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8話 極秘研究所制圧依頼


 預かった手がかりその1、竜の細胞片を表原ちゃんに渡す。

 捕縛対象の研究者は、竜の生体細胞をパクって逃げてる。怪物の生体細胞すなわち生きている怪物なので、生きてる怪物なら距離問わず追跡できる[棒倒索敵]で追跡する。


 手がかりその2、逃げた研究者の衣服を[忠犬八光]に嗅がせる。単純に警察犬がわりをしてもらう。

 警察と軍に犬の知り合いがいればそっちに頼んだんだけど、口止めできる伝手がなかった。

 あと久しぶりに巨大犬を撫でたかったのも少しある。嘘、6割くらい。


 手がかりその3、学生時代の勘。それは技術と経験、怪物信奉者を返り討ちにして身ぐるみ剥いだ懐かしい記憶。


 仲間が絡まれたらみんなで協力、袋叩きにして吊し上げ、トラウマと金銭的負債を刻み込む。

 それが怪物侵攻初期、混乱した世界における、私達魔装少女の約束だった。美しい友情。


 当時、私が仲間を招集する幹事役、晶が金銭負債回収役だった。あいつ昔からああいうの得意だったな。しかも声掛けたら絶対参加してたからな、あいつ。

 そんな日々で磨かれた頼れる勘で、適度に人が居ないが、そんなに不便じゃ無いポイントを探す。エネルギーと水の経路を辿るのがポイント。あと物資搬入用の道路。


 そんなこんなで、どのあたりにアジトが存在するか判明した。怪物の侵略初期に破壊されて放棄された小規模な集落内だろう。


 大体の位置は絞り込めたので生徒二人に[特殊技能]を解除してもらう。2mの芝犬は目立ちますんで...加州ちゃんは、もっとお手伝いします!と言ってくれた。でも隠業が苦手なようで、警報装置に引っかかりそうになっていた。優しく断る。しゅんとする加州寿。


 ここからはさらにこっそりやりたいので生徒二人には帰ってもらった。あとでスイーツの食べ放題奢るのを約束したが、対価安くない?もっと要求してもいいのよ?ちゃんと対価を要求しないと、大人の世界では安くこき使われてしまうことを説教しないと。


 説教中、誰が言ってんだよ鏡見ろ、みたいな目を向けられたが心を鬼にして釘を刺しておく。

 安請け合いしない、思慮深く断れるタイプの大人の女である私を見習うように。二人は苦笑と共に去っていった。またねー。



 そんなこんなで探した隠れ家は、放棄された発電所裏。竹藪の中に入り口があって地下に続く。この型は、たぶん民間人が作ったシェルターを拡張したやつだ。

 怪物の侵略初期は、民間向け地下シェルターがバカ売れして、あちこちで工事があったものだ。懐かしい。大体完成前に放棄された。完成が間に合って籠城しても、怪物のお弁当箱代わりにこじ開けられて、中の人は喰われてた。怪物災害の初動は退避ですよ皆さん。辛いけど、財産より人命を優先させましょう。


 輸送機の積荷を下ろしていく。軍に借りた機材を自分で下ろす。軍の積荷をこっそり借りてる都合、パイロットに手伝って貰うわけにはいかないので。


 頼んでおいた軍の備品だが、結構サービスしてもらったみたいで、渡したメモの分は勿論、おまけの機材や爆薬もいっぱいついてる。

 足りないよりはありがたいんだけど、こんなもらってどうすんの。

 農家さんがおすそ分けでくれる野菜かな?こんなに白菜ばっかり食べられないよーみたいなことになってるぞ我當三佐。


 白菜や大根と違って他の使い道もない。浅漬けにして冷蔵庫に入れた白菜と大根美味しいよね、保存もきくし。ポトフとかチャーハンとか味噌汁の具になるし、そのまま醤油でご飯三杯いける。

 それに比べて爆薬なんていっぱい貰ってもどうすんの。うっかり持って帰ると学園の多数にバレてしまう。軍にも政府にも内緒が今任務の条件なので。どうすんの...



 気を取り直すと、敵基地能力の分析を進める。

 他の出入り口を軍製の探知機で探す。送風口と送水タンクも出来れば抑えたい。身を潜めつつ動き回っていると、無人の発電所が稼働していることに気づいた。電気相当使うってことはここ研究所じゃな?水や物資搬入を推測するにそんなに人はいない。ただ警備員と研究者だろう雰囲気。


 裏山に使われた形跡のある道路、魔力触媒技術を使った迷彩を発見。

 扉を探すとカードリーダー式だったので軍製のスクランブラーを使ってクラッキング。学生時代、ある友達に三つ編みのやり方とハッキングを教えてもらったのを思い出す。あいつ器用だったな、元気かなー。

 非常用出入り口らしく人気も無い。監視カメラを躱して中に入って、壁の一部を引っぺがす。剥き出しのケーブルに軍用端末を引っ付けると施設内ネットワークにハッキング完了。情報の一部は私のものだ。

 

 さて、ここまでの道のりでもうめんどくさくて、本当に嫌になってきた。晶こと学園長のお願いとはいえ、ここまでかったるい任務は初めてだ。


 そもそも対人戦の任務は魔装少女に回ってこない。あくまで対怪物のプロであり、一般学生が対人能力(物理)を得て暴れられると治安が終わるから。

 よって試合形式では無いガチの対人戦は苦手な女の子も多い。異能の力を持っても、心は傷つきやすい少女なので。


 なんやかんやベテランなのと、初期の混乱した時代に暴力沙汰が日常茶飯事(当時は我々に甘く、ボコボコにしてもなあなあにしてくれた)だったため、私は平気かつ上手だが。


 内部に侵入して一人ずつ倒すか?スニーキングするミッションかなぁ、それが安全な気がするなぁ。


 そうだ、これが舞浜晶の頼みであることを忘れていた。あいつ、人を試して悦に入る癖があるから、此処ろくな研究所じゃないな。私の反応を見て酒の肴にする気だろう。うわ、あいつエグい標本にビビってやんのー、だっせー、みたいな。ますます建物内に入りたくなくなってきた。やだな、奴の思惑には乗らんぞー。


 そこで軍からいっぱい貰ったモノをふと思い出す。大根や白菜じゃ無いんだから、余らせても、ね?



「警報に感あり、侵入者です!」


「まだ距離はあるな、一応研究者に退避を指示。

人狩り部隊に狩らせろ。軍でも警察でも無いからな。どこぞの私兵だろう。あの警報にかかる程度ならすぐに対処できる」


「研究者と研究成果の保護を第一に、とスポンサーから...」


「はぁ...研究員たちを第四ゲート前に集めろ。足も一応用意してやれ、先に警備の人間で経路を確保しろ。必ず複数だ」


 部屋の中心から指示を出す男は、研究所のスポンサー達と他支部に連絡を入れる。


「ん?通信状況が悪いのか?普段この回線は使わんからな...」


 部下の男が研究員達に通信している


「ええ、避難マニュアルに従っ...」


 基地全体が大きく揺れる。


「今のは爆発か?なんだ?!」


「第一、第二、第三ゲートで爆発!」


「これは罠だ!第四ゲートの研究員を呼び戻せ!」


「通信が届きません!」


 システムがダウンし電力が落ちる。閉じ込められたことに気づく男達。


「これで警備部隊と警護対象が引き離された。合流は可能だが、時間がかかる。合流する頃には...」


 その一方、第四ゲート前に集められた研究員はパニックになっていた。避難訓練かのように呼び出されたと思ったら、いきなりの爆音で腰を抜かしている。

 研究所が崩落すると外に逃げるモノと、爆発から逃げるため中に逃げるモノで、警備の指示も通らない。しかし隔壁が閉まり、内部に戻れなくなった。缶が転がる音がした、下を向くと足元に煙を上げる筒が...

 警備員の意識はそこで途切れた。



 爆弾ガスマスク女こと私です。ワイヤーで全員縛り上げた。相手が用意してくれた車に放り込んどこっと。


 怖いお化け屋敷を爆撃して、びっくりしたお化けを引き摺り出す作戦。これなら私はビビらないで済む。


 遠くの警報を作動させ油断させて敵攻勢部隊を誘導、研究員の避難を促して他の出入り口を爆破して破壊。唯一の出入り口に集まった研究者を一網打尽。避難マニュアルはハッキングの時に見つけたんでね。

 逃げ遅れたやつが走って来た、腹パンで黙らす。こいつでも無い。あ、また来た。


 三度目の正直でターゲット発見。腹パンで黙らせた後、手足を縛る。そうしていると、混乱から立ち直った警備班がこっちに来ているらしい。

 よし!作戦開始!



 宙吊りになった研究員が大声で喚く


「そ、そこのお前、助けてくれぇぇ」


 どう見ても罠だ。立ち止まり辺りを警戒する。警備担当の男は対魔力チャフを投げ散布する。魔力操作を妨害する煙が空間を満たす。妨害粒子が魔力と直に干渉するため、魔装少女の天敵とされる武器である。所持も製造も禁止された兵器で効果は折り紙つきだ。


 男の経験上、このやり口は魔装少女の物だ。ゲリラ的に短期決戦を図り、不利になれば即離脱する。学園勢力のアサシンだろう。少数のはずだ。

 対抗用の装備を担いできたのは幸運だと思った。数の有利と装備の有利で個の力を蹂躙する。


 ここまでの失態は魔装少女の捕獲で帳消しにしなければならない。魔装少女は実験体や情報源、洗脳してスパイや純粋な武力として運用できる。ここまでメチャクチャにしてくれたのだ、慰安用にも使ってやろう。

 研究所一つと交換してお釣りの来る黄金の果実だ。何としても捕まえる。


 強化装甲と電磁シールドを付けた集団が陣形を組み、油断なく構える。別の廊下から迂回した兵から連絡、包囲が完了したらしい。


 魔力の都合で長期戦は我々に有利。子供には悪いが狩らせてもらう。


さあ、どう来る!



 完全装備の相手に閉所戦闘で囲まれるのは流石にきつい、ので、私は!


 生き埋めにします。発破ぁ!


 爆発でゲートと山が崩れて埋まる。


 よし!出入り口全て破壊完了!


 そもそも研究員の確保が命令である。後は放置でいいんじゃ無いかな。秘密基地だし保存食くらいあるでしょう、後は学園長の私兵に投げよう。


 研究のバックアップも研究員が持っててラッキー。基地のことはシーラナイ!

 ゲート前で困惑している人狩り部隊の皆さんをボコボコにした後、車に捕虜をすし詰めにして走り出す。あばよとっつぁん!



 やっぱ晶はここでどんな研究がされてるか見て欲しかったんだと思う。人も怪物も残酷なこの世界で、私がこれからどう立ち回るか。どの組織、誰と組むかを考えて欲しかったんだろう。

 報告書を提出した時、ガッカリした顔で私を労う学園長を見て察した。



曇る顔が見れなくてガッカリ学園長

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