chapter27 新しい生活の始まり
ゴブリンたちを討伐して、持ち金が増えたから整理しておこう。
前回――と言っても昼頃なんだけど、ゴブリン二十匹とホブゴブリンを倒して、ギルドから支払われた報酬が銀貨2枚と銅貨125枚。
今回の報酬が――銀貨67枚と銅貨265枚。
合わせて、銀貨69枚と銅貨390枚だ。
まだこの世界の金銭感覚はよくわからないけど、これをそのまま持ち歩くのは、さすがに危険な気がする。
素直にアイテムボックスに突っ込んでおこう。
「もう……夕方か。宿探さないとな」
大金を収納したオレは、街を歩き出した。
昨日は衛兵の宿舎みたいな場所に泊まったけど、今日からは宿暮らしだ。
街の通りには人影もまばらで、昼間とは違う落ち着いた空気が漂っている。
異世界に来て、二日目。
色々あって濃厚な一日だったが、この世界は“生き残る力”さえあれば、どうにか生きていける。
危険なことは、なるべく避けて――。
そんな風に考えているときだった。
「やぁ、期待の新人くん。宿探しかい?」
「私たちが泊まってる宿、紹介しましょうか?」
男女二人に声をかけられる。
(確か、この人たちは……)
見覚えはある。
けど、すぐに思い出せず、言葉に詰まった。
「覚えてないのも無理ないわよ。あのゴタゴタじゃね……」
「オレたちも、ギルマスが待ち構えてるなんて思ってなかったからさ」
二人は笑いながらそう言った。
「私はフィアン」
「オレはウィル。つい最近、Cランクになった冒険者だ。
君は?」
「ケイタと言います。よろしくお願いします」
そう言って、軽く頭を下げる。
「礼儀正しい子ね」
「ゴブリンサージェントの群れを殲滅したって聞いてたから、もっと荒っぽいと思ってたよ」
(え!?)
「オレ、どんなイメージ持たれてたんですか?」
思わず聞き返す。
「うーん……戦闘狂?」
「正直、あの場にいた人たちは、だいたいそう思ってたと思うよ」
なんか……ひどい言われようだ。
(あのときって、やっぱり――昼間の“あれ”のことだよな?)
「ここで話すのもなんだし、宿まで歩きながら話そうか」
ウィルさんがそう言って歩き出す。
フィアンさんと一緒に、その後をついた。
「オレって、そんなにヤバく見えました?」
「空を駆けながらゴブリンを倒してたもの。さすがに引くわよ」
「人が空を走るところなんて、初めて見たからね。 あれ、どういう技術なんだい?」
二人の視線が向けられる。
「“あれ”も魔法ですよ。知ってた魔法を応用しただけです」
「応用?」
「無魔法の“シールド”です。 風魔法で応用したものは、“エリアルシールド”と言います」
オレは歩きながら説明した。
「シールドは空中に壁を作る魔法で、
魔力を注げば注ぐほど、耐久性や持続時間が上がる。 形も、ある程度自由に変えられます。
似た魔法に“ウォール”がありますが、あっちは消費魔力も形も固定です。 魔力を注げば強くはなりますけど、使い切れば消えます」
「なるほど……」
「新人で、そんな発想が出るのがすごいわよ」
二人は、どこか呆れたように苦笑した。
そうして話しているうちに、ウィルさんが一軒の建物の前で立ち止まる。
「ここが――オレたちが泊まっている宿だよ」
オレは、その建物を見上げた。
今日、泊まることになる宿屋だった。
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