80話
「早く行きましょう。私、もうお腹空いちゃって」
「ネイスちゃんは思いのほかせっかちですね。わかりました。早速向かいましょう」
「ありがとうございます!! ほら、シュウトお兄さんもつっ立ってないで行くよ」
「おお、悪い。引っ張るなって」
ネイスに服の端を引っ張られながら歩き出す。
そんなに急がなくても、どうせ王都の中にある店なんだからすぐに着くだろうに……ここまで楽しみにしてくれてるんだったらお金を払う身としても悪い気はしないな。存分に楽しんでくれたほうが俺も気分がいい。
「こっちです。予約でいっぱいで入れないということはないと思いますが、もし入れなくても私をせめないでくださいよ」
店に入れないとか考えもしなかったな。人気の高級店だったらもしかすると、満席っていう可能性もあるのか? でも相当高いらしいし、そんな大勢人が訪れるような場所でもないだろ。
「その時は諦めて店のランクを落としましょう。私もそれくらいは我慢できますから」
「俺も構わないぞ。払う金が減るんならむしろ大歓迎だ」
「ちょっと、シュウトお兄さんはどうしてそんなこと言うんですか? せっかく最高のお店に行こうって言うのに、もっと楽しもうって気はないの? もったいないよ」
そこの代金は俺が持つんだぞ。それもくそ高いってアスリーが言ってたほどだ。
「楽しみなのは楽しみなんだけどな……金の方の心配はどうしても考えちまうだろ」
せめていくらくらいかかるかわかっていれば心構えもできるんだが、アスリーも行ったことがないんじゃそれも不可能だ。後はお会計の時まで金額はわからないという鬼畜さだ。今日はひとまず、アスリーに立て替えてもらうしかないんだが、結局は俺が支払うことになる。はあ、なんで俺が払わなくちゃいけないんだよ。これもダンジョンで置いて行くような真似をしたせいなのか? 理不尽な……。
「レイスン亭は王都でも一等地に店を構えています。こっちです」
アスリーの案内について行くように二人で追いかける。ちなみにだが、ずっとネイスに服の裾を持たれて引っ張られているので少し歩きずらい。いくら俺が方向音痴だといってもこれは過剰だろ。アスリーの後をついて行くくらいできるって。
しばらく三人で歩いていると、豪華そうな店が立ち並ぶエリアに到着した。
「ここが高級店が店を構える場所です。基本的にここにある店は最高級の品を取り揃えている名店ばかりですね。武器や防具も買えますが、値が張りすぎるので上級の冒険者かお坊ちゃんしか手が出ませんね」
「道具だけ一級品をそろえたところで実力が伴っていなければ宝の持ち腐れでしかないからな。本当にそのレベルの完成度が必要な奴らが買えれば問題ないだろ? アスリーはここで買ってるのか?」
「そうですね。私がメインで使っている剣と防具はここで買ってます。それもオーダーメイドなので馬鹿にならない値段になりますね。ですが、そのクオリティは折り紙つきです」
やっぱりSランク冒険者のアスリーともなるとここで揃えてしまうのか。
そうなると俺もここで一式揃えた方がいいとは思うんだが、剣も防具も必要ないんだよなぁ。魔法とこぶしがあれば倒せないモンスター何ていないし、防具なんて俺の防護魔法を貫通するような攻撃を受けない限りはなんの意味もなさない。服と一緒だ。
「凄いです。私もいつかオーダーメイドでお願いしてみたいです」
「ネイスちゃんもきっといつかお世話になると思いますよ。シュウトと一緒に行動することで普通では経験することのできないことを自分の経験値として吸収できますからね。とてもラッキーなのですよ」
たまにはいいこと言うじゃないか。俺と一緒に行動できてるって言うだけでもとてつもない幸運なんだ。そういえば。最初に出会った時なんてすぐに殺してやるつもりだったんだよな。あまりの弱弱しさに俺が手を下すまでもないって判断したんだっけか。まさか、ここまで一緒にいることになるなんて思わなかったな。無意味に町を崩壊させたり、騎士団やSランク冒険者も殺したっけ。あれ? なんか重大なことを忘れているような……まあ、違和感を覚える程度だし、特に考える必要もないか。
「シュウトお兄さんの防護魔法のおかげでどこでもついていけますから。本当は私だって戦力として役に立ちたいんですけど、まだ力不足で……」
「焦らなくてもいいですよ。ネイスちゃんもまだ冒険者になったばかりなのですよね? これからじゃないですか。努力すればSランク冒険者だってなれますよ」
「ありがとうございます。私、頑張ります!!」
また無責任なことを言ってらぁ。ネイスがSランク冒険者になれる保証なんてどこにもないだろうに。
俺の水準で考えれば、Sランク冒険者になることはほとんど無理だが、ほかのやつらの実力は未知数なんだよな。アスリーだって戦闘しているところは実際に見たわけじゃないしな。俺が殺してしまったSランク冒険者は雑魚だったし、絶対に無理ってわけでもないか。




