第1話 召喚 ― 教室が転移したとき
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第1話、いよいよ始まります。楽しんでいただけると嬉しいです!
2030年8月24日
俺はヨリ──普通の高校生だ。
退屈な日々がただ繰り返されるだけの日常。明日は何か特別なことが起きないかと、漠然と願っていた。
2030年8月25日
今日、学校に着くと、空がどこか不穏な色に変わっていた。
地面が揺れ始め、揺れはどんどん激しくなっていく。
教室の床から、白く眩い光が湧き上がった。
その光は、クラスの全員を飲み込み、見知らぬ場所へと送り込んだ──。
―――
目を開けると、俺はもはや教室にはいなかった。
冷たい石の床が背中に当たり、鼻を刺すようなツンとした匂いが頭をくらませる。
頭痛がズキズキと波打ち、なんとか肘をついて体を起こした。
周りを見ると、仲間たちは立ち上がっていた。彼らの手には、見慣れない武器や光る紋章が輝いている──
俺が気絶して光に飲まれている間に、皆が手に入れた“力”だった。
そのとき、白い光の中から声が響いた。
「最後の一人よ、力を受け取れ。」
震える足で光のもとへ近づくと、空間に窓のような発光体が現れ、文字が浮かび上がっている。
目の前に、透けたステータスボードが出現した。魔法の文字が空中で淡く光る。
【選択可能なクラス一覧】
– 戦士 → 選択済み
– 魔術師 → 選択済み
– 弓術士 → 選択済み
– 騎士 → 選択済み
– 暗殺者 → 選択済み
– 聖騎士 → 選択済み
強そうな名前は金色に輝き──既に誰かが選んで消えていた。
その下には、灰色でかすれた文字が寂しく残っている。
– 農民
– 吟遊詩人
– 商人
– 料理人
喉が詰まる。あのステータスは、まるで死刑判決のようだ。
体が震え、痛みに耐えながらもぎゅっと拳を握って、そのかすれた行の一つに指を伸ばした。
【クラス:商人】
後ろから嘲笑が飛んだ。
「ヨリ、本当にその落ちこぼれクラスを選んだのかよ?!」
――バシッ!
背後から強い一撃が入った。反射的に振り向くと、カイが肩を叩いて笑っている。
「まあ、大丈夫だって。どこかで別のクラス見つけられるさ」
ドスン!
強く床に弾かれ、体が飛ばされる。無意識に手が鼻にあたり、血が掌に滲んだ。熱い赤が掌に広がる。
「おまえ……まさか……? 本当に……俺たち……親友じゃなかったのかよ……」
教室の中央、級長のエンジェルが冷たい声で言う。傲慢な笑みが顔に張り付いている。
「もうお前は俺の友ではない。道を彷徨うような商人に過ぎん。」
彼は近づき、俺の襟首をつかむと、冷たい石畳の上で俺を引きずり回した。衣服は擦れて破れ、背中には引きずられた痕と血の筋が残る。
「さよならだ、彷徨う商人め。そこの奈落で楽しく暮らすんだな。」
エンジェルは不気味に笑うと、ためらわずに俺を黒い穴へと投げ落とした。
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