Prolog1 見捨てられた召喚者
新作です
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オレの名前は――国縄恵太、ごく普通の高校生だった。
バイトで貯めた金で、やっと手に入れた新型ゲーム機。
それを胸に抱え、帰宅していたときだった――突如、足元に複雑な紋様の魔法陣が広がり、眩い光に包まれた。
次に目を開けると、そこは見知らぬ世界。
足元には冷たく光る大理石、視界の果てまで広がる壮麗な王宮。
――まるで、現実ではなく、ゲームの世界に吸い込まれたかのようだった。
ざわめく周囲の声が耳に届かず、オレは思わずつぶやいた。
「……早く帰って、ゲームしたい」
現実感が、まるで手からすり抜けていく。
大事にしていたゲームも、今やオレの心を慰めることはできなかった。
スマホを取り出すも――
「ん? オフライン?
インターネットに接続してください?」
画面に映る文字に、オレの思考は停止した。
電波も、Wi-Fiも――何もない。
ここは、日本ではない。
現実だという事実が、頭の中で渦を巻く。
「……ふざけるな……」
感情が爆発しそうな瞬間、背後から甲冑の足音。
振り返ると、兵士のひとりが淡い笑みを浮かべて声をかけた。
「少し、いいか? あの列に並んでくれ」
水晶に手を翳す人々の列に、仕方なく並ぶ。
数時間が過ぎ、自分の番になった瞬間――別の兵士がオレを呼び止めた。
「君、こちらへ来てくれないか?」
人気のない場所へ連れて行かれ、神官服の女が現れる。
「この子が?」
兵士は答える。
「職業は無職です。特に特筆すべき能力もありません」
その言葉に、オレの身体は硬直した。
「なん…だ…と……?」
女神官は静かに告げた。
「このままでは、正式な召喚者として認められません」
冷たい視線が背筋を走る。
兵士たちがオレを囲み、ただ前に押し出す。
城門をくぐった瞬間、外の光が眩しすぎて、心の暗さを際立たせた。
こうして、オレは――ディルティーナ王国から、追い出された。
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