Prolog2 追放者の本当の能力
オレは、召喚国を追放された。
筆頭すべき能力がないからだとか……。
「これから……どうするかなぁ……」
近くの樹木の根本に腰を下ろし、ただ途方に暮れていた。
時刻は夕方。空は赤く染まり、森の奥からは不気味な声が聞こえる。
この世界には魔物がいる――兵士たちの会話で、耳にしてしまった。
つまり、このまま夜を迎えたら、確実に…死ぬことになる。
手元にあるのは、召喚前に買ったばかりの新型ゲーム機と、そのソフトだけ。
なんの役にも立たない。
「プレイするの……楽しみにしてたのになぁ」
自然と声が漏れる。
そして、ふと自分の言葉に引っかかった。
「……今の状況って…」
乾いた笑いを漏らしながら頭を抱え、やっと顔を上げた。
そうだ、この世界。城、魔法陣、兵士、勇者。
――まるでMMOみたいな世界じゃないか。
もしそうなら、あの兵士が言っていた“職業が無い”って話も……本当に信用していいのか?
「たしか……ステータス魔法、とか言ってたよな……?」
そう口にした瞬間、目の前に――半透明の板が現れた。
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【名前】: ケイタ・コクジョウ
【種族】: 人間
【年齢】: 16歳
【性別】: 男
【レベル】: 1
【称号】: 【異世界人】【唯一職】【召喚されし者】【追放者】
【体力】: 250/250
【魔力】: 600/600
【攻撃力】: 100
【防御力】: 80
【俊敏性】: 120
【職業】: 無職
【能力】
【日常生活スキル】
記憶力Lv3、分析力Lv2、気配察知Lv1
家事Lv2、礼儀作法Lv3、楽器演奏Lv2、歌唱Lv2、計算Lv5
【戦闘系スキル】:身体操作Lv1
【魔法系スキル】
魔力感知Lv1、魔力操作Lv1
【固有スキル】:変遷の器
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「……で、出たぁぁ!?
本当にゲーム画面みたい!!」
思わず声をあげる。
いや、それよりも。
「唯一職……?無職……?」
気になって指先でタッチすると、説明文が展開された。
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【唯一職】無職
あらゆる職業の起点となる、最も“空白であり、最も満ちている”状態。
それは“何者でもなく、故に何者にもなれる”存在。
条件を満たせば、どんな系統の職業にも適応し、上位職へと進化することができる。
ただし、“無”であることは“未完成”を意味し、何の習得もないままでは力を持たない。
真の才能ある者だけが、この“無限の可能性”を開花させることができる。
特定の条件が揃うとランクアップすることができる。
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「……え、これ……めっちゃ強いやつじゃね?」
全身に鳥肌が立つ。
追放…?役立たず?――面白いこと言ってくれるじゃねぇか!!
「よ、よし!
じゃあ次は固有スキル!」
慌てて、変遷の器をタッチする。
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変遷の器
過去になったことのある職業に再転職できる。
クールタイム:7日。
転職により、その職業に関わる能力に切り替わる。
※すべての職業を“記録”することができる。
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「……は?」
オレは目を疑った。
これってつまり……。
「努力さえすれば、オレ……どんな職業にだってなれるってことか……?」
声が震える。
絶望しかなかったはずの心に、じわりと熱が広がっていく。
「やべぇ……これ、チートってやつじゃん……!」
笑いがこみ上げる。
オレは追放者――けど、その実態は、無限の可能性を秘めた“唯一職”。
胸の奥で、確かな高鳴りを感じた。
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