chapter4 迫り来る災難
風魔法が発動し、刃のような風がゴブリンを切り裂いた。
耳をつんざく悲鳴が夜気に響く。
「ギギギイイイイイ!」
オレは追い打ちをかけるように再び風を放つ。
「ウィンドカッター!!」
鋭い風刃が逃げかけたゴブリンの背を貫き、その首を跳ね飛ばした。
倒れた魔物の血が土を濡らす。戦いの余韻に、静寂が戻った。
……すっかり暗くなっちまったな。
月明かりが冷たく照らす中、オレは立ち去ろうとして、ふと思い出す。
「あ、魔物って……金になるんだっけ?」
ヒロが笑いながら言っていたことを思い出す。
討伐部位と、体内にある“マセキ”……いや、“マショウセキ”だかをギルドに持ち込めば、金に換えてくれるって。
「確か、ゴブリンの討伐部位は……耳だったよな」
胸に核があるって話だったな。
オレは倒したゴブリンへ歩み寄り、震える手で解体を始めようとした。
そのとき――。
〖ガサガサ〗。
茂みを揺らす音とともに、鼻を刺す悪臭が漂う。
現れたのは、よだれを垂らしたゴブリンが三匹。
「……またかよ」
嫌な汗が背を伝う。だが退くわけにはいかない。
オレは咄嗟に両手を突き出し、習得したばかりの魔法を乱射した。
「ウィンドカッター!! ウィンドカッター!! ……ウィンドカッターッ!!」
風の刃が次々と迸り、暗闇に閃光のように走る。
一匹は右足を切断されて転び、もう一匹は首を刎ねられて即死。残る一匹は左腕を吹き飛ばされ、絶叫した。
「ギギギイイイイ!!」
「ギギギギギギイイイ!!」
生き残ったゴブリンは恐怖に駆られ、背を向ける。
転んだ個体は這いずって逃げようとし、片腕を失った個体も必死に闇へ走ろうとした。
「逃がすわけ……ないだろ!!」
オレは叫び、畳みかける。
「ウィンドカッター!! ウィンドカッター!!」
風刃が胴を裂き、ゴブリンたちは地面に崩れ落ちた。
「……はぁ、はぁ」
息を荒げ、額を拭ったそのとき。
「ギギギギギギイイイイイイイ!!!」
地を震わせる雄叫びが、闇の奥から響いた。
振り向いたオレの目に映ったのは――。
数十匹のゴブリンを引き連れ、月明かりに浮かび上がる“異形”。
普通のゴブリンよりも頭一つ大きく、筋肉質な体躯に緑黒い肌。
血走った眼光がオレを射抜く。
「……なんだ、あれは」
迫り来る“災難”を前に、オレの喉はひどく乾いていた。
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