Quiet talk 闇のざわめき
※番外編です
門番たちは、近くで戦闘が行われていることに気づいていた。
夜の闇に、獣のうなり声や何かを切り裂く風の音が響いている。
「なぁ……俺たちも加勢した方がいいんじゃないですか?」
若い門番が、隣に立つ男へ声を潜めて問いかけた。
「やめとけ」
中年の門番は短く吐き捨てるように言った。
「俺たちの役目はここを守ることだ。俺たちが持ち場を離れた隙に、あのゴブリンどもが侵入したらどうする?」
若い門番は眉をひそめる。
だが中年の門番は続けた。
「それに……これはルイス様の命令だ。逆らうわけにはいかん」
「しかし……」
食い下がろうとした若者を、中年の門番が鋭く遮る。
「よく聞け。あそこで戦ってるのは召喚者らしいが……“無能”だと決まったんだ。王族の方々が直々に追放を言い渡したんだぞ? だから、ああして野垂れ死にしかけてる」
「はぁ? ……そんな理由で?」
若い門番は理解できない様子で眉をひそめた。
「俺もお前と同じ疑問を持ったさ。“俺たちの仕事は、人々を守ることじゃないのか”ってな」
中年の門番の声には苦みが混じっていた。
「だが、ルイス様の答えはこうだ――“門を守り、魔物を中に入れるな”。それが俺たちの役目だと。あの召喚者がどうなろうが、関係ない」
中年の門番は静かに吐き出すように言い放つと、わざとらしく門を見やった。
「ゴブリンどもがこっちに来れば……そのときは返り討ちにしてやればいい」
しばし沈黙が落ちた。
遠くで、また獣の断末魔が夜気を震わせる。
「……でも、本当に“無能”なんですかね?」
若い門番がぽつりと漏らした。
中年の門番はその言葉に一瞬だけ眉を動かしたが、何も言わず夜空を仰いだ。
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