chapter2 恐怖を越えて
ゴブリンと対峙しながら、オレは必死に考える。
――このままじゃ勝ち目はない。
焦りで頭が真っ白になりかけたそのとき、不意に過去の会話がよみがえった。
■ ■ ■
昼休み。教室の片隅でヒロが本を読んでいた。
気になったオレは、声をかける。
「ヒロ? なに読んでんだ?」
「ん? ケイか。ああ、これ? ライトノベルってやつ」
「小説かぁ。お前、好きだよな。どんな話なんだ?」
オレが関心しながら尋ねると、ヒロはページから目を離して答える。
「異世界に転移した少年が、魔法で無双して王になる……そんな感じの話だな」
「“そんな感じ”ってなんだよ」
「まだ一巻の途中だからな。今は、異世界に来た主人公が魔法を習得しようと奮闘してるとこだ」
そう言って苦笑するヒロ。
オレは少し興味が湧いて、続けて聞いた。
「タイトルは?」
「《異世界転移と魔法の覇道 ―気づけば王となりて―》だな」
「へぇ……魔法かぁ。使ってみたいよな」
「だよな。カッコイイし、便利そうだし」
「魔法の使い方とか書いてたりしないの?」
ふと疑問に思って聞くと、ヒロはページをめくりながら答えた。
「えーと……まずは自分の中の魔力を感じること。精神を落ち着かせないと上手く操作できないんだとか。
ゆっくり気持ちを整えて、体内にあるエネルギーを循環させるイメージを持つ。
それを掌や指先に集めて、放ちたい魔法を想像して詠唱する……そうすれば発動できるらしい」
■ ■ ■
――そうだ。あのときの話。
魔法を使うなら、まずは魔力を感じることから始めろって……。
オレは大きく息を吸い、覚悟を決めた。
怖い。正直、足も震えてる。
それでも、このままやられるくらいなら……!
「……やってやる」
そう呟き、オレは静かに目を閉じた。
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