赤いクレイマン
多少グロテスクな表現が含まれています。苦手な方は読まない方が良いかと。
終わりの無い戦争の続く世界の外れで、王の命を受けた魔女が自身の魔力で一体の泥人形を作り上げた。それが彼、クレイマン。魔女が彼に与えたのは四メートルを超える巨体と人間に少し劣る知能、そして人間に対する殺意以外は空っぽの心。彼は南軍最強の切り札、何も生み出すことができない殺人兵器だった。
彼はたった一人で戦場に送り出された。ただの泥人形でしかない彼は相手にされない。しかし彼には関係なかった。彼は抑えきれない人間そのものへの殺意をそのままに巨大な腕を一振りする。まるで竜巻に巻き込まれたように吹き飛ぶ沢山の兵士達。吹き飛ばされた兵士達は原型も残さない程にひしゃげ、巻き込まれた兵士達は悲鳴を上げ、それを目撃した兵士達は現実から逃げ出した。
彼はその様が可笑しかったのか、笑うように体を震わせてもう一度腕を払うように振った。また沢山の兵士が巻き込まれ、赤い雨を降らした。自身を見失っていた兵士達は目の色を変える。クレイマンを倒すべき敵だと認識した。剣を握り締め斬りかかっていった。
それからは単調な日々が続いた。兵士達が剣を持って彼に襲いかかり、彼はそれらを迎え撃つ。結果はいつも彼の圧勝だった。兵士達の剣は彼に毛ほどのダメージを与えることができず、彼の一撃は多数の兵士を沈黙させた。
彼は殺意のままに兵士を殺していた。時には原型が残らぬ程に叩き潰し、時には遠く殴りとばし、時には鋭利な刃物に変えた腕で斬り裂いた。同時に彼の空っぽの心に真っ赤な熱いものが溜まっていった。それは人を殺す度に溜まり熱く熱くなっていく。しかしそれが何なのか彼には分からない。分からないから殺し続けた。それしか彼は知らなかった。
彼は返り血を幾度となく浴びた。それが体に染み込み、土色だった体はいつしか紅くなっていた。誰もが恐れる怪物になっていったのだった。
幾年が経って戦争は終結した。南軍は結局敗れた。彼一人でどうにか出来るはずもなかった。彼の生みの親は処刑され、彼は賞金を掛けられ追われることになった。
それから幾度も彼の前に欲にまみれた目の人間が現れるようになり、彼はその悉くを撃退していった。その度にやはり赤い熱いものが心を満たしていき、それは彼を責める。どうして死なないのか、と。どうしてまた殺すのか、と。それは彼にも分からない事だ。彼が一番知りたい事だった。
ある日、彼は少女を見つけた。川の中で溺れている少女を。いつもなら見過ごす小さな出来事、いつもなら何の行動も起こさない日常に近い出来事。しかし彼は走り出した。少女を助けるために走り出した。強いて理由を上げるのなら心の赤くて熱いが叫んだから。
川岸にたどり着いてふと彼は思い出す。自分が泥で出来ている事を。水に流れてしまうことを。それでも彼は構わず水に入った。足を一歩進める度に足が短くなって行く気がした。
体が細くなっていく気がした。
それでも彼は構わず、迷い無く少女の下へたどり着いた。彼は大きな手の上に少女を乗せ、川岸に戻ろうと振り返って足が崩れた。傾く彼の体。彼は限界まで少女を乗せた右腕を伸ばし、岸に戻すことに成功した。同時に少女は咳き込み、彼は川に倒れ込んだ。彼は死を覚悟し、自分がどうしてこの様な行動に出たのか考え込む。やはり、彼の足りない頭では理解することはかなわない。
ふと、咳がやんだ少女がこちらを見た。彼は少女が泣き叫んで逃げ出すと思った。それは少し辛いことだが、彼は慣れきっていた。しかし、少女は彼の予想に反して透き通った高い空のような笑顔をうかべ、
「ありがとう、クレイマン」
そう言って走り去っていった。彼は心が暖かい光で満たされるのを感じた。赤い熱いものが外に押し出されて流れていくのが見えた。彼はそれでもやはり暖かい光が何なのか分からないまま、川に流れていった。
なんか駄作になってしまったような……。やっぱり熱がある時に小説を書くべきじゃありませんね。




