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8話

 結果名前を知ることもなかった町を木っ端みじんに滅ぼした俺は、気分よくその周辺を歩いていた。


「初めて暴れてみたが、思ったよりも心がスッとするな。俺の今まで貯めていた分のストレスがどこかへ消えてしまったかみたいにすっきりしてるぜ。こりゃ一度やったらやめらねぇな」


 それにしても世界に9人しかいないはずのSランク冒険者とやらがとんでもない雑魚だったのはどういうことだ? もしかして偽物とか? でもほかの冒険者たちの反応を見ると、本物だという感じしかしなかったんだよな。俺が化け物じみた強さだっただけかな。それともSランク冒険者の中でもあいつは最弱だとかいう感じか? どちらにせよ、もう一回ほかのSランク冒険者と戦ってみたいところだ。でも次はモンスター退治をしておかないとあのじじいが見ている可能性があるからな。


 一旦考えるのをやめ。生命力感知で強そうな反応を探す。

 ここいら一帯はもうダメだな。大した反応が一つも残っていない。この町の住民は全員死んだとして、周辺にいる魔物の反応だろうか? まあ、雑魚なのでこいつらを退治したところで意味はないよな。


 かなり離れたところに一際巨大な力をもつ反応を感知した。

 こいつはすげぇ。今まで俺の感知に引っかかった中でもとびぬけて強いな。よしっ、次の獲物はこいつに決めたぜ!! そうと決まれば移動を開始するか。これで人間だった時めんどいがモンスターと言い張って殺そう。それが誰も不幸にならない最良の選択肢だ。


「また飛んで行くとするか? いや、瞬間移動のほうが早いな……瞬間移動を多用するのはよくないか。もうちょっと異世界生活というものを満喫してみるか」


 そう決めた俺は、気が済むまで歩いて向かうことにした。

 俺の目算では、ターゲットまでの距離はざっと1000キロメートルといったところだろう。俺の歩くスピードが時速20キロメートルだとして何時間かかるんだろうか? 算数は苦手なのでよくわからない。まあ、一日もあれば到着するかな。何百年、何千年と生きる予定なんだ一日くらい歩く時間に使ったところでなんら支障はないだろう。


 歩き始めてすぐ、俺は森に足を踏み入れていた。

 歩くといっても普通の人間からしてみれば全力疾走で常に走っているようなペースなので、ガンガン進んでいく。それでも森なので、景色がずっと木ばっかですぐに飽きてしまう。


 もういっそこの森も消してしまうか。この俺にずっと同じ木ばっかり見せやがって、何様のつもりだってんだよ。

 森を燃やし尽くして消し炭にしたとすると、そのあとはずっと消し炭になった光景の中を歩くことになってしまうのか? そっちのほうがきつそうだ。まだ、しびれを切らして瞬間移動をするには早いし、もう少し我慢して歩こうかな。


 視界の隅にちょこちょこ動物のようなものが横切る。一体、モンスターなのか、本物の動物なのかは俺には判別できないが、焼いて食ったら普通にうまそうな奴らばかりだ……ああ!! 俺まだこの世界に来て飯食ってねぇ!! 俺としたことが完全に忘れてたぜ。クッソォ、腹が減らねぇから気にも止めてなかったな。


 こうしてはいられない。すぐさま腹に何かを補充、いや、うまいものを食べなくちゃ俺の気がおさまらねぇ。金はもってないが、飯を食った後に店を消滅させれば実質無料だ。流石にうますぎてリピーターになるレベルだったら脅すだけでとどめておいてやろうかな。俺もうまいものは好きだし、また食べるためには店に消えてもらっては困るからな。


「よっしゃ、飯屋を探してひとっとびで行きますか。おおっと、今回は町を滅ぼすのが目的じゃないから瞬間移動で行くなら人目に付かないような路地裏にひっそりと移動しないと行けないな」


 俺は再度感知をオンにして、周囲に大きな町がないか探る。

 まだ、俺があの町を滅ぼしたことも伝わってないだろうから、平和なはずだ。今回は俺も平和に飯を食うだけで済ませる予定だから次行く街は滅びの運命を乗り越えた幸運の町ということになる。どうせ名前もわからないからラッキータウンと俺が命名しよう。


「お? ここら辺はかなりの反応が集まってるな。でもさっきの町の大きそうだし、別のところにしよう。人の数が多ければ多いほど飯屋の数も多くなるだろうし、比例してうまい飯屋の数も増えるはずだ。ここで妥協しては俺の記念すべき初飯が残念なものになってしまう。俺がのちにこの世界の英雄として語り継がれる程の存在になった時に初めて食べた飯屋はここだ!! って胸を張った言えるような場所にしないとな。恥ずかしくて自伝を出すこともできやしない」


 気が付けば求めるハードルがすごいことになってしまっていたが、飯に妥協は許されない。前世の俺が特に飯へのこだわりをもっていたかといえばそういうわけではないが、これはノリだ。異世界ノリだ。俺も知らない間に異世界というものの影響を受けてしまっていたようだ。


「おお、ここはさっきよりも大分反応が多いな。これ以上探すのも面倒だし、ここにしよっかな」


 さっきまで妥協がどうとか考えていたのも面倒という言葉の前では無意味に崩れ去った。

 何をするにおいても自分のモチベーションは大事なのだ。したくもないことをしたところで大した効果は生まれないだろう。少なくて俺はそう考えている。

 心の中でよくわかない言い訳をしながら、瞬間移動をするべく、準備をする。


 路地裏に狙いをつけて、さらにそこを目撃されるわけには行かないから人がいない瞬間を狙ってっと。それ!!


 シュン!!


 俺は瞬間移動でその場を後にし、新たな町ラッキータウンへと向かった。

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