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15話 学園長の野望&隠し子疑惑で脳破壊

急展開します

15話 学園長の野望&隠し子疑惑で脳破壊

 学園長は激務に追われていた。


 現在休暇を満喫しているであろう禅苑愛佳。彼女が出入り口を吹き飛ばした研究所の後始末が原因である。


 そもそも大っぴらにできないから彼女の力を借りたのに、帰ってきた彼女は問題を大きくしていた。

 大爆発を誤魔化しきれる訳がない。そして研究所の入り口を掘り出さないと、制圧どころか侵入もできない。


 現在の魔力技術において、土木作業にかかる時間は大きく短縮されている。にしても山ごと崩したせいで、人員を確保しなければならなかった。

 こっそりと記録を消せるように、ダミーの討伐任務をでっち上げて人を集めた。

 また問題なのが、基地内部には戦闘態勢の警備員が籠城している。


 仕方なく軍からも力を借り、禅苑愛佳ファンクラブの隊員で内部を鎮圧した。対人戦ができる手駒はそんなに多くない。

 向こうから声を掛けてきた為断りきれなかった。交渉上手に丸め込まれた形だ。


 本来のプランであれば、禅苑愛佳が内部に潜入、上層から敵の無力化を図りつつ下層へ。

 その過程で残酷な研究結果を見た禅苑愛佳、軍や政府への不信感を募らせ、より学園へ依存するように仕向ける。これが本来の計画であった。


 実際基地内部には人と怪物の融合実験も行われており、苦悶の表情で息絶えた、異形の皮膚の少女や、怪物の臓器を埋め込まれた人間など、狂気の実験跡が確認された。


 ショックを受けた愛佳を慰める為に、高級ホテルのディナーも予約していた学園長。爆発による後始末の激務でおじゃんになった。籠絡計画を企むも失敗した女と、計画ごと爆破した女。


 禅苑の籠絡と同時に軍や政府の弱点を握り、脅迫と交渉により優位に立つ。はずだった。

 実は長期的な策で禅苑愛佳を国家元首にする計画もあった。彼女の放つ光は人類を導くのに相応しいと暴走する学園長。スタートで躓いた形になった。


「結局軍からも人を入れたことで、共同作戦の形を取る羽目になり、研究についてもしっかり証拠とログを漁られた。

 残りの不正研究も芋蔓式に掌握したかったのだが、軍の方が先に動くだろう。これでは自浄作用がはたらいてしまい、『悪の政府と軍を糾弾する、正義の学園』という構図に持ち込めない」


 学園長の野望は潰えた。しかし諦める気は無いらしい。寝不足の目は爛々と輝いていた。


「にしてもあの禅苑派の軍人は動きが早かった。こちらが極秘で動いているにもかかわらず、嗅ぎつけて合同捜査の形に持ち込まれた。三佐だったか、要注意だ」


 これらの企みを通常業務もこなしながら進めていた学園長。

 そんな彼女にトドメを刺し、目の下のクマを深めたのが、研究所から救出された「研究成果の一つ」だった。



 休暇明けの禅苑です。結局最後の一日は武具の調整と大量の始末書と生徒との雑談で終わった。


 早速今日の予定を確認。私は教師だがアラートが鳴ったら出撃する都合上、自由裁量で仕事をしている。他の先生のピンチヒッターだったり、生徒からの相談にのったり、困った部署のお手伝いだったり。


 今日は朝イチで学園長のところに来いと。ふーん、なんかあったのかな。


 学園長室に入ると、いつもより厚化粧な、目の下にクマのある学園長がこちらを迎えてくれた。化粧ですら隠せない目の下のクマ。大丈夫かな、睡眠の重要性を教えてあげようかな。


「来たか...禅苑先生。休暇はどうだったかな」


「なかなか充実してましたね。敵も一度しか来ませんでしたし。タコスとメンマと伊勢海老が美味しかったです」


「そうか、たのしそうだな。なによりだ」


 学園長は乾いた笑いと共に言った。手は高速で書類を決裁している。すげー大変そう。頑張ってるし何かあげたいけど、お土産は鈴木さんに渡しちゃった。黙っとこう。


「そういえば秘書さんの姿が見えませんが」


「君への要件に関連している。前回君が爆、えーと、襲撃した研究所を覚えているだろう。そこから発見された『研究成果の一つ』を君に預けたい。入りたまえ」


 いきなり要件に入った学園長。

 秘書さんと一緒に入ってきたのは、舞桜学園の制服を着た中学生?身を縮めて怯えた目でこちらを見ていた。はて?顔に見覚えがあるような?


「君のクローンだ」


 は?



「クローンで狙った[特殊技能]を引き当てようとする研究は多くてね。大量破壊が可能なものや、科学で再現不可能な性質を持ったもの、そして」


「私の[戦闘続行]ですか。たしか[特殊技能]って子供にすら遺伝しませんよね。[特殊技能]って遺伝子に乗らないんじゃ?そもそも、あの研究所は不老不死関連だったのでは?」


「君は成人を迎え、現在でも魔装少女として活躍する唯一の存在だ。おそらくその[特殊技能]が原因だろう。スイッチを切れないタイプの、常時発動型だったな?」


 まあそうである。魔装少女になった瞬間ニョキっと生えてきた[特殊技能]で、付け方も消し方も分からない。魔力が一定量、武具を握らなくても湧いてくる。しかも操作までできる。つえでに怪物が死ぬまで追いかけてくる。あー


「永遠の魔力を狙って...そんなに都合のいいものじゃないんですが。まあ研究の対象にはなりえますか。それで、その、彼女は?」


 大体想像は付いている。闇の研究所から救出されたクローンで実験体。

 転生前のコミックではありがちな設定だが、ガチで会うのがこの世界のモラル終わってる所だ。

 ちょっと自分のクローンとなると困惑。俯いた顔は恐怖と緊張で強張っている。

 てっきり晶の性格にビビってるとばっかり。研究所で酷い目に遭ってたのかな。


「禅苑愛佳の体細胞から生み出されたクローンで試験管ベビーだ。中学生程に見えるが、7歳だと書類で判明した。脳髄魔力情報学習の施術も受けているため知能は高め、知識も多めだ。他所の研究所と統廃合した時に連れてこられたらしい。拷問まがいの実験を繰り返したせいで心を閉ざしている。ん、ちょっと並んでみろ」


 少女は逆らうことなく恐る恐る私に近づく。私のことも怖いが、命令に背くことの方が怖いのだろう。怯える瞳が可哀想だ。言い方考えろよ晶。


 少女と私で二人並ぶ。学園長の目が輝く。秘書さんとこそこそ会話してる。


「なあ、どう思う」


「二人並ぶと禅苑先生に本当にそっくりですね」


「やはりよく似ている。記憶にある昔の禅苑愛佳そっくりな顔だな。違うのは表情と雰囲気か。なあ、もっと能天気で何も考えてない表情をしてくれないか?」


 少女は困惑している。おい、晶、お前今のどういう意味だ喧嘩売ってんのか。あと、こんな可哀想な少女に無茶振りするなや。


「戸籍とかどうするんですか。体調面は大丈夫なんですか。あと私に引き取れって事ですか。いや、可哀想だから全然いいですけど」


「その辺りも相談したくてな。私の縁者、という事にしたかったのだが。いささかお前に似ているのが問題だ。私の元に置くとあらぬ噂を立てられかねない。体調面については、学園の治療を受け続ければ問題ないらしい。


「あらぬ噂ってなんだよ」


(禅苑愛佳の狂信者がとうとうクローン技術に手を出して囲いやがった、とかですかね)


 秘書さんが何か言いたげにしている。


(忙しさから考えて本人以外に預けた方がいいのに、預けられそうな人がファンクラブ会員なせいで、逆に引き取れる人がいなくなったんですよね)


 秘書さんが無言で頭を振っている。どうしたんだろう。


「まあ分かったよ晶。私の遠い親戚で姪っ子扱いという事にしよう。これでいいか?親戚もういないけど」


「お前の子供でいいんじゃないか?」


 テメェ、年齢的には別におかしくない事を言いやがって。お前にもブーメランなこと分かってる?

 あと転生者的にもデリケートな話を茶化すんじゃねえよ。


「彼女は中学一年生になった時、魔装少女候補としてこの学園に入学。両親を亡くしているため長らく身元が不明、実は遠い縁者であった君を頼って来た事にする。戸籍や過去の痕跡の捏造はこちらでやろう」


「分かった、名前は?」


「とりあえずアイと呼んでいる。製造番号の頭文字から一文字もらった。君の名前から一文字抜いた物とも合致したのは奇遇だな」


 なんちゅう皮肉な名付けを。センスが終わってる。鬼畜学園長め。私がまともな名前をつけたる!



 母親の旧姓を使って、名前を草堂愛衣とした。読みはそのままにした。あんな名前でも一応彼女の物だったわけだし。私が奪うのは違う気がした。

 私の名前を一文字あげたのは、彼女は一人じゃないことを知って欲しかったから。名前に一文字足したのは、何か彼女だけのものをプレゼントしてあげたかったからだ。


 名前はそれで良いか聞くと、頷いた。ただ自分の意思というより、こちらを不快にさせないための対応だ。

 まだきちんと話も出来ていない。これまで声を誰も聞いたことがないらしい。

 名前に込めた思いを話しつつ歩く。


 そんな彼女、命令に従ってここまで付いてきた感じ。まだ私に恐怖を感じているのか、環境に混乱しているのか怯えっぱなしである。信頼関係を築いていかなければ。


「えーと、そういうわけで君を引き取る事にした禅苑愛佳です。よろしくね。草堂愛衣ちゃん。君をもう怖い目に遭わせないと約束するよ」


 身を屈めて挨拶した。目と目が合うと逸らされる。無言である。手を差し出してじっと待つ。


 まあ私がいるせいで辛い目に遭ってきた子供だ。恨まれていても不思議では無い。

 私が引き取って良かったのかな。


 気まずい時間が流れる。目が合った。恐る恐る手を出して握ってくれた。愛衣ちゃん!

 胸の奥から、護らねばという想いが湧いてくる。これが、父性...?いや、母性...?


 お喋りこそまだ出来ないが、まあ彼女はやっと戸籍と名前を手に入れたばかりなのだ。急いでも仕方ない。気長に行こう。


 そしてこれから一般常識を教えなければ。私も常識無い方なのに。協力者を作った方がいいな。誰か大人に...


 私の部屋に向かって手を引いて歩く。前から生徒三人が歩いてきた。悪いが今話しかけられるとボロが出る。早足で駆け抜ける!

 相手の方が早く駆け出してきた。馬鹿な、この私が先手を取られただと。よりにもよって今?


「せんせ、こんにちは。わたし、柚部凛って言います。先日の竜の時に助けてもらって。出血多量で気絶してたんですけど。ほんとあたし感謝してて!瑞稀も美華も、さやさやも助けてもらったらしくて!」


 熱意すごっ。思わず足を止めてしまった。三人は柚部ちゃん、加州ちゃん、桜井ちゃんの三人で最近関わりの多い三人だ。やべ、逃げられない!


「先生、『芝犬なでなで』します?おや、そちらの生徒は?」


 加州ちゃんからは芝犬との触れ合いという普段ならありがたい申し出。でも今はね、少し待ってて欲しいね。


「うわ、先生にすごくそっくり。まさか、禅苑先生の隠し子‼︎ だ、だ、誰と寝たんですか!」


「え!マジ!えぐ!せんせ本当⁉︎あと加州先輩、もっとオブラートに」


「私の先生が、寝た?お昼寝?こ、子供が、あ、あ、あ」


 耳年増の思春期どもめ!違うわ!


「隠し子じゃない!体細胞クローン!あっ、しまった、し、親戚だよ?」


 結局、加州寿と桜井さや、柚部凛の三名には事情を隠さず伝える事になった。


 ほら、愛衣の友達作りとか大事じゃん。

 愛衣はびっくりしていた。刺激が強くてごめんな...

初見だと脳が破壊されます

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