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25話 決戦昆虫人間 1


 にっくき敵親玉であるボス個体の位置は判明した。情報集積用の子分を索敵スキルで追跡した結果だ。


 軍のドローンを犠牲にした甲斐あって、正確な位置も判明したね。


 西先生が軍を恫喝して引っ張ってきたらしい。流石仕事ができる女。


 作戦は単純。遠距離攻撃による飽和攻撃で壁のように立ちはだかる敵群体を破壊。その後速やかに前進して、ボスまでの道を作り精鋭で一気に叩く電撃作戦だ。


 他の簡易キャンプにいる生徒たちにも作戦を通達。疲れている中悪いね君たち。


 しかし、私から指示を伝えたところ、士気は高くて二つ返事に作戦参加の表明が来た。


 君たちもフラストレーション溜まってんねぇ!

 奇遇だね私もだよ。


詳細は西先生と指揮官が詰めてくれるらしいのでお任せしよう。


 戦いの後も込みだと軍の人手を借りなければならないので、戦闘区域の指定は繊細な作業だ。


 あと作戦にあたって、斧野小隊に感想を聞いた。私を救出する時に対人特化型昆虫と戦った感想だ。


 美華ちゃん曰く、硬氷結の通りも良くてそこまでの脅威は感じなかったらしい。

 体にぶつければまあまあ貫通するし、顔面を凍らせるとそれだけで動けなくなるそうだ。


「なんか動きの割に、氷飛ばしたら当たるんだよな。あの速さなら避けれるはずなのに。斬りかかった時の印象と、魔力で狙撃した時の印象が違うっつーか」


 斧野ちゃん曰く、大剣での斬りで叩き割るようにすれば一撃で殺せたらしい。

 回避した敵も剛翔波で追撃すると避けきれず爆散したそうだ。先生と模擬戦で戦う時のように、攻撃の後隙にさえ気を付ければ問題ないと。


「一度大剣の振り回しを受け止められたんですが、相手の刀が折れちゃって。そのまま敵も斬っちゃったことが。相手もイマイチ自分の強さを把握していないのでは」


 ましろちゃん曰く、大楯で敵の回避位置ごと薙ぎ払うと、そのまま外殻も粉々になったらしい。


 私と戦った時のように盾の内側に潜り込もうとしていたので、対策しておいてよかったそうだ。


「わたしに反応して後ろに飛んだんだけど、飛び退いた位置が近すぎて攻撃範囲だったから、そのまま倒しちゃいました」


 さやちゃん曰く、戦いにくい相手だったので早々に見切りを付けて私の救出役になったらしい。


「私の攻撃は一切当たらずに、敵がカウンターを仕掛けてきたので早々に距離を取って逃げました」


 えらい。見切りの良さはそのまま生存率アップに繋がる。やっぱコイツ見込みがある。


 あと、私と同じ片刃剣使いだもんね、やり辛くしてごめんね。私と戦って片刃剣対策身につけちゃったの。


凛ちゃん曰く、周りに居たザコの有翅型と大して変わらなかったという。


「電撃主体でたたかってたんだけど、相手は紙一重で避けようとしたわけ。でも電撃だからそのまま感電しちゃって」


おい、あいつら全然魔力攻撃避けれてねえぞ。私から戦闘力をコピーしたんだろ!コピー元が嘆いておるぞ。


「先生、もしかして」


 あいつら、私を殺すことに特化し過ぎてる。片刃剣への防御力は完璧なのに大剣、大楯、属性攻撃への防御がガバガバだ。


 私と対人戦訓練した、中堅魔装少女ならギリで勝てるんじゃないかなもしかして。


 いや、楽観視は禁物。そんな彼女達の戦法が取り込まれたら、目も当てられない被害が出てしまう。

 気をつけよう。


あと、私は敵の危険性を説いてきた一方、敵の弱点にもまた気付いていた。


それは、


ぼっち戦術しか知らない事だ!


 決して私がぼっちの突撃バカだからではない。


 敵の学習効率を優先した戦術のせいだ。

 効率最優先で、私を隔離して一対一を繰り返す事で高速進化を遂げたのが昆虫人間だった。


 つまり、連携を知らずチームワークが下手。連携を取る相手との戦い方も知らない。


 私からの見稽古のみだったことが敗因だ。


 誤解を避けると、私だって昔はチームワークを発揮して戦っていたのだ。


 ゲーム風に言うと回避盾。敵のターゲットを取りながら敵攻撃を回避して味方の被弾を減らして攻撃のチャンスを作る。


 防御力はないので、ギリギリの戦いでよく傷だらけになっていたが。女医とはその頃からの仲である。


 でもチームの皆んながいなくなって、ひとりぼっちになってしまった。


 新たにチームを組む気にもなれず、教師に就職したりして余計に人を誘えず。そこから器用貧乏的に何でもするハメになった。


 攻撃から索敵から防御、挙句に回復まで。幸い時間は山ほどあったからね。どれもなかなかのものになった。まあいいや、私の昔話は。


 話を戻すと、作戦は問題なく行えそうだ。属性魔力攻撃への耐性がないため、飽和攻撃は確実に通る。


 その後敵陣地制圧、確保でどこまで生徒達が戦えるかだが、私との訓練が身を結ぶことを期待しよう。


 その隙に私は敵本体を叩く。


 チームワークを発揮した我々人類の恐ろしさを見せてやろうぞ!虫ケラども!


 私はチームワークと無縁の単独行動だけど。



 空飛ぶ魔力の刃が、富士樹海を切り裂いていく。敵の位置を正確に切り裂いていく攻撃は、昆虫人間の命を的確に摘み取っていった。


 刃は通過途中にある木々やツルごと切り落とし、あたりは見晴らしが良くなっていく。


 すると樹海に隠れた他の敵も姿を現す。


 敵が反撃に出ようとした矢先、あちこちから赤く光る魔力が飛んできた。


 火炎系の[特殊技能]である。樹海の遮蔽物が無くなった今、爆破範囲から逃れる術はない。多くの敵が炎で倒れた。


 生き残りもいる。再度突進を試みるも、また不可視の攻撃が彼らを襲った。風系の特殊技能である。


 しかし、物量で押し切ろうとする怪物。なにせこの奥には女王がいるのだ。死守しなければならない。


 不幸にも彼らは[特殊技能]の連携を知らなかった。


 炎と風の両方を撃つことで火の竜巻が巻き起こり、魔力と酸素の両方を手に入れた火炎は当たりの怪物を巻き込んで大暴れしていた。


 物量で押し切ろうとしていた怪物達はその破壊力の前にただの薪木と化した。


 魔力が暴れ狂った後には、何も存在しない一直線の破壊跡が残るのみだ。


 周囲で難を逃れた昆虫人間は破壊後を避けるように陣取っていた。半身を失いながら這う虫もいた。一塊になっていた彼らを水流と電撃が襲う。


 手前の敵はウォーターカッターでスライスされ、体液と水しぶきが舞う。


 奥の敵は水しぶきを伝った雷撃の電流で全身を痙攣させ死んだ。


 ということで、他の皆の協力で道ができた。表原ちゃんの協力でこの先にボスがいることも分かっている。ここからは私の仕事だ。



 一歩踏み出すと、私の前に五人が立ちはだかった。


「先生、今回のボス個体討伐ですが、私達斧野小隊に任せていただけませんか!急でごめんなさい!」


 急に斧野ちゃんが頭を下げる。


 斧野小隊、ブリーフィング時には敵の足止めが役目だったはずだ。


「私達話し合って考えたんです。先生をこのまま一人で闘わせてはいけないって!」


「姉御の覚悟はよく分かった。その上で頼む!私達を行かせてくれないか!私達に任せてくれないか!」


 そんな、急に言われたって。駄目だよ、作戦自体に綻びが出始めかねない。こんな急に作戦変更は前代未聞すぎるよ。指揮官も言ってやってよね。


「...貴女達は強敵と戦う覚悟と力があるんですね?」


 おや?


「はい!禅苑先生から教わったこと、自分達で試行錯誤して身につけた連携、訓練の成果をお見せします!」


 ちょっと、作戦途中でこんな重要な変更許しちゃダメでしょう!大人だろ?


「...いいでしょう。禅苑先生と配置を入れ替えます」


 おい!指揮官!いいのかそんな泣き落としみたいな手に引っかかって!


「禅苑先生、私もいい加減、貴女の自分を省みない姿をどうかと思ったんです」


 そうだったの!


 そんなこと考えてたの!


「慣れてきていたから流してましたが、本来貴女が戦場に立つのは異常なことですから」


 誰が異常だよ誰が。現在の戦力ではこれがベストだろうがよ!


「腹に穴の空いた病人を、重要な役目に置くのが正常?冗談でしょう」


 うっ、それを言われると弱い。さっきもお医者さんと、君は大人しく寝てろ!いや私は起きる!

と大喧嘩をしていただけに。


指揮官は諭すように、慈しむようにいった。


「それに、私の願いでもあるんですよ、貴女を一人で戦わせたくないのは」


 指揮官...


 でもイヤ!私も前線出る!確実にアイツ殺す!報復したいよう!


「バカがよ。じゃあ命令です。逆らうと休日を始末書で潰すことになりますよ」


 はい、大人しくします...


「斧野小隊、敵ボス個体に接敵し、討伐します!」


「司令部、了解しました。ご武運を」


 うん、心配だなぁ、がんばってね。



 味方の援護で出来た道を進む。


 巻き添えになった道路には悪いが、魔力の相互作用を使った大規模攻撃で、敵は一時的に減った。


 禅苑先生に無理を言って代わってもらったが、なかなか緊張する。


 なにせ今回、敵のボス個体を倒せなければ先生が危惧していた被害は必ず起こると確信している。プレッシャーも感じる。


「じゃあ私はここまでね。よっと!」


 阻むように出てきた五体の昆虫人間が次々切り伏せられた。


 フェイントを交えつつ片刃剣を繰り出し、相手は対応できず斬られた。流石の練度だ。遭遇戦の不意打ちすらも得意とは。技の引き出しが多いらしい。


「危なくなったら無理せず、意地張らずに私に交代すること。約束ね。私は貴方達の帰り道を作るから、存分に暴れてらっしゃい」


 寂しそうな微笑みと共に送り出された。


 先ほどは斧野小隊全員での、突然の申し出で驚いたことだろう。


 裏で司令官に話は通しておいたが、先生には土壇場で告げた。反対されることがわかりきっていたからだ。


 先生の負担をなんとか削りたかった。これまで無茶を続けていたからと言って、今後も続ける理由にはならない。


 多分先生の性格なら、自分でカタをつけたほうが気が楽だろう。


 それでも私たちを信じてくれた。信頼に、応えたい。


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