1, 8月2日 午前:雨
その日の天気は、とても不安定だった。
朝は雨が降り、やがて天気は回復した。
正午を過ぎると日が照りつけ、四万十市では気温が38℃にまで上がった。
蒸し暑さは、まるで熱帯のようだった。
その日、私は地元・四万十市のある高知に帰った。
一週間前、勤めていた会社を解雇されたばかりだった。
やり場のない気持ちを抱え、「実家に帰れば何かが変わるかもしれない」――そんな淡い期待を胸に、里帰りを決めた。
東京に住んでいた私は、岡山まで新幹線に乗り、そこから高知行きの高速バスに乗り継ぐことにした。
岡山に着いたのは、昨日のことだった。
岡山に着いて私は、旅行も兼ねて岡山市内をぶらぶらと見て回ることにした。
ふと、お土産をまだ買っていないことに気づき、岡山で調達することにした。
東京で買っても岡山で買っても、大差ない気がした。
四国は本州から離れた島のようなものだし、細かいことは気にしなくていい。
そう思って、きびだんごを手に取りレジへ向かった。
バスのチケットは、あえて翌朝発の便を予約した。
その日はビジネスホテルに泊まり、ゆっくり休むことにした。
今朝、ホテルを早めにチェックアウトし、岡山駅のバスターミナルへ向かった。
ここから高知駅までは、2時間半の長旅だ。
あまりお腹も空いていなかったので、食事は取らず、駅構内のコンビニで飲み物と軽いお菓子を買ってバスに乗り込んだ。
平日の早朝ということもあり車内はがら空きだった。
乗客は自分を含めて、3~4人ほどしかいなかった。
岡山県内のいくつかのバス停に止まったが、人影がなかったからか停車することなくそのまま通過した。
瀬戸大橋を渡る途中、窓の外の景色にカメラを向けている人がいた。
見た目からして高校生のようで、夏休みを利用して一人旅をしているようだった。
隣に友人らしき人も見当たらない。
そんな様子を横目に、私はぼんやりと外を眺めていた。
スマホを開こうとして、すぐにやめた。
解雇された直後、同僚や後輩から届いた「大丈夫?」という同情めいたメッセージが、今も胸の奥に引っかかっていた。
高知に入った途端、急に雨が降り出した。
天気予報を見ると、午後には止むらしい。
いつもは澄んでいる四万十川も、これでは濁流になってしまうのではないかと思えるほどの雨だった。
さらに1時間ほどバスが進むと、高知駅が見えてきた。
バスは停車し、私は降車した。雨はまだ降り続いている。
四万十へ行くには電車に乗らねばならないため、足早に券売機へ向かった。
切符を買い、改札を通ってホームへ向かう。
ちょうど電車の到着を知らせる音楽が流れた。
国民的アニメのテーマ曲が雨音に混じって響き、ホームの外に見える坂本龍馬像が、どこか切なく見えた。
電車に乗り込む。
電車に乗るのは、ほんの7日前まで日常だったはずなのに、なぜかとても新鮮に感じた。
まるで、自転車通学をしていた中学生が、高校生になって電車通学を始めたときのように。
そして電車に揺られること約1時間。
ついに、地元・四万十の風景が見えてきた。
電車を降りたその瞬間、ちょうど雨が上がった。
湿った空気の中に、ほんの少しだけ光が差した気がした。
こんにちは、カルンです。
自身初の連載小説を制作しました。
この物語は1人の会社員の物語です。趣味で自己満小説を執筆する時は、主人公は大体高校生・女子(たまに男子)ばかりで会社員を書くということで、とても苦戦しました。(なぜこうしたのだろう...と少し後悔してます。(笑))
旅行話みたいになりましたが、第2話では物語がかなり進展します。第2話についてはまだ制作途中なので、もう少しお待ちください。また、第2話以降少し投稿ペースが遅くなると思います。作品投稿の告知や、投稿ペースが1ヶ月以上遅くなる場合は、活動報告にて投稿するので、ご確認ください。
第1話は、どうでしたでしょうか?
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