70話
俺がSランク冒険者になったら行動に制限がかかるなんて話はまったく聞いてないぞ。そんなことならSランク冒険者なんてなる必要ないって。確かに、冒険者ランクが低いとしょぼいクエストにしかいけなくて困っていたが、それとこれとは話が別だろ。
「俺は断固拒否する。俺には帰るべき宿もあるんだ。王都で暮らすなんて考えられん」
「えー? シュウトお兄さんもう少し柔軟に考えようよ。王都はこの国一番の都市なんだよ。いろいろと便利だし悪く無いと思うなぁ」
何? ネイスは王都に残るの嫌じゃないのかよ。言っていることはわかるのだが、わざわざ拠点を帰る必要があるほどなのか?
「ネイスだってあの宿の飯を気に入っていたじゃねぇか。あれがもう食べられなくなるんだぞ? それでもいいのか」
「シュウトお兄さんの瞬間移動でいつでも帰れるよね? それに部屋もずっとあのままっていうわけには行かなかったと思うよ」
瞬間移動で一瞬ってのはそうだが……考えてみれば特に困るような点はないのかもしれないな。
「まだわかりませんよ。あくまで私の予想ですから。ギルドマスターが人手不足ってぼやいてるのを聞いてたからそういうことになるのかと思っただけです」
なんかあれだろ? 遠くの町が崩壊してたとかそういう話だったよな。何ともおっかないことが起きる世の中だ。それにSランク冒険者も一人巻き込まれている可能性が高いって話だったし、犯人は一体どんな奴なんだろうな。一回手合わせ願いたいな。
「まあ、ここで話してたところで意味ないしギルドへ戻るか。報告はしないといけないしな」
ひとまず、王都へ戻り試験をクリアしたことを報告しないと何も始まらない。俺はまだSランク冒険者に正式になっているわけではないのだ。この試験をクリアしてからが俺のSランク冒険者人生の幕開けだ。
俺の瞬間移動で王都の入口まで戻ってきた。
まだ、王都を出発して1時間位だろうか。最初はダンジョン何て聞いていなかったからモンスターを討伐して終わりの予定だったんだよな。ほんとは数分で終わるはずだったのに、無駄に時間を食ってしまったぜ。1時間はかかりすぎだ。
「こんなに早く試験をクリアしてしまうなんて、ギルドマスターも驚くこと間違いないですね。ダンジョンの攻略何て数日かけて行うことですから」
何日もかけてあのダンジョンを攻略するってのかよ。冒険者どもは暇を持て余してるのか? 何事も早いことに越したことはないだろう。思い返してみれば俺でも瞬間移動がなければもう少し時間がかかっていたんだし、俺以外であればもっと時間がかかってもしょうがないか。
「シュウトお兄さんはめちゃくちゃすごいんだから。何といっても私のパーティーのメンバーだからね」
「それだと、俺じゃなくてネイスがパーティーのメインみたいじゃないか。どう考えてもメインは俺だろ」
「言ってなかったかな、私がリーダーだよ? シュウトお兄さんは普通のメンバー。だから私のパーティーなの」
初耳だわ。てか、正式に決めたわけでもないし、ネイスが勝手に言ってるだけか。ただ一緒に行動しているだけで、パーティーを組む申請みたいなもの何てしてねぇわ。
「ネイスちゃんはSランク冒険者を二人ようするパーティーのリーダーということになりますね」
明らかに役不足だろ。てか、アスリーの奴ほんとに俺たちのパーティーに入るつもりなのか? これは加入しそうな勢いだと思うんだが。
「アスリーさんが入っても私がリーダーでいいんですか? 気は進みませんがアスリーさんにならリーダーを譲りますよ」
「私のことは気にしないで大丈夫ですよ。恩返しでパーティーに入っておいてリーダー何てそんなことできませんよ。ネイスちゃんがリーダーをしてください」
「わかりました。これからもリーダーとして頑張ります」
なぜだろう、俺は完全に蚊帳の外になってしまっている気がするんだが。別に俺がリーダーをやりたいって訳でもないけどさ。少しくらい俺の意見も聞いてくれていいだろ。戦闘面でみたら俺が最強なんだから。
話ながら歩いていると、いつの間にやらギルドまで戻ってきていた。やっぱりギルドの本部はでかいし豪華だ。今は金に困っていないが、俺が金に困っているときにこんな建物を見たら破壊衝動を抑えることはできなかっただろうな。
「早速、ギルドマスターの部屋に行きましょう。私部屋覚えてますから」
流石はネイスだ。俺なんてまったく覚えてないぞ。こういう時に頼りになる人がリーダーをするべきなのか? それだったら俺がリーダーになれないのにも説明がつくが。
「あのギルドマスターがどんな反応をするのか今から楽しみですね。さぞ驚くことでしょうから」
「でもおじさんは俺が瞬間移動を使えること知ってるぞ。大体予想が付くんじゃねぇか?」
「瞬間移動だけではこの短時間でダンジョンを攻略することなんてできませんよ。シュウトの強さも相まってですから予想何てできません」
そんな褒めるんじゃねぇよ。俺が強いのなんて当たり前のことだろうが。
「ここだね。勝手に入っちゃっても大丈夫かな」
ネイスがドアの前で足を止める。
いきなり斬りかかってくるようなおじさんに気を遣う必要なんてないだろ。勝手に入ってもいいはずだ。
「気にするな。早く入るぞ」
ガチャ。
ドアを開けて、中へ入るとおじさんが正座をさせられて説教の最中だった。え? まだこの人怒られてたのかよ。




