9話
俺は狙い通り、薄暗い路地裏に瞬間移動した。
「見事に成功だ。これなら誰にも見られてないだろ。こういう細かい調節までできるなんて俺はほんとに天才だな。これはいくら能力がすごくても使うやつがポンコツだったらできないだろうからな」
俺の才能によるところが大きいと判断していいだろう。普通の人が使ったところでこうはいかない。変なところに瞬間移動して騒ぎのなるだろうな。
自分の才能を再確認し、調子に乗っている俺はあまりの気分の良さにこの町を破壊しそうになる。おっと、今の目的は飯を食うことだからな。それまではこのラッキータウンには滅んでもらっては困るのだ。でも飯を食った後も魔物退治が控えているからそっちを優先しないと行けないんだよな。
「とりあえず飯屋を探そうかな。誰かに聞くのが一番早いんだろうけど、殺したくなっちゃうかもしれないんだよな。地道に探したほうがこの町のためになるだろうか。この俺が気を使わないと行けないのはなんか癪だな」
そうだ俺が気を使う必要なんてどこにもないはずだ。むしろこの町が俺に気を使ってほしいくらいなんだが? とはいっても、そう都合よくも行かないだろうからな。文句言わずに探すか。腹は減ってないんだけど、飯は食いたいんだよな。
俺は飲食店を探すために人の通りがある方を目指して歩き出した。
探知に反応していた通り、大勢の人でにぎわっている。町は、やっぱりこうでなくちゃな。
「ここにいる人間どもも俺という自然災害をも超越したような存在が平気で歩いているとは思わないだろな。お前らの命は俺の気分次第なんだぞ? そこのところ理解して行動しろよ」
誰に聞かせるわけでもなく、独り言をつぶやく。
俺に肩がぶつかったりしてみやがれ。一瞬であの世行きだぜ。
「ああ、腹が減らないのに飯食おうとして探すのって不思議な気分だな。なんかこう本腰をいれて探す気になれないというか。本気を出す気にならないんだよな」
自分がその気がないのに、必要としていないことをしなくちゃいけないのってかなりの苦痛になる気がするな。今回の場合は腹が減っているじゃなくて飯を食ってみたいというよくわからない状況になっているのがおかしいと思う。
「ああくそ、考えてたらわけわかんなくなってきた。一体俺は飯が食いたいのか食いたくないのかどっちなんだ? そりゃ食いたくないか食いたいかと言われれば食いたいに決まってる。でも、それに労力をさくのは違う気がするんだよな。めんどくせぇ」
本当にめんどくさくなってきてしまった。さっきまでのうまくいった瞬間移動とかの気分も微妙になってきた。
もう飯を食わなくていいか。どうせ腹も減らないんだ。これから、飯を食うことはないだろう。本当に食いたくなった時に探そう。そうじゃないとやる気が起きない。
せっかくこラッキータウンまでやってきたが、今日のところは引き上げよう。魔物退治に切り替えて、盛大に暴れてみようかな。そろそろ俺に全力を出させてくれるような魔物と出会いたいんだが、この世界の端から端まで探知してみて一番強い反応のところに行ってみようかな。ちょっと時間はかかりそうだけど、試してみる価値はありそうだ。少なくとも飯屋を探すのに比べれば数倍やる気が湧くってもんだ。
「おっしゃ、こんな人の多いところだと集中できないから、とりあえず町の外へ瞬間移動しようかな」
消える瞬間が誰かに目撃されたところで何も支障はないので、その場で瞬間移動をした。
シュッ!!
景色が一変して俺がつい数時間前に滅ぼした町へ戻ってきた。
まだ、炎は消えておらず、所々で火が上がっている。こうやって見ると、ちょっと派手にやりすぎた感は否めないな。俺の知ったこっちゃないがな。どうだっていいことだ。
「探知行きますか。今回は妥協せずに最強の反応を見つけるまで頑張るぞ」
目を閉じ、集中する。
生命力感知全開!!
特に心の中で何かいう必要はないが、なんとなくそう唱えた。声に出していればとんでもない大声で叫んでいたことだろう。
東の方にかなり強めの反応を感知。いや、まだだ。これなら、俺が気が付かないうちに消滅させていた魔物の反応の方が上だ。ということはこいつは全く期待できない。続行。
さらに探知の範囲を外へ外へと広げていく。今が大体俺の周囲2000キロメートルくらいだろうか? この中には最初の反応を超えるようなものは一つもなかった。
この世界って案外広いんだな。2000キロって言ったらどのくらいだ? 地球一周分くらいか。いや、でも俺の家から学校まで2キロあったから単純にその1000倍ってことか。すさまじい距離だ。俺が三年間毎日投降したとして、2000キロにはとどかないだろう。いや、とどくのか? わからねぇや。続行。
さらに広げていくこと数分。ついに最初の反応を超える者を発見した。こいつが暫定1位だ。明らかに別格とまでは行かないが相当大きな反応であることは間違えない。しかし続行。まだ世界の端までは届いていない。
その調子で何回か大きな反応を見つけるのだが、端まで行きついた訳ではないので探知を辞めずにひたすら範囲を拡大していた。
こうやって範囲を拡大しているのはいいんだが、どこが端っことか俺にはわからなくね? くそ、俺としたことがぬかったぜ。何か、何かいい方法はないのか? 手っ取り早く世界の最果てを見つける方法は。
「やばい、急に疲労感が押し寄せてきた。最初はとりあえず探知してみようと思ってたけど、今になってまったく終わりが見えないことに気が付いてしまうという虚無感。そうだ!! 疲れたし今日はもう寝よう」
そう決めた俺は、滅ぼした町の廃墟で寝っ転がった。




