81話
「まあ、頑張れよ。応援くらいはしてやるさ」
「なんかあんまり成れるって思ってなさそうな反応だね。シュウトお兄さんは私がSランク冒険者になるなんて無理だと思ってるよね?」
「そこまでは思ってねぇよ。相当時間はかかるだろうし、大変な道のりになるだろうなって思うくらいなもんだ。別に、絶対になれないなんて思ってねぇ」
ネイスが無駄に魔法系のステータスが高かったのは、一緒に冒険者登録した俺が一番よく知っている。俺がすべてSだらけの中、ネイスだってそれなりにいい感じだったのを微かに覚えている。それも、俺の凄さにかすんでしまってたんだけどな。
「本当かなぁ? だったらシュウトお兄さんが私に魔法を教えてくれればいいよね? どんな魔法だって使えるんでしょ」
「ああ、一回発動するところを見れば、どんな魔法だって使えるさ。俺にかかれば、どんな高難易度の魔法だろうが関係ねぇ。すぐに習得できるぜ」
「冗談にしても誇張しすぎですよ。そんなことができる人間がいたなら魔法界隈が震撼しますよ。私も少しだけ自己強化の魔法を使いますが、これを習得するのにも相当な時間がかかりましたから。魔法は難しいのです」
「それは、アスリーに魔法の才能がなかったからだろ。俺はそんな低レベルな力じゃないからな。そうだな、証拠にアスリーの強化魔法をすぐに真似してやるよ。ほら、使ってみていいぞ」
まったくもって俺自身をさらに強化する必要なんてないが、使えるようになっておいて困ることはないだろう。自己強化の応用で他人に強化魔法を付与するなんてことも可能なはずだ。そうなれば、ネイスを強化してやることもできる。俺の負担が減るって言うか、もう後ろで休んでてもよくなるんじゃないか?
「少し怖いから遠慮していいですか? これであっさり使われてもショックです」
「どうせ俺が使えるなんて思ってないんだろ? それだったら何の問題もないじゃねぇか」
「アスリーさん、シュウトお兄さんは本当に一度見た魔法をその場で使用していましたよ。嫌だったら見せる必要なんてありませんからね」
「ネイスちゃんまで……本当なのかしら?」
まだアスリーは俺の言っていることが信じられないみたいだな。
俺だって、この魔法を一回見てしまったら覚えられるのはやりすぎてると思うが、チートと呼ばれるにはこれくらい盛大にやってしまわないとな。名前負けしてしまう。
「わかりました。では、一種類だけ使いますよ。フィジカルアップ」
アスリーの言葉と共に、アスリーの体が軽く発光した。
なんか光ってるけど、見た感じは俺の防護魔法みたいなもんか。この光で自身を強化しているってことになるんだろうな。俺の防護魔法も俺の魔力を纏わせてるみたいなもんだろうし、根本的なところは似ているってことだろう。
「どうですか? これで今の私は基礎能力が約二倍になっています。本気を出せば、4倍くらいまで行けるのですが、負担も大きいので基本的には2倍か、強化しても3倍ですね。他にも使えますが今回見せるのはやめておきます」
「へぇ、結構力としては上昇してるんだな。ってことは、今のステータスは通常時の倍になってるんだよな?」
「その考え方であっています。私の身体能力はいま、すべてSランクを超えているでしょう」
Sランクか。自分を基準に考えてしまうと途端にしょぼく見えてきてしまうからな。一般的な冒険者の能力値の平均とかわかればいいんだけど、生憎俺はそういったことに興味はないからな。
「凄いです。私も強化魔法が使えれば、魔法だけじゃなくて、近接戦闘も夢じゃありませんよね? 是非、使い方を教えてください」
「強化魔法は、元の能力値を強化するものだから、ある程度の能力値を持っていないと、効果が薄れてしまいます」
「そんなぁ……私の筋力何て最低ランクみたいなものですよ。だったら、いいところ1つランクが上がるくらいのものですね。はあ、そう簡単に強くなれるはずありませんか」
「俺がネイスに強化魔法をかけてやればいいんじゃないか? 俺が使えば、10倍以上の強化も可能だと思うぞ」
「体への負担も考えて慣れないうちは2倍もきついですから、最初は20パーセント強化くらいで体を慣らし行くのが大事ですよ」
俺の体だったら、何倍の強化を入れようが何の支障もないだろうが、ネイスの体となれば話は別だよな。いくら俺が強化魔法を習得したところで、ネイスの体が持たないんじゃ強化魔法なんて使う場面は一生来ないだろうな。
「それじゃあ、一旦20パーセント強化くらいで試して見るか。きつかったりしたら言ってくれよ。俺にはわからないからな」
「お願い、シュウトお兄さん。私も自分の可能性を試してみたいな。いけそうだったらどんどん強化しちゃっていいからね」
どう考えてもネイスの体が、負担に耐えられるとは思えないんだが、ネイスがこう言っているんだ。好きにやらせてやろうじゃないか。
「フィジカルアップ付与」
ネイスに向かって強化魔法を唱える。付与って言葉は自分がイメージしやすいように言ってみたが結構ダサいな。次は、エンチャントとかかっこつけた感じで言ってみよう。
「どうだ? 違いは実感できてるか?」
「凄いよ、今だったら、重い岩でも持ち上げれそうな気がするよ。これが強化魔法なんだね」
「嘘? 本当に使えてしまったの? 私の修行は一体何のためのものだったの?」
アスリーが地味にショックを受けているみたいだが、これも予想の範疇だ。
俺が見た魔法を使えないなんてことはないと思っていたし、ネイスも当然使えるものだと思っていたようだな。




