表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

ちょっと女の子になってみた①

朝起きたら、『女の子』になっていた。


……いや、正確に言うと、身体が女の子だった。


慌てて確認したいことはいろいろあったはずなのに、最初に困ったのは、クローゼットだった。


服が、ない。


いや、ある。量としては十分にある。

ただ、どれも"知らない服"なのだ。


昨日まで着ていたはずのシャツやジーンズは消え、代わりにハンガーに掛かっているのは、柔らかそう な布地の服ばかりだった。


形は似ているのに、どこか決定的に違う。ボタンの位置、襟の空き、腰のあたりの線。

それらはどれも、「この体で着ること」を前提に作られている。


 

とりあえず、一番無難そうな服を選んだ。

色は落ち着いているし、露出も少ない。男だった頃の感覚で言えば、安全装備のつもりだった。


 

着てみて、すぐにわかった。


これは、防具じゃない。

動くたびに布が揺れる。

屈むと、気をつけろと服が主張してくる。

 

立ち方ひとつで、シルエットが変わる。


 

服が、こちらの動きを規定してくる。

まるで、この身体での正しい立ち回りを、無言で指示されているようだった。


 

鏡を見る。


そこには、見知らぬ女の子がいた。

似合っているかどうかは、正直よくわからない。

ただ、不自然ではない。それが一番、困った。


試しに、もう一着。

今度は少しだけ違うタイプの服を選んだ。


結果、さらに落ち着かなくなった。

 

同じ体なのに、服が違うだけで「役割」が変わる。

さっきより軽く見られそうな気がするし、逆に距離を取られそうな気もする。

理由は説明できないが、そう感じてしまう。


服が、クラスを選んでいる。

RPGで言えば、装備変更だ。


能力値が変わる。振る舞いも変わる。

しかも、装備を外したからといって、素の自分に戻れる保証はない。


これは、思っていたより厄介だ。


 

玄関で靴を履こうとして、さらに気づく。

立ち方が違う。重心が違う。

 

服に合わせて、体が勝手に調整している。


 

外に出る勇気は、まだ出なかった。


今日は、ここまでにしておこう。

女の子になった初日だ。

無理に進行度を上げる必要はない。


そう自分に言い聞かせながら、もう一度クローゼットを見る。

まだ、たくさんの服が残っている。

 

どれも、未装備だ。


……次は、どれを着せられるんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ