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ブリューナクな日々  作者: 大きいは強さ
第1章:混沌の大樹海
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プロローグ

この作品は勢いとノリで出来ている所が多いです

 何も見えないが、何かあると感じられる天地の分からない不思議な空間。

 感覚的に分かるのは、そこをフワフワと漂っている事だ。そんな感覚が一時間だろうか? それとも、もっと長い時間だろうか? 時間の感覚が曖昧になるほど続いたそれが収まると、ひんやりとした所についた感じがした。


(何だ? 何がおこった? 分からない。ここは何処だ? 真っ暗で何も分からない。分からない、分からない……分からない。駄目だ。一度状況を整理しよう。自分は……地球? の熱い所に居た? そして? 何かをしていたような気もする。けど、何もしていなかったような気もする……思い出せない)


 頭を捻っても何も思い出せない。考えても考えても答えが出ないので、現状の確認へ移る。


(しかし、今自分はどこに居るのだろう? 周りは真っ暗で音も聞こえない。体は……腕と足が動く感覚はある。感覚はあるのだが、その感覚が正しいのかもわからない。ん? 何か崩れた? 駄目だ。考えがまとまらない)


 自分は、落ち着くために深呼吸をしようとした。すると、声はおろか息も出なかった。代わりに、カチンと、何かが合わさったような、割れたような、良く分からない音がした。


(これは、何か咥えさせられているのだろうか? となると、拉致監禁? つまり、誘拐事件等に巻き込まれてしまい、どこか密室に閉じ込められて……いや)


 そこで周りがひんやりとした空間であり、自分の体に密着するように壁が有る事に気が付く。同時に、先ほど手足を動かした時に、その動かした箇所が崩れるような感覚が有った事を思い出す。


(自分は今地中に居るのか? 息ができるって事はそんなに深い場所ではない? なら、何かしらの危害を加えられて自分は殺されてしまったのか? それだと、体に痛みがないのがおかしい。それ以前に自分は生きている)


 考えても、考えても分からない。腕を組もうにも土が邪魔しているのか動かす事が出来ず、そんな簡単な行動すら出来ない事にいら立ちが募る。


(そもそも、自分の現在の状況を理解するための情報が少なすぎる。さて、どうする? どうすると言っても、どうにもならない。駄目だ、今度は腹が減ってきた)


 考えている間にも、異常な空腹感は増大していき、それはもはや抗いようの無い飢餓感に変わり、それが自分を支配しつつあるような感覚を覚える。


(そういえば、周りには土が沢山あるんだ。なら、土でも食べるか……いや、いやいや待て。何故自分は今土を食べようとした? 普通人間は土を食べない……普通、人間は土を食べようとはしない。自分は人間? 人間?)


 色々な知識は有る。人間であったり、そのほかの動物の簡単な生態。他にも、いわゆる加減乗除と言った簡単な物もだ。だが、それを誰に習ったのか、なぜ知っているのか分からない。憶えていない。

 元々視界は真っ暗ではあるが、よりそれが強まったような感覚に襲われる。自分が自分で無くなっているような、何もかもが分からなくなっていく。

 

(自分は、その人間なのか? だった? いや、人間? は土を食べて生きてはいけない。なら、食べようと思うはずが無い。つまり、土を食べようとするような自分は、人間ではない。なら、土を食べても良い。それならば、食べよう。それはもう、腹がいっぱいになるように沢山……)


---------------------------------------------------------------


 意識を失い、どれほど時間がたったのだろう……空腹に負け、土を食べ始めて一日、いやもっとだろうか? 一週間? その時間の長さは分からないが、腹が満たされた事により頭が回りだした……と言うより意識が戻った。

 取り敢えず、どうやら自分は人間ではなくなっているらしい。

 土を食べておいて今更と言った感じではあるが。どうやら虫、それもジムシのような形態をとる種類の昆虫の幼虫になっているようだ。

 いつ気がついたか? と、言うと脱皮した時である。意識が戻って来たのがちょうどその時だったらしく、背中から皮が破れて、そこから外に出て行く解放感にも似た物を感じながら目が覚めたのだ。

 自分の体がどうなってるか分かって、ここでまた気になることが出てきた。


(なぜ、虫になってしまった自分が、ここまで考えたりすることができるのだろうか?)


 という事である。人間から見て、あれだけ小さな存在になってしまったのにも関わらず、コレだけ物を考えられるというのはおかしい気がする。いや、もしかすると知らないだけで、虫達はこれだけ色々考えていたのかもしれないのだが。


(まぁ、何か問題があるわけでもないから別に良いか。それより、なぜこんなに落ち着いて居られるんだろうか?)


 これはもっと分からない。そうである事が当然であるように、自分は受け入れてしまっている。人から虫になったと言うのだから、普通はもっと悲しみ嘆くはずなのに、そんな気持ちは一切起こらない。まるで、人であったことが妄想で、今の状態が本来であるような、そんな当然として受け入れているのである。


(まぁ、別にグダグダと嘆きたいわけでもないし、考える能力があるという事は良い事だと信じよう。しかし、脱皮してから視界の中にチカチカと光る物が見える。これは、一体何の光だ?)


 当然というのか、自分の視界には土の壁しか映っていない。だが、何というのだろうか、透過して地中に埋まった何か光る物が見えている感じがするのだ。

 何か他にする事もないし、興味を引かれたので一番近くの光に向かって食べ進んで行く事にした。それは思ったより近くにあったらしく、すぐに見つけることができた。

 それは、丁度口の中に入るくらいの大きさの物だった。

 曖昧な感じになってしまうのは、自分に目が存在しないのか、それとも視力が極端に弱いのか、その両方なのか分からないが、どれだけ見ようとしても、ちゃんと形を認識できず。ただ、光る物としか認識できないためだ。しかし、それを何故か食べられると判断した自分は、その光る物を口に入れた。

 飴を噛み砕くような、煎餅を噛み砕くような、しかし少し違う。硬い食感なのだが、柔らかく、溶けていくような不思議な感触がした。そして飲み込むと、体に何か入っていくというか、何かを得たような、不思議な感じがする。しかも、その後何か力が溢れてくる感じがした。

 なんとなく、これは重要な事なのだろうと判断し、その光を見かけたら、その方向に向かって食べ進んでいくことにした。


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 二度目の脱皮を終えた。なんとなく感覚でこれがこの姿の最後のはずと確信する。そうなると次は蛹である。


(出来ればカブトムシのオスが良いな。もしくはクワガタムシでも良いかな)


 土の中に居るジムシ系の幼虫、ということは甲虫系であるはずだ。なら多分、カブトムシだきっと。さて、それはそれで重要だが、それはそれ。のんびりと考えて居てはいけない。虫として生きるのならば、大きく強くなければ生きられない。


(つまり、食べるだけで何か力が溢れてくる光る何かを、これまで以上にたくさん食べていかなければならない)


 視界には、まるで星空のように光が見える。自分は(すべて食べつくしてやる!) と、気合を入れ、食事を再開した。


---------------------------------------------------------------


 そうして、どれほど土と光る何かを食べていたのだろうか。気がつけば、蛹から脱皮していた。

 何故かはわからないが、脱皮するときは『脱皮をした』と、言ったように、結果だけが残ってしまうように、意識が飛んでしまう。

 これは、自分の意識が虫ではないから、脱皮のたびに虫の精神、もしくは本能と言った物に変わってしまっている。と、言うことなのだろうか? 一瞬……というには長いが、自分が自分で無くなるとは、なんとも恐ろしい話しではある。

 しかし、自分が今の思考のままだと脱皮しきれ無いとしか思えない。そうなった場合、冗談抜きに死んでしまうのであろう。それに、現状何も問題がない。何より、これ以上脱皮する事も無いから大丈夫だろう。だが……やはり、少し気になる。


(まぁ、考えていても仕方が無い。それに、どの道このまま土の中にいてはまずい。成虫になったのなら土を食べるだけでは生きてはいけないはずだろうからなぁ)


 恐らく、自分は甲虫とよばれる分類の虫なのであろう。それも腐葉土等を食べる種類の幼虫から完全変態をして成虫になる種だ。そうなると食料はおそらく樹液だろう。それならそれでどこへ行けば舐められるのかを知らなければならない。

 そして、そのためには羽を使って飛ぶ事も覚えなければいけないだろう。更に、餌場で必ずあるであろう同族との闘い。捕食者からの逃走方法の確立。他にも、この場所がどんな場所なのかも確認しなければならない。やる事は色々ある。それはそうとして、現状一番知らなければならない事が有る。


(地上はどっちだ?)

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