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「昔むかしある所でぇ②」

「桃太郎鬼ヶ島へ行く!」

掲載日:2026/07/07

 おばあさんが川へ洗濯へ行くと大きな桃が、


どんぶらこっこ、どんぶらこっこと流れて来て、


「これは見事な大きな桃ださぞかし美味しいに違いない」


 おじいさんに割ってもらおうと気もそぞろに洗濯を済ませ、


家に帰りました。


裏山に芝刈りに行っていたおじいさんもそのうち帰ってきて、


「おじいさんナタは置かないで持って来ておくれ。すごいもんが流れて来たんじゃ」


 大きな声におじいさんが土間から居間を見ると、


「どうしたおばあ…な、なんだねこれは」


 囲炉裏の端にどんっと置かれた大きな桃にびっくり仰天腰を抜かし、


「ややこれは立派な…桃?おー桃じゃ桃じゃ。これを割って欲しいのか?」


 腰を労りながら満面の笑みのおばあさんと交互に見てナタを振りました。


「そうだとも、そうだとも。洗濯してたら上から流れて来てな、


こんなんに出くわすなんて神様のおぼし飯じゃ。


なまんだぶ、なまんだぶ。」


 おばあさんは桃に手を合わせ拝んでいて、


「生きてて良かったの~これ食べたら不老長寿になるかもしらん。


よしでは早速真っ二つにして食べようかのおばあさんや。


なまんだぶ、なまんだぶ」


 おじいさんが手を合わせ終わると、


えいっとナタに気合を込めたおじいさん、


見事に割れた桃の中から、


「オギャーオギャーオギャー」


 なんと真っ赤な赤子が飛び出し、


今度は二人でびっくり仰天。


腰を抜かし床に転がってしまいました。


「あわわ赤子じゃ男の子じゃおばあさん!」


「あわわなんとも元気な赤ちゃんじゃおじいさん」


「どうすっべおばあさん」


「何を言ってるおじいさん。


私らの余生の目いっぱいで育てるしかないじゃろ?それしかない」


「もちろんそうだとも。


奇跡の桃から生まれたから桃太郎と名付けよう」


「素晴らしい名前じゃのーさ~桃太郎、


山羊の乳でも飲みますか?」


 寂れた家に活気が戻り、


いつもなら二人は無口に会話なども最低限。


若い頃とは言わないまでも頬に血色が戻ってきた老夫婦。


一人が桃太郎を抱っこすると可愛い争奪戦も始まり、


賑やかな家の時間は過ぎ、


桃太郎はどんどん大きく成って行きました。


そして15年の月日が流れ桃太郎は、


唐突に鬼ヶ島へ鬼を討伐に行くと言い始め、


老夫婦を困惑させました。


「危険過ぎるそれよりわしらの面倒はどうなる?


あまりに悲しいぞ桃太郎」


「鬼ヶ島?それはいったいどこにあるんじゃ?」


「鬼の居る島など聞いたこともない」


「お前の出自は奇跡だった。


だから何かあるとは思っていたが、


まさか鬼退治のために生まれてきた侍だったのか?」


「それでもじゃ、それでもここまで立派に育てたのに


仮とは言え育ての親を捨て置く気か…


どうか桃太郎そんな物騒な考えは捨て、


丹念に育てた質の良い田畑を守っておくれ」


「早々に嫁を貰っても良い。


家を増築してまた賑やかに暮らすのはどうじゃ桃太郎。


隣家のいつも遊んでいる澪はどうじゃ?」


「そうじゃそうじゃあの娘はお前を随分慕っておるぞ?」


 あれからもっともっと老け込んだ老夫婦の当然の思いだったが、


「ですが私には使命があります。


育てて貰った恩も決して忘れてはいません。


この使命を果たさなければ私たち一族の恨みは晴らせません。


どうぞどうか分かって下さい。


あなたたちの面倒はもう澪ちゃん一家に頼んであります。


父様と母様が大事に取ってくれていた私が包まっていた反物。


あれを売ったら随分とした金子きんすになり、


半分はすでに澪一家に託してあります。


それに私は生きて帰って来るつもりですよ?」

「あぁ~桃太郎」


「うぇええええええん」


 真実を知ってしまった老夫婦は我が子を抱きしめて泣き、


桃太郎との15年を振り返ると、


笑いが絶えなかった時の流れに感謝しか無いと考えを改め、


応援しようと、


「それで討伐には充分な支度が必要じゃろう?


何か特別な品があるのかい?」


 おじいさんが聞くとおばあさんも真剣に聞き入り、


「はい。実は猿と犬と雉をお供にするための【きび団子】が必要なのです」


「きび団子とな?」


「きびという何かでこしらえた団子?」


 老夫婦は顔を見合わせていた。


「きびのきびとはなんじゃろ。おばあさん知っておるか?」


「全然分からないよおじいさん。


この地方にそんな名で呼ばれる何かは無いかも…」


 桃太郎の顔が青ざめていて、


「あーまさか地域の違う所にワープさせられた?!


なんてことだぁ」


 頭をかきむしり訳のわからないことを口走る桃太郎に、


「ワープ?」


「輪っか?」


 老夫婦はまた顔を見合わせていた。


 それからと言うもの桃太郎はまず、


きびと言う何かを知る国を探す旅に出て


お供の猿と犬と雉という名の、


やはり桃太郎の国から送られたサイボーグ兵士たちと会うのは、


まだまだ当分かかりそうでした。


おじいさんとおばあさんは、


桃太郎のたっぷりな配慮によりとても長生きしましたが、


桃太郎の消息はやがて…。



 おしまい

読んでくれてありがとう!

コメントなど応援とかもよろしくね。

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