者を野放しか!? 冒険者ギルドってのは頭がおかしいのか?」


 突然、眉間に皺を寄せ怒りだしたアランに、ジェフがどう対応しようかと慌てていると、エイドリアンが再度助け舟をだした。


「それはワシが答えよう。まず、軍に匹敵する力を持っている。と言っても冒険者は冒険者じゃ。簡単なルールや、緊急指令という強制力はあるが、何処で何をするのかは基本的に自由なのじゃよ。じゃから、お前は強すぎるからこの国から出るな! なんてことはできないんじゃ」


「ならば、常に緊急指令とやらで国に縛り付ければよいだろう」


「そう言うとおもったわい。緊急指令ばかりを押し付け、その国に縛るという方法はたしかにある。が、それには緊急足る依頼が無ければ成立せんのじゃ。まさか、騎士様もミラージュバタフライの駆除に帝都から軍を出さないじゃろ? そういう事じゃ」


「なるほど……しかし」


「わかっておる。とは言ってもの、最近は……と言ってもワシの若い頃からの事じゃが、国から引き抜かれている事もあるから、この取り決めも有って無いような物じゃな」


「そうか……話の腰を折ってしまってすまなかった。続けてくれ」


 エイドリアンの説得によってアランが納得し落ち着いたので、ジェフは会議は再開させようとする。しかし、今度はエイハブが疑問をぶつけてきた。


「先ほどから思っていたのですが、わざわざ軍を出さないといけないのですか? しょせん、相手は一匹のモンスターなのでしょう? レッドマン様が出ればそれで事足りるのでは?」


「今回の邪精霊のランクを聞いてなかったのか? Aランクだぞ?」


 すかさず、アランがエイハブにつっこむ。


「ですから、私は商人なんですよ? たしかに、Aランクがかなり危険なのは知っていますが、一匹なのでしょう? もう一度言いますが、レッドマン様が出てくれるなら大丈夫なのでは? まさか、たった一匹のモンスターを恐れているわけではありませんよね?」


「ほう? ポートマン殿は、俺を馬鹿にしているようだな? 英雄が居らずとも、俺と俺の軍が居ればたかがAランクのモンスターなんぞ、問題なく討伐できる」


「これこれ、騎士様もポートマン殿も止めてくだされ。我々が争っても意味がないじゃろ? お互いに分野が違うのじゃから、分からないことも、知らないこともあるじゃろう。すまんが、ジェフ君ポートマン殿に説明をしてくれんかの」


 放っておけば、今にもアランがエイハブに掴みかかりそうな雰囲気になっていたので、エイドリアンは二人を宥めながらもジェフに説明する事を促した。


「はい、まずモンスターランクですが、これはE-から始まり最高でAAまであります。このランクは、適当に付けているものではありません。まず、最初に発見した人物が実際に受けた被害、そしてその状況、更にその後の調査、それらを検討し付けられます。その中でもAランクとは、深緑の竜ディープグリーンドラゴンをはじめとするドラゴン系の上位種や、鬼系の上位種である吸血鬼(ヴァンパイア)等、と言ったモンスターに付けられるものです。これらは、一匹居れば街を容易に滅ぼし、徒党を組めば国を滅ぼせる。と言われるほどの存在なのです。当然、そんな存在を単身で倒せるのは、御伽噺や伝説に出てくるような勇者等と言われる人間を遥かに越えた存在や、先ほど話題にもなりました、冒険者の中でも圧倒的な力を持った英雄、といった物です。そして、その勇者や英雄のような存在の居ない今、Aランクモンスターを討伐しようとする場合、軍を動かし、戦争と見間違うような大規模な作戦を立てなければならないのです」


「なるほど、理解しました。ならばこのエイハブ、持てる力を全て使って助力いたしましょう。そしてレッドマン様、己の無知を晒しそれを笠に着て反論してしまい、もうしわけありませんでした」


 そう言ってエイハブが頭を下げると、アランは難しい顔をしていた。


「いや、すまないこちらも悪かった。ところで……あーグレン。だったか? あれだけ色々言った手前、どうかとは思うのだが、本当に英雄は来られないのか? 俺自身、邪精霊を倒せる自信が無いわけではないのだが、とれる手段は多い方が良いからな」


「今すぐに、となると無理です。少なくとも、一週間以内は不可能です」


「ん? と言うことは、一週間以降ならば呼び寄せる事ができると言う事になるのか?」


「はい、そうです。実は最初、私とギルド長は数人の英雄を招集し、邪精霊を討伐しようと考えていたのです。しかし連絡がつき、かつ二週間以内に来ることが可能な英雄は、一人しか居りませんでした。邪精霊の性質上、いつ森から飛び出して来て暴れ出すか分からないため、こうしてレッドマン様をお呼びしたわけです」


「なるほど、な。それなら納得だ。なら、英雄抜きで戦う事を考えておいた方がいいのか?」


「どちらとも言えませんね。この国に英雄が来るまで、混沌の森の監視を強化し待ち、英雄が来たと同時に仕掛け、邪精霊を討伐する。という方法が、一番堅実な方法だと思っています。しかし、英雄が来ていない時に邪精霊が飛び出してきた場合、レッドマン様の連れてきてくださった軍に頼る他ありません」


「大体分かった。では、英雄が間に合わなければ俺の軍でどうにかする。間に合えば、英雄を俺の軍に入れて戦うという事になるんだな?」


「はい、と言っても英雄が間に合った場合、軍の動きは英雄のサポートや、英雄がしくじった時の後始末という形になってしまいます」


 そこまでジェフが言い切ると途端にアランの機嫌が悪くなる。


「なるほど、俺達に小間使いの真似をしろっていうのか」


 と、少しイライラとした口調でアランが問う。


「いえいえ、たしかに行動だけならそう見えます。が、実際、英雄一人は良くて相打ち、下手をすれば邪精霊が生き残ってしまう場合があるのです。なので、寧ろレッドマン様は頼りにさせて頂きますよ?」


 ジェフは、少し焦りながらそう答えた。


「というより、軍と英雄が連携して討伐に当たればいいんじゃないのでしょうか?」


 そこで、もっともな疑問をエイハブがジェフに言った。


「それはたしかにそうなのですが……なにぶん、冒険者は装備もそうですが、戦い方が独特な者が多く居りまして……更に今回来れそうな英雄は、軍と連携できるような性格と戦い方ではないのです」


「なるほど、分かりました。」


 エイハブは納得した顔で居たが、アランは理解はしたが納得しないと言った風な表情をしていた。


「そして、更にもう一つ案があるのですが、その邪精霊を捕らえるという方法です」


「はぁ? ちょっと待て。お前、何を言っているのか分かっているのか?」


 アランはこいつ、気でもふれたか? とでも言いたそうな表情でジェフをにらみつける。


「はい、分かっております。そして、なぜレッドマン様がそんな事を言うのも分かります。」


「なら尚更だ、意味が分からない。相手は邪精霊なのだろ? それもギルドから正式にAランクと認定した。それを捕らえる? 捕らえてどうするのだ? まさか飼うとでも言うのか?」


「はい、そのまさかです。」


「おい、こいつは頭がおかしくなったみたいだ。今日の会議はここまでだ」

 

 これは駄目だ、と言う風にアランは手を挙げ、席を立ち会議室から出て行こうとする。しかし、エイドリアンがそれを制す。


「少し、待ってくれないかのぅ? 騎士様」


「なんだ? 冒険者ギルドの責任者は狂人ばかりなのか?」


 エイドリアンとアランの間に緊張した空気が流れる。


「いや、ちゃんとこの案には成功の可能性もあるんじゃよ。」


「なるほど、まぁ良い。言ってみろ」


 そう言い、席に戻り大きな音を立て、座りなおすアラン。エイドリアンは、ジェフを見たが、ジェフは目を逸らしたのでエイドリアンが話しはじめた。


「まず、邪精霊の生まれ方は知っておるな?」


「ああ、知っている。生まれる所を見たこともあるしな」


「そこでじゃ、今回生まれた邪精霊は能力からみても中位、あるいは上位なのかもしれないのじゃが、力を持った精霊が歪んで生まれた存在だと見ておる。そして、その形態は最初にも言ったが甲殻魔虫に良く似ておるのじゃ」


「それは当然だろう、精霊が歪んで生まれた邪精霊は必ず何かしらモンスターと同じ形をとるのだからな。そんな話をするために引き留めたのか?」


 いまさら何を? という表情のアランに対しエイドリアンは余裕を持って答える。


「さて、騎士様? 精霊術師と虫律師というのを知っておるかの?」


「ああ、精霊術師は精霊の力を借りて、魔法のような現象を起こす事のできる奴等だったか? 虫律師は……知らんな」


「虫律師は、魔獣使いの甲殻魔虫版だと思ってくれたら良い。どうやら、特殊な音色の笛と香によって、甲殻魔虫を手なずける者なのじゃ」


 それを聞きアランはなるほどと頷く。


「見えてきたぞ。その二つの技術を持った奴が居て、そいつを使って今回の邪精霊を捕獲、使役しようって言うのだな?」


「そういうことじゃ。ただ、この方法は成功するか分からぬ上、虫使いも成功するとは確信しておらんのじゃ。だから、できたらいいのう……程度の事として覚えておいてくれんかの。最悪、討伐のための陽動や、撤退時に動きを止めるだけに使えればいいのじゃ」


「なるほど、それを主目的にするって訳じゃないのだな? それなら理解できる」


「ちゃんと最後まで聞かぬからそうなるのじゃよ。短気は損気じゃよ?」


「ちなみに、捕まえた場合それはどうするのですかな? まさか、そのままその虫律師でしたっけ? その冒険者の物。なんて事はしませんよね?」


 そこで、ここまで黙っていたエイハブが聞いた。


「とりあえず、大人しくなったところで討伐、そのまま国の監視の元、解体する。と考えておる。もしくは、そのまま虫使いを軍に編入させ、この国の力としようかと考えておる」


「なるほど、なるほど」


 それを聞き、突然ニコニコしだすエイハブ。


「さて、取り敢えずの基本方針はこれでいいでしょうか?」


 そうジェフが問う。


「異議はない」「異議なしじゃ」「異議なしですね」


「では、この計画を元に細かいところを詰めていきます。では……」


 そのあと、物資の必要数の確認、迎え撃つ場所の設定、待機する場所、すべて失敗した場合被害を抑えるための誘導方向等を話し合い、それは真夜中まで続いた。



読んでいただきありがとうございます。

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